第27話

「……」

 

 半壊状態となったアレイスター王国の王城を僕は空から眺める。

 ……この一件でまた、呪文研究者への反発が強くなっただろうな。ただでさえ嫌われているのに。


「儂ら円卓の奇跡の定例会議が近頃行われる……此度のはいつも汝同様欠席しておるノーエンスも参加する。汝も参加するのじゃ」


 アレイスター王国の王城を眺めていた僕に対して最も古き呪文研究者と呼ばれる最古参の円卓の奇跡のメンバーである老人、アンゴロが声をかけてくる

 

「わかったよ。爺さん」

 

 僕はアンゴロの言葉に頷く……面倒だが、サボっている人間が僕しかいないのだとしたらなんか嫌だからちゃんと行くこととしよう。


「近頃は明確に儂らへの反感を見せる愚か者が増えてきているように見える。ここらで儂らの恐ろしさを人類どもを再び見せねばあるまい」


「……」


「そのための会議じゃ……近頃でもかなり重要な会議となるじゃろうから絶対に来るのじゃよ?」


「そんな念押しされなくとも行くから大丈夫だよ。爺さん」


「それならば良いのじゃ……それでは儂も研究あるのでここいらで失礼するのじゃ」


「そうね……解散としましょうか。会議でアレス


「ん」

 

 自分へと向けられる言葉へと敵対に返答した後、僕は再び視線の方をアレイスター王国の王城の方へと戻す。


 時代は移り変わる。

 中世から近世へと時代が移り変わる中で教皇が力を失って国王が力を持ち、近世から近代へと時代が移り変わる中で国王が力を失って国民が力を持ち、近代から現代へと時代が移り変わる中で戦争がタブー視されるようになっていった。

 時代が変わるとともに今まで力を持っていたものが力を失い、新たなる者が台頭していく。


 一騎当千が当たり前のように行われる異世界と人の基礎スペックは立場関係なく同じであった地球とこの世界では色々と勝手は違うだろうが……どこであろうとも人の思いは侮れるものではないだろう。


 さてはて……現代において絶大な力を持っている呪文研究者はこの時代が終わった後も変わらず権限を維持できているのか。


「実に楽しみだね」

 

 僕の呼びかけに答えて、来てくれた円卓の奇跡のメンバーが各々の研究所へと飛行魔法で帰っていくのを横目にアレイスター王国の王城を眺めながら僕は小さな声で呟く。

 

「僕としてはどちらでも良いけどね……呪文研究者が勝とうが負けようが」

 

 今ほどの権力があっても疲れるだけ……楽しく遊んで暮らせるだけのお金を持って生き残れてさえいれば僕は満足だ。

 だからこそ。

 それが出来るだけの自分のテリトリーは何があっても守って見せよう。

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