第26話

 蹂躙。

 現状を表す意味としてこれ以上他に相応しい言葉あるだろうか?


「……■■■」

 

「■■■」


「■■」


「■■■■」


 僕ら全員が呪文束を使って魔法の詠唱をかなり短縮して高位の魔法をポンポン使うのに対して、この国の兵士たちは長ったらしい呪文を唱えて初めて魔法を発動させる。

 手数も威力も何もかもが違った。


「……馬鹿、な」


 震えるアレイスター王国の国王の声。

 そんな彼の目に映るのは地獄だ。


「……クソッ!?」


「無理だ……勝てない」


「嫌だッ!?死にたくないッ!!!……おかあァ!?」

 

「……ははは」


 僕に対抗するために集められたアレイスター王国の精鋭たちがまるでゴミのように吹き飛ばされていく。

 何もかもを呑み込んでいく炎の全身を焼かれるもの、巨大な水球に閉じ込められて窒息死するもの、土の杭に体を貫かれるもの、体を分解されるもの……誰もかれもが何も出来ずに殺されていく。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」

 

 何とか魔法の雨を潜り抜けて接近戦を挑んできたものがいたとしても、少人数であれば脅威足り得ない。

 魔法によって強化された鋼の肉体でもって一蹴する。


「これで最後」

 

「えっ……あ、いや……」


 僕はこの場にいた最後の兵士の頭を掴み……そのまま腕力で握りつぶす。

 頭がトマトのようにつぶれた兵士を地面へと落とし、最後に残ったアレイスター王国の国王へと視線を向ける。


「ひっ!?」


 僕に視線を向けられ、情けない悲鳴を上げるアレイスター王国の国王の方へと僕はゆっくりと近づいていき、彼の前に立つ。


「国王陛下……魔法の特許は如何なさいますか?ここで戦力を失った以上。更に戦力を減らすような愚行を犯さぬと信じたいのですが。何でしたら、更にグレードの高い魔法の呪文を今だけ割引価格でお売りしますよ?」

 

 一人残され、へたり込んでしまっているアレイスター王国の国王へと僕は声をかけた。


 ■■■■■


「……よし」

 

 丸焦げになった兵士たちの死体を椅子として腰を下ろし、アレイスター王国の国王から貰った今年の分の特許料として頂いた代金がしっかりと満額あるかどうかを確かめ終えた僕はゆっくりと席から立ち上がる。


「今年の分はこれでオッケー。しっかりと頂いたよ。これからも良い関係でいようね……アレイスター王国が来年も特許を更新してくれることを僕は心よりお待ちしております」

 

 ボロボロとなった玉座に意気消沈した様子で腰を下ろすアレイスター王国の国王へと僕は笑顔を向けた。

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