第24話

 金があり、権力があり、力がある呪文研究者の立場は盤石であるように見えるだろう。

 だが、時代のうねりに打ち勝つことはどんな権力者であっても難しいだろう。


 今この世界の時代としては前世で言えば中世から近世へと変わっていくような時代。

 宗教勢力の天下が終わり、王様が力を持ち始めていくような時代。

 この世界でも大きな力を持っており、現在様々な腐敗を抱える宗教勢力への反発が民衆の中でも広がっていて宗教改革が積極的に行われているような頃……宗教勢力同様に圧倒的な力でもってこの世の春を謳歌している呪文研究者への反発もまた、大きくなっていた。


「んー、呪文研究者をやる中で最も嫌なのがこれだよねぇ」

 

 特許の更新を行うかどうか、行うのであればお金を徴収するため、とある国へとやってきた僕は深々とため息をつく。


「いくら、呪文研究者と言え……これだけの人数に囲まれて勝てるとは思うまいな?」

 

 僕の暮らすレコンスタ王国から少し離れたところにある大国、アレイスター王国。

 宗教改革を断行する勢力を国内に受け入れる改革派筆頭であるこの国は呪文研究者に対してのあたりも強く、今回。

 特許料を僕から踏み倒そうと、のこのこ王城へと登城してきた僕を国の精鋭で囲んで剣を突きつけてきた。


「ありゃー。うーん」


 勝てるか、勝てないか……その二つで考えるのであれば多分、勝てる。

 でも、頭に多分がつくくらいにはちょっとピンチなのかもしれない。


「……あんまこれ使いたくないんだけど。■」

 

 僕は呪文を一つ唱え、魔法を発動させる。

 

「妙な真似をするでないッ!」


「隊長!攻撃の許可をッ!」


 僕が魔法を発動させたことに対して騒然となるこの場に。


「……もう遅いわ」


 一人の女性の声が響く。


「けっけっけ、そうじゃのう……」


「アレスがこれを使うとは何とも珍しい」


「ふふふ。頼ってくれてお姉さん嬉しいわぁ」


「かっかっか。未だに儂らに歯向かう愚か者がいるとはのぅ」

 

 いや、響く声は女性の声一つだけではなかった。

 老男女多くの声がこの場に響く。


「……ば、馬鹿な」


「普通に考えてさ……僕たち呪文研究者が協力してないわけないよね?」


「召喚魔法など、儂が数十年前に実用化させておるわい!ひっひっひ!」


 僕が発動した魔法。

 それは呪文研究者の中でも上澄みの上澄みである『円卓の奇跡』のメンバーを召喚させる魔法であった。

 今回、僕の召喚に応じてくれたメンバーは五人。

 この場を制圧するには十分すぎるほどの戦力がここに集まった。

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