第2話 リスナーはクラスメイト

「意外とリスナーさん増えちゃったな…」

「このまま登録者100万人になっちゃったり…はっ!?」

 なんて事を考えているんだろうか

 姉に誘われてVTuberをやる事になった時は「VTuberなんて…」など思っていた私が…

 今はそんな事を考えている場合ではない。

 今日は始業式の日だ、生徒会長として生徒や先生達に向けて話さないといけない日だが、それ以上に緊張するモノがある。

 それは、クラス替え

 生徒会長だとしても陰キャ当然の私には本当に大嫌いなイベントだ。


「あ、ここだ。」

 私のクラスは3-B、席は外側の窓の側。

 まぁ、去年もこの位置だったから落ち着くな

「今日からこのクラスの担任になる、松井里香です。」

「お、俺ら勝ち組じゃね?」

「は?」

「だってさ、担任がこんな美人なんだぜ!」

「勝ち組しか言いようがないだろ」

「別に、僕は興味ないかな」

「なんでだよ。」

「僕には推しがいるから」

 ん?推し?

 前の席から男子のうざけた会話が聞こえてくる

 あの子って確か、去年も同じクラスで…

 クラスのリーダーみたいな男子からいじめられて不登校になった子。

 いや、そんなはずは…あんな酷い事された子がこんな早くに戻ってくるなんて…

「怜斗くんも知ってると思うけど、僕、去年は同じクラスの男子からいじめられてた、けど…」

 けど?

「VTuberに出会って僕のセカイが変わったんだ!」

「VTuber?あ、あれだろ?アニメキャラみたいな奴が配信するんだろ?」

 VTuber…!?そ、それって…いや、デビューしてすぐ登録者が10万いったが、そんなに知名度は…

「まぁ、そんな感じで、有名なのは事務所に入ってる、いわゆる企業勢なんだけど」

「僕は個人勢が好きなんだ!」

「ほ、ほう…」

 ど、どんな者がいじめられっ子のセカイを変えてしまったんだ?

 知りたい、自分って期待してる訳ではないが。

「名前は篠原夏希っていうだけど、すっごく可愛くて、いつも歌枠をやっていて本当に上手くて、ザ・元気っ子って感じの見た目なのに歌声をよーく聴いているとなんかかっこよさもあって…」

 あぁー!

「それ、わた…ふぐっ」

 慌てて口で手を抑える

「こらー!そこ、喋るんじゃない!

 あなた達は受験生なんですよ?ちゃんと受験生としてのけじめをつけてください。」

 うわ…よくある起こると凄く怖い先生だ

 まぁ、学年1位の私には関係ない事なんだがな。

「ねぇ、怜斗くん」

「なんだ?」

「さっき生徒会長が僕達に話しかけてたような…」

「ん?気のせいじゃねーか?」

「そうなのかな…」



 生徒会室で生徒会長としての仕事を終え静まり返った廊下を歩く

「はぁ…早く帰って勉強して、それから生配信の準備を…」

「やっぱり忙しすぎる。」

 調べてみると、中学3年の頃にVTuberを始めて、高校生になった今でも続けている子がいるらしい。

「いっそ、どうやって両立してるのか聞いてみたいな。」

「あ、お疲れ様です、佐々木琴子生徒会長。」

「お疲れ様ー…」

 え、どうしてこんな時間にこの子が校内にいるの?

 確か、部活にも委員会にも入っていなかったはずだ。

 それなのに、なぜ…

「ねぇ、上原拓海さん、だっけ」

「あ、はい、そうですが…」

「どうしてこんな時間まで残っているの?

 もう6時ですよ。」

「きっとお母さんが心配していますよ。」

 拓海くんに生徒会長らしく話していると

「佐々木会長、VTuberを知ってるんですか?」

 え?

「な、なんの事でしょうか…私はいつも家に帰るとすぐに宿題と予習復習をしているんですよ。」

「こんな私がVTuberやらそんなチャラチャラしているモノを知っている訳が…」

「えっと…佐々木会長」

「今日、HRの時に僕に話しかけてましたよね?」

「あ、えぇ…それが?」

「その時、『それ、私』と言いかけてましたよね?」

「えー…」

「ね?」

「いいわよ、私の秘密を教えてあげる」




「えー!?」

「しーッ」

 ここは高校の近くにあるファミリーレストラン。

 私の家で話すのは姉が仕事から帰ってくると姉が彼氏と思い込むと思ったからだ。

「ほ、本当に琴子ちゃんが篠原夏希ちゃんの中の人だったなんて…」

「あ、やっぱりそうは思わないわよね…篠原夏希は私とは正反対のキャラなんだから」 

「あの、”たくみん”って分かりますよね?」

「あ、たくみん、ね。」

「覚えてるわよ、初めて配信にコメントをしてくれた方で、私がファン第一号と呼んでいるリスナーよ」

 「忘れるわけ…」

「それ、僕です。」

「え?」

「本当です!」

「同接数が6人しかいないと言われている初配信の6人の一人で、あまりコメントが飛ばなかった中『可愛い』とコメントをした、たくみんは」

「僕だよ、夏希ちゃん!」

え、気持ち悪い、なにこれ

ホントにいるんだ…キモヲタって

「嘘…ですよね?」

「これが証拠です。」

そう言うと拓海くんはスマホの画面を琴子に見せる

「これって、たくみんのSNSアカウント?」

「嘘…もしかして私、同級生にリプを返してたの?」

「ねぇ」

「はい?!」

「僕、夏希ちゃんのプロデューサーになっていいかな?」

「え、えぇー!?」

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優等生はVTuber めろん @yua0304

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