第2話 崩れゆく幸せ

「ど、どういうこと・・・?あれ、僕の家だよね?なんで燃えてるの!?なんで!?」


楽しい時間を過ごし家に帰ってきたレオを迎えたのは、母のおかえりではなく燃え盛る我が家だった。


あたりは騒然としており、どうにか火事を収めなければ隣の家にも燃え移りそうなほどの業火であった。


レオが突然の出来事に理解が追いつかずに混乱し、呆然と立ち尽くしていると、


「お前らー!騎士団の方々を連れてきたぞ!大規模な水属性魔法を使える方もいるぞ!」


と、近所の精肉店のおじさんが大勢の騎士を連れてやって来た。


この世界には消防団などという組織も、消火用に作られた道具や機械もない。


あるのは騎士団とその下部組織、そして『魔法』だ。



騎士団の中から1人の白銀の鎧を身に纏った美男子が出てきた。


そして何かをブツブツと呟いたかと思うと、次の瞬間大量の水が彼の右手から飛び出し、瞬く間に業火に包まれるレオの家を覆いつくしていった。


それは、この切迫した状況でさえも見る者を魅了し、おそらくこの中で最も混乱し絶望していたレオでさえも、この時ばかりは目を奪われていた。


水はまるで生きているが如く自由自在に動き回り見る間に火は消えていった。


そのままその騎士は、


「この中に、この家の関係者やこの火事の原因を知るものはいるか!何か知っているものがいれば詳細を聞きたい。」


と言い、辺りを見渡した。


初めて見た大規模な魔法に心を奪われていたレオは、ハッとして、


「あの家、僕の家なんです!お父さんとお母さんは無事なんですか!?どこにいるんですか!?」


つい先ほど到着したばかりの騎士が知るはずもないことなど念頭にもなく、レオはただ必死に白銀の騎士に縋りついた。


「この家の子か。すまないが、我々は先ほどここに来たばかりで何もわからないんだ。

とりあえず・・・ローグ!!この子を保護して宿舎の客人部屋で休ませてやってくれ。」


「はっ!承りました!

君、名前はなんていうんだい?」


「レオです。」


「じゃあ、レオ君。とりあえずお父さんとお母さんの情報がわかるまで、お兄さん達と一緒にいようか。美味しいお菓子もあるからね。」


「で、でも、家の中にお父さんとお母さんがまだいるかもしれないから!!僕探しに行かなくちゃ!!」


「そうだよね、心配だよね。でも火は消せたけどまだ家の中は熱いかもしれないし、焼け落ちちゃったりで入るのは危ないんだよ。だから今はお兄さん達に任せて待ってみよう。突然の出来事でびっくりして疲れてるでしょう。」


「・・・うん、そうする。」


「いい子だ。さあ、行こうか。こっちにおいで。」


騎士の1人がレオを、半泣きの状態ではあるものの一旦落ち着かせ、馬車に乗せて騎士団の宿舎へと連れて行った。


レオは、混乱の極致に達し精神的な疲労が蓄積されていたこともあり、すぐに眠りについてしまった。







「さて、待たせたな。この中に火事の原因やそれにつながるような情報、普段とは違う違和感など感じた者はいるか?

いれば出てきて、話を聞かせて欲しい。」


レオが一部の騎士団員達とその場を去った後、残った騎士団員達は消火できた家の中に残った痕跡探しや家の取り壊し、周辺住民への情報収集へと移った。


すると、レオの隣の家の住人が騎士の前へと歩き出て、こんなことを話し出した。

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