第4話 事件の顛末

「そうか、実は俺の方でも聞き込みをして第三者の介入がほぼ確信出来てな。家の中がどうなっていたかを確認しようとして来たんだ。

もうすでに、容疑者と思わしき人物が上がっていて王都中で捜索を開始させている。」


「そうだったんですね、良かったです。こちらでは今、医師の方が今死因を解明してくれているはずなんですが・・・」


2人がお互いに情報交換をしながら話していると、


「団長、お疲れ様です。もうこちらの話は伝達済みでしょうか。」


「あぁ、今聞いていたところだ。どうかしたか。」


「たった今死因と身元の確認が取れまして。

亡くなっていた2人が付けていたペンダントとピアスから、おそらくこの家の家主の夫婦であることが近隣住民の方からの証言によってほぼ確定となりました。

また、男性は風魔法によって首を切られて即死。女性は背後からの刺殺ということが医者の解剖によってわかりました。

報告は以上となります。」


「・・・そうか、わかった。報告を受け取った。グループに戻って容疑者捜索に戻るように。」


「はっ!」


そう言うと、若い騎士は速やかに持ち場へと戻っていった。


「・・・あの子にこれを伝えるべきか否か。あの歳でこんなものを背負って生きていくのは辛いだろう。・・・ここは言わずに亡くなったことだけを伝えるべきか。」


「私もそれが良いと思います。いつか耳に入ってしまうかもしれませんが、それを今言えばあの子は壊れてしまうかもしれません。」


「そうだよな。・・・ふぅー。

騎士なんて碌な職業じゃないと思わないか。」


「まったくですね。やりがいを感じる部分や世間的な信頼はあれど、良いところばっかりじゃないですからね。」


「とりあえず外道をさっさと吊し上げることに全力を尽くそう。捜索に加わるぞ、着いてこい。」


「はっ!」







数刻後、犯人を名乗る男が自分から騎士団本部へと出頭してきた。


男の名前はスレイ。被害者夫婦の親友だったらしい。夫婦の子供、レオともよく顔を合わしていたそうだ。


スレイは小さな商会を営んでいたが大事な商談での資金調達に失敗。


信用を失い、存続の危機にあったところでどうにか借りた金も右腕とも言える部下に持ち逃げされ、八方塞がりになっていたらしい。


知り合いを頼ってどうにか金を借りようとし、親友であるレオの両親を頼るがそれを、子供がいてこれからお金がかかってくるし、自分達も貸せるほど余裕がないと拒否された。


10年来の親友にも見捨てられたと絶望したスレイは逆上。口論となり、一旦トイレへと夫が行った隙に妻を後ろから包丁で刺殺。


すぐに自分がやってしまったことを後悔したが、帰ってきた夫を見て、気が動転し咄嗟に魔法で殺害。


後には引けず、火を付けて証拠隠滅を図り王都からの脱出を試みるが、すでに騎士団が捜査をしていることが判明。


頭が冷え、自分のやったことの悍ましさに気が付き騎士団本部に出頭。


という流れらしい。





「クソすぎる。余りにもな話だと思わんか。」


「ほんとにそうですよ。・・・残されたレオ君はどうなるんでしょう。三親等や親戚もいないという話ですが。」


「・・・孤児院しかないだろう。近所で引き取るなんて話があるなら別だが、レオ君があの地でこれからも過ごす選択肢をとるかはわからないな。」


「これ、誰がレオ君に報告するんですか。宿舎の方で疲れて寝てしまっていたようですが、今はお菓子を食べながら両親の迎えを待っているようですよ。」


「・・・俺が行く。お前らに押し付けるのはさすがにな。」


「・・・わたしもついて行きますよ。気乗りはしないですけど、他の若手よりは慣れてますから。」


「騎士をやめたくなる瞬間No. 1だな・・・。行くか。」


「ここからは心を鬼にしましょう。でないと、我々が潰れてしまいますから。」


「はぁ、足が重いな。」

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