第5話 引き戻される現実
「う、うーん。ふあ〜。・・・どこだろうここ。あれ、何してたんだっけ。
・・・あっ!お父さんとお母さん!!どこ!?どこなの!?」
・・バタバタバタバタ。ガチャ。
「目を覚ましたんだねレオ君!体調は大丈夫かい?」
「そんなことよりお父さんとお母さんは!?無事なの!?どこにいるの!?」
「待って待って、一旦落ち着いてレオ君。まだそれについての状況がわかっていないんだ。焦る気持ちはわかるけど、ここに来る前にも話したよね。お兄さん達に任せてって。」
「う、うん。それは覚えてるけど、やっぱり不安だよ!お父さんとお母さんがいないと、僕何もできないから。」
「不安なのはすごくわかるよ。だけど今は信じて待つしかない。違うかい?
お父さんとお母さんが来た時にそんなんじゃ笑われちゃうよ。お兄さんとお菓子でも食べて無事を待とう。」
「・・・うん、そうする。お父さんとお母さんが来たら心配させたことを、めっ!ってする。いつもはお母さんにされてたから、今度は僕がするの。」
「うん、それでいいさ。さ、隣の部屋にジュースとお菓子を用意してあるんだ。一緒に行こう。」
騎士は、レオに希望を見せ続けることに罪悪感を覚え続けていた。
しかし、そうでもしないと騎士は怖かった。
この小さくか弱い背中が、根幹から崩れてしまう気がして。
「団長、着きましたよ。レオ君のところに行きましょう。」
「・・・覚悟は決まってたはずなんだがな。今から事実を、隠しながらとはいえ伝えなければいけないと考えると気が重すぎる。」
「そんなのわたしもですよ。貧乏くじを引いたと思って諦めましょう。それに、1番辛いのはレオ君ですから。」
「そうだよな、俺たちがこんなんじゃ駄目だわな。行こう、レオ君が待ってるだろうから。」
「レオ君、どうだいこのお菓子。最近すごく流行ってるらしいよ。」
「すごく甘くて美味しい!これなんていうお菓子なの?」
「チョコレートって言うらしいよ。この今いる王都からずっと南に行ったところで作られて、王都に運ばれてくるんだってさ。」
「そうなんだ!お父さんとお母さん用に何個か持って帰ってもいい?」
「っ!!・・・そうだね、ここにあるのは全部持ってっても良いよ。」
「えー!全部いいの!?ありがとー!」
コンコン
「はい、どなたでしょうか。」
「俺だ。入っても良いか?」
「団長ですか・・・どうぞ、お入りください。」
レオが見たことのないお菓子を楽しんでいると、来客が現れた。
レオに両親の安否を伝えにきた団長である。
「失礼するぞ。」
「あっ!すごい魔法使ってた人だ!火を消してくれてありがとうございました!かっこよかったです!」
「お礼も言えるなんてレオ君は良い子だね。体調は大丈夫かな?」
「はい!大丈夫です!今、たくさん美味しいお菓子もらって元気です!」
「そうか、それは良かった。・・・フェル、席を外してもらっても良いか?」
「・・・いえ、わたしも一緒に聞きます。」
「ちょっとこっちに来い、フェル。」
団長はレオにお菓子を振る舞っていたフェルを呼び出すと、レオに聞こえないように小声で話した。
「お前のことだ。レオ君に、両親はきっと生きていると言い聞かせて冷静になってもらっていたんだろう。ただ、生存確率が極めて低いこともわかっていたな?
嘘で励ましていたことに罪悪感を覚えて、せめてもの罪滅ぼしとして真実を知ったレオ君が取り乱した時に、自らが悪者にでもなるつもりなんだろう。
・・・それは俺が許さん。お前はよくやった。ここからは俺たち年長者に任せろ。これからのために今は部屋から黙って出て行け。いいな。」
フェルは一瞬泣きそうな顔をしながらも、笑顔でレオに振り返ると、
「ごめんね、レオ君。僕はここまでで一旦席を外すね。団長からお話があるみたいだから、よく聞いてね。」
「えー、行っちゃうの?うーん、でもわかった。また今度遊ぼうね!」
「うん、また今度ね。」
フェルは歯を噛み砕きそうなほどきつく噛み締め、部屋を後にした。
「てことで、レオ君にお話しがあって来たんだ。話しても大丈夫かな?」
「はい!大丈夫です!」
「じゃあ、結論から言うんだけどね。・・・・・ふぅ。レオ君のご両親は火事でお亡くなりになりました。」
瞬間、レオはお菓子の味も忘れ、ただ呆然と立ち尽くした。理解が追いつかなかった。
「レオ君、君のお父さんとお母さんは火事でお亡くなりになりました。」
呆然と立ち尽くし、団長の言葉を理解できず、否。理解したくなかったレオに現実を突きつけるようにもう一度両親が亡くなった事実を団長は話した。
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