優等生はVTuber

めろん

第1話 優等生はVTuber

「あ、初見さんいらっしゃーい!」

「みみさんだー!元気だった?」

今は、話題沸騰中のVTuber

篠原夏希の生配信が行われている。

彼女は、栗色のふんわりとした

可愛らしいロングに、ちょこんと結ばれたツインテールの髪型をしていて

見た目は幼いが設定では高校2年生と言う事になっている。               今年の1月に活動を開始したばかりだと

いうのに、持ち味の明るい性格を活かし

今では十万人以上の登録者がいる。

その正体は、私立彗星高校に通う

佐々木琴子である。




「ふぅー終わった…」

私はヘッドホンを外してベッドにダイブした。

「お疲れ様」と、姉が声をかける。

「里美!私は来年には受験生なの。」

「それなのにVTuberなんて…」

そう、優等生の私がVTuberをなんてやっているのは、私の姉、佐々木里美の無茶振りによって始まった事なのだ。



あの寒い冬の日、私はいつも通り受験勉強をしていた。なのに

「ねぇ、琴子」

姉がノックもせずにドアを開け私に声をかけた。

「何?」

私は動かしていた手を止め、体を里美の方に向ける。

「VTuberやってみない?!」

「VTuber…?」

VTuber、それは自分の分身いわゆるアバターを使い、YouTuberのように動画や生配信を行う活動者の事を言う。

「どうしてこんな私がVTuberになんか…」

私が顔を下げると、「顔を上げてご覧」と里美が優しく微笑んだ。

「でも、ほんとに、なんでなの?」

私が問いかけると、里美は泣きそうになり、顔を背けた。

「お姉ちゃん…?」

私が声をかけると、里美は目をこすり顔を上げた。

「あんたは分かんないと思うけど」

「あんたは今まで…

勉強しかやってこなかったんだよ…。」

そう言いながら里美は泣き崩れる。

「で、でも楽しいよ…。」

「え?」

「学校で生徒会長をやったり、本を読んだりね…!」

私は無邪気にピースサインをしてみた、がなんだか違和感がした。

やはり、私にはこんな子供のような

仕草は似合わないのだろう。

でも、里美の言うとおり

私は今まで勉強しかやってこなかった。

それなら、私にVTuberはお似合いなのかもしれない。

「私、VTuberになるよ!」





あれから3ヶ月が経ち

学校にしか居場所がなかった

私には、もう一人の自分

篠原夏希のファンがいる、インターネットと言う居場所を手に入れた。


そして、「たくみん」と言う

大切なファンも出来た。

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