第1章 レオの悲劇
第1話 幸せな日々
「おはようレオ、朝よ。今日はお友達と遊びに行くんでしょ?」
「うーん、もうちょっとだけ〜。」
「もう11時になるのよ?起きてご飯食べて準備してたら間に合わなくなっちゃうわよ?」
「えっ!そんな時間なの!?早く起きないと!」
何気ない親子の会話。今日も今日とて平和な1日が始まろうとしていた。
ここはロータス王国の王都、カルア。
1年を通して暖かく過ごしやすいこの街に、レオは父のサイモン、母のカリンと共に3人で幸せに暮らしていた。
レオは5歳になり、つい1週間ほど前から幼年学校に通い始めており、今日はその幼年学校で出来た友達の家に遊びに行くことになっていた。
「お母さん!ジュン君待ってると思うからもう行くね!!」
「本当にお母さんついていかなくても大丈夫なの?」
「うん、大丈夫!けっこう家近いからすぐ着くの!じゃあもう行くからね。行ってきまーす!!」
「行ってらっしゃい。日が落ちるまでには帰ってくるのよ〜。・・・あんなに大人しい子だったのに、学校に行き始めてから随分活発になったわ。良いことではあるけど、心配ねぇ。」
家を出たレオは友達の家へと向かって1人で歩いていた。
「お母さんは心配性だなぁ。ジュン君の家近いしすぐ着くから大丈夫って何回も言ってたのに。」
レオは不満をこぼしながらも、友達の家へ行くという初めての体験に心を躍らせていた。
「ジュン君の家はこっちだから、もうちょっとだ。ジュン君の家大きいから行ってみたかったんだよなぁ。
・・・ん?あれ、スレイおじさんかな?おーい!スレイおじさーん!!」
スレイおじさんとは両親の親友で、よく家にも遊びに来るいつもにこやかな優しいおじさんである。
遠目に顔が見えたのでレオは声をかけてみたが反応はなく、それどころかいつもにこやかなスレイおじさんとは思えないほどの険しい顔つきであった。
「最近うちに来てなかったからどうしたのかなぁって思ってたんだけど。うーん、人違いかなぁ。」
レオはまったく反応が返ってこなかったため、あまりに同じ顔であることに疑問を抱きつつも、その表情の違いなどから人違いだと思い、友達の家へと足を進めた。
本当にあれは人違いだったのだろうか・・・
「ジュン君、今日は楽しかった!ありがとう!また来ても良い?」
「うん、僕も楽しかった!また来てよ!」
2人はボードゲームに熱中し、日が落ちる寸前にあたりが暗くなり始めていることに気づき、解散した。
そして夕日が沈み始め、少々暗くなった道を歩きながらレオは、今日の楽しさを思い出していた。
「ボードゲームって面白いんだなぁ。お母さんに言ったら買ってもらえるかなぁ。でも、ジュン君みたいに兄弟がいるわけじゃないからいつも遊べるわけじゃないのかぁ。」
兄弟のいるジュンを羨ましく思いながらも機嫌良く帰路につくレオは、今日の夕食はなんだろうなと鼻歌混じりで沈んでいく夕日を背に、そろそろ我が家が見えそうなところまで歩き進めていた。
この時、まだレオは何も知らなかった。
真っ赤な夕陽に負けないほど、真っ赤に真っ赤に燃え盛る、
我が家のことを。
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