第九話:宇宙猫と外出④


「あー……そう言えば誘拐犯って捕まってないんですか?」


 場の空気を入れ替えるために話題を変えることにして話を振った。

 若干、会話内容としては物騒な気もするが気になっていたことだ。


「……本来ならお話することではありませんが、如月様たちは当事者ですからね。聞く権利はあるでしょう……ええ、申し訳ありません。実はまだ捕まっていないのです。思った以上逃げ足が速いのか、あるいは――」


「あるいは?」


「いえ、なんでもありません。如月様や有栖川様には大変なご迷惑を、それにその後始末も手古摺る次第でとてもお恥ずかしい限りで……ほんと……」


「だ、大丈夫ですよ。ほら……ね?」


 どんどんと落ち込んでいってしまう七夜に弌華は真面目な人なんだなぁ……としみじみと思った。

 ついでに苦労性だとも。


「火根津さんたちには色々便宜を図ってもらいましたし、それでイーブンってことで。あまり気にしなくても」


 弌華はそう言って何とか説得する。

 本来、誘拐事件なんかにガッツリ関わってしまって面倒なことになるはずだったのだ弌華と紫苑だったが、七夜らが合間に挟まってくれて処理をしてくれたお陰か治安維持局の調書も楽に済んだ。


 弌華が車に乗り込んで救出した事実は無かったことになって、隙を突いてリオが逃げ出したのを保護したことにしてくれたのだ。

 どこからか情報が漏れた場合、誘拐犯らからの報復がある可能性を考慮しての判断らしい。

 説明された弌華も紫苑は一も二もなく同意したのは言うまでもない。


 面倒事はノーセンキュー。


 リオは不服そうではあったが、二人からすると一応恩人という感覚だ。



「ちょっとー、如月君来なさいよー!」


「り、リオ様ぁ……」


「あっ、呼ばれている。……というかいつの間に水着コーナーに?」


「話し込んでしまいましたからね。行ってあげてください」



 ようやくメインの水着を買う気になったのか何時の間にか移動し、呼びつけるリオのところへ弌華は向かった。

 荷物持ちをやらされたのだからせめて元は取らないととうきうきとしながら行くとそこに居たリオは普通の服装のままだった。



「はいはい、こっちこっちー。そして――じゃーん!」



 残念に思うまもなく弌華は手を取られ試着室の前まで連れて来られると、リオは徐にカーテンを取り払った。

 そこに居たのは――



「ぎゃぁあああっ! み、見るなよぉ……り、リオしゃまぁ」


「うん、いけてるわね。どうよ、これ! 私も脱がせてから気付いたけど結構モデル体型なのよね。ダボッとした服装が多いし。ああいや、でも部屋着だとわりと――」


「……………」


「……なんだよぉ、なんか言えよ」



 恥ずかしげに呻く紫苑は何故か水着姿になっていた。

 どう考えても犯人はリオだがこの際そこはどうでもいい、弌華にとって重要なのは――脚だ。


 紫苑は胸を手で隠しているが、弌華は一心不乱にショートパンツのような形をした水着から露わになっているスラッとした生足を見つめた。


 リオの言う通り、紫苑は意外にもモデル体型というか足が長い。

 スラッと伸びていて所謂美脚というやつだ。

 痩せ型な体型なせいのせいか、脚もどちらかというほっそりとしているがそこがまたいい。

 引きこもりの不健康な生活のせいで日にこそ焼けて無いので白くはあるが、どこか青白い肌色のせいでどこか壊れそうな印象を受ける脚――そう、つまりなんというか……言葉にするのならば。




「ナイス、美脚!」


「うるせぇ、変態!!」




 正直に感想を言ったら、とりあえず蹴られた。

 冷静に考えたら水着の感想じゃないなと反省する弌華。



 因みにその後も紫苑は水着を着せ替えショーをさせられ辱められた後、リオの方は水着は当人があっさりと購入は決めてしまった。

 傍若無人、ここに極まる。


 その後も買い物やちょっとしたアミューズメントコーナーも周り、帰える時には弌華はへとへとになっていた。



「くっ、なんで紫苑と蓬莱院さんはまだ元気なんだ」


『推察。イチカは増え続ける荷物を持っているからであると我は思う』


「なるほど、そりゃそうか。というか火根津さんやその部下の人に一部でも持ってもらえば……いや、あっちも仕事中だろうしなぁ。まっ、久しぶりに外で遊んだ感があって楽しかったか。エーヴィはどうだった?」


『…………』


「エーヴィ?」


『杞憂。なんでもなかった』


「……? そうか」



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宇宙猫を拾った話をする くずもち @kuzumochi-3224

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