第11話 1つの仮説
(本当は養子に出されていないとすると、毎回来るあの大人達は誰で、何者なんだろうか?
院長の嘘がこれについてだとしたら、間違いなくそれを協力している人で、良い人達ではないんだろうな。
結果として養子に出されるといってこの孤児院から去った人は孤児院からいなくなってるわけだし、どこかに連れて行かれてるのは間違いないよね。
僕たち子供を連れていく理由はなんなんだろう。しかも良くない理由で。)
そんな時レオはふと、院長から大量の金属の匂いがしたというマシューの言葉を思い出した。
(そういえば金属の匂いってなんだろう。身近な金属って何があるかな。料理器具とか?
でも院長が普段料理してるわけだから、今日に限ってってことはないだろうし、大量のだからなぁ。
あとは、僕らは使う機会ないけどお金とかかな?院長なら普段食料を買いに行ったりするし。
・・・そういえば奴隷っていう人がいるって聞いたことある。たしか、人が人を買って働かせるっていうやつ。王都にいた時に見たこともある。お父さんとお母さんに目塞がれたけど。
人がいなくなったその日に大量の金属の匂いが院長からして、しかも院長は僕達に良くない隠し事をしてる。僕が初対面で気味が悪く感じるくらいには。
もしかして院長は子供を誰かに売ってる?いや、流石にそれは・・・でも、辻褄が合いすぎてる。)
急に表情が変わり、様子がおかしくなったレオに気付いたマシューがレオに話しかけた。
「おいレオ、大丈夫か?どうしたんだ?」
「突拍子もない話だけどさ、院長が僕ら孤児院の子供を売って奴隷にしてるって言ったらどう思う?」
「いや、流石にそれはいくらなんでも・・・。
・・・お金の匂いだったのか?あの金属の匂いは。
で、養子に出される時期と被ってるってことか?レオが言いたいのは。」
「そうだね。他にも要素はあるんだけど、偶然で片付けるには辻褄が合いすぎてる気がするし最悪の状況を考えた方がいいと思って。
・・・どうする?」
「確実な証拠掴むしかねぇだろ。養親とかいってるやつの後をつけるか、どうにか院長の部屋に入って証拠を見つけるかくらいしか思いつかないけどよ。
流石にこの孤児院から出て後をついて行くのは無理だろ?だったら院長の部屋に忍び込むしかないと思うぜ。」
「そうだよね、それくらいしかないよね。僕たちがいくら考えても予想にしかならないし。
問題は院長の部屋にいつ入るかだけど、行けそうな時間あるかな?」
「夕食の後の自由時間は、院長はいつもチビどもと遊んでるからその時ならいけると思うぜ。
いつもは怪しまれないためにも、その時間を利用して院長の部屋に行ったりはしてなかったけどな。」
「わかった、じゃあそこで行こう。
それでなんだけど、もし証拠がなかった場合は良いんだ。一旦仕切り直しにして今回はスルーするだけだから。
ただ、もし証拠があった場合はどうする?
僕としては、僕たち2人だけでさっさとこの孤児院から抜け出すのが良いと思うんだけど。」
「俺もそれで良いと思うぜ。他の奴らに言う義理もねーしな。
あとは、もし見つかった場合はどうする?
いつもは院長室にはいない時間ではあるけど、バレないとも限らないからな。」
「その時は逃げるしかないね、この孤児院から。
こっちが2人とはいえ、大人に力で勝てるとは思えないし、勝ったとしてもここにいられるわけないからね。
院長室にまで入っておいて、誤魔化せるとも思えないし。
まあ、どちらにせよこの孤児院からは早めに出るつもりだったし、しょうがないかな。
あと、逃げる時は窓からすぐに逃げるからね。ドア側に行ったら少なくともどちらか1人は捕まると思うから。」
「まあ、そうなるよな。
1番は俺らの思い違いかつ院長にバレずに8歳になるまで力をつけて、ここからおさらばすることだけどな。
はぁ・・・ちょっと緊張してきたぜ。」
隙間風が吹き抜ける、過ごしやすい穏やかな春に2人は覚悟を決めた。
この決断は本当に正しかったのだろうか。
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