第二章

第1話

 300年前に特許制度が出来て以降、急速に力をつけていった呪文研究者たち。

 その栄華の象徴とも言えるのがこの大陸の中央に建てられた巨大な城であるだろう。

 どこの国にも属さず、呪文研究者たちがわが物としている領土の上に建てられるその城はこの世界のどこの国の城よりも巨大で、数々の魔法によってその城の美しさを何百年と保ち続けている。

  

 普段は呪文研究者たちが交流を交わし、友好を深めるために使われるその城の地下……通常の手段ではどうやっても入ることの出来ぬ特別な空間が城の地下には広がっていた。

 

「此度は久方ぶりに我ら全員が揃っての会議が行えたことに感謝しよう」

 

 城の地下空間……そこに広がっているのは円卓の会議室である。

 円卓を囲うように置かれる12の席の一つに腰掛ける僕はあくびを噛み殺しながら、久しぶりに見る円卓の奇跡のメンバーをぼーっと見る。

 老若男女。

 様々な見た目の人たちが集まっている……呪文研究者たちのほとんどが自身が老いるのを止める魔法を使っているため、全員が年齢詐称。

 年相応の見た目をしているのは僕しかいない。


「此度の会議の議題は簡潔である」

 

 最も長き時を生き、特許制度の無かった時代から生きている怪物たるアレゴスが会議の司会を務め、全員の前で口を開いて言葉を話していく。


「我々を舐め、我々に対して反発を露わにするようになった現状に対してどうするか、である」


「ちょっといいかな?」

 

 アレゴスの言葉に対して一人の男が手を上げる。


「ふむ。構わない……話してくれ」

 

 それを受け、アレゴスは席に座って話し手の立場を譲り、代わりに手を挙げた男が立ちあがる。

 円卓の奇跡が一人、『狂騒指揮者』の二つ名を持つ呪文研究者ノア・ハーレスト。

 年齢としては20代前半ぐらいで実年齢としては40代ごろ……ここのメンバーだと僕の次に若い男が話し始める。


「俺はアリスト教オルフォドックの教徒となったんだ」

 

 そんな男は胸元から一つの十字架を取り出して掲げ、僕たちに見せてくる。


「君たちもならないかい?」


「「「……ッ」」」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 この場にいた全員が殺気立ち、へと敵意へと剥きだしにした。

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