第3話 異世界!?固有スキル!?

 小鳥の囀り、そよ風による木々の葉擦れ音、近くを流れる小川のせせらぎ音が聴こえる。

 目を開けると俺は森の中にいた。

 こんなに気持ちの良い朝は久しぶ……………

「朝!?俺は確か飲酒運転野郎の車で轢かれて、死んだ、はずでは…………?」

 大声を出したら鳥が晴天の空へと飛び立った。ごめん、鳥達。

 てかここどこだよ、森……なのは誰の目から見ても明らかだろう。

 だって草木めっちゃあるもん。鳥が鳴いてたんだもん。川の水流れてるもん。

 喉乾いてるしこの水飲んじゃってもいいかな、いいよね、よし飲もう。

 そして俺は透き通った如何にも

「ミネラル豊富だyo」な感じがする川水を、手を盃の形にして掬って飲んだ。

「な、な、ななな……美味すぎるだろ!都会の水と比べて断然に違う……!

 いっつもジュースとかの味付き派で水やら白湯やら飲む人の気が知れなかったけど、こりゃ美味いな。田舎、というより自然にある水はこんなにも美味い物だったのか」

 今気付いたが水が飲めるってことは死んでない、のか死後の世界なのか。

 いや死後の世界がこんなに綺麗なはずないだろう、うんうんそうだそうだ。

 じゃあなんだ、転生か?そんなバカげた話あるわけないよな。

 でもそんな気がするんだよな。生きてる心地がある。

 もし、これが転生ならば、ラノベとかアニメの通りなら森抜けた先に村や町、ましてや都市がある。それならいったんこの森を抜けよう、と思ったけども、

 腹が、減った。

 昨日?って言っていいか分からんけど昨日カップラーメン食えんかったしな。

 嗚呼、カップラーメンと推しが恋しいよ……

 ただこうなってしまった以上仕方がない! 

 腹が減っては戦は出来ぬと言うし、なんか食べ物ないかなぁ。

 川魚をそのまま食べる訳にはいかんし、道具もないから動物狩るって訳にもいかないしなぁ。

 でもそこに生えてるキノコ食べる訳にも……

 ん?誰だ、あそこでなんか食ってる女の子は!

 食べ物があるなら分けて欲しい!let's negotiate!!(交渉しよう!!)

「こんにちは。自分迷子になっちゃって、お腹が空いてるので食べ物を恵んでくれませんか……?」

 やべ、陰キャ'sスキル『HITOMISIRI』が発動してしまった!

「いいよ!どうぞ!」

 え?まじか、嬉しいけど手に持ってるのって……

「このキノコ美味しいよ!決して毒とか無いよ!ほらっ!」

 まぁ、この子もバクバク食ってるし人体への害はなさそうだな。

 普通に焼いてるしなんか醤油みたいなタレも付けてるし、

 後なんかもう目の前にあるし。

「はい、あ~んだよ!」

 まさかの今まで生きてきて初あーんが異世界になるとは……

 思ってもみなかったなぁ、ははは。

「なんだこれ、美味すぎる……!噛む度に旨味という旨味が疲れた体に染みる……

 そうか、キノコのビタミンBの疲労回復効果のお陰か!んだとしてもそんなすぐ効果出ないし、てか美味ぇなこれ……俺の胃がブラックホールになりそうだ」

 やべ、美味すぎて理性飛んで早口になっちまった。

 これは引かれたよなぁ、初対面でこれは流石に……

 と心の中で嘆きながらブラックホールになった俺の胃袋にキノコ達が量子テレポーテーションするかの如く消えていく。

「キノコってそんな効果あるんだね!お兄さん物知りなんだね!もっとあるから食べる?」

 あるぇ?冷めた目で見られるかと思ってたのに、

 期待や羨望の想いを宿した碧色の眼差しビームが俺を串刺しに……!

「十分食べれたし、もう大丈夫だ。食べ物恵んでくれてありがとうな。

 何かお礼がしたいから俺に出来る事なら何でも言って欲しい」

 食うもん食ったらスキル『HITOMISIRI』もだいぶ収まった。

 俺より年齢低そうだし、敬語はおかしいしな。

 あと何でもとは言ったけど俺から音ゲー取ったら、そこらの普通の高校生と同じで大した事は出来ないけど。

「私はセシル・ヴァレンティン!気軽にセシルって呼んでねっ!」

「俺は天羽奏音、奏音とでも呼んでくれ。何か俺に出来る事はあるか?」

「カノンね、分かった。カノンってなんか変わった服着てるんだね。

 もしかして異世界人?」

 あれ、お礼のとこ聞こえてないのかなぁ。

 多分敢えての無視だなこりゃ。

 てかなんで異世界から来たって分かるんよ。

 あ、前の音ゲーの大会の出場服着てたわ。

「なんで異世界から来たと分かった……?あと何か俺に出来る事はあるか?」

「実はこの森には異世界の人が良く辿り着くんだよ。大体十数年置き位の頻度でね。理由は分からないけど」

 興味深い事が聞こえたけど、やっぱこれ無視されてるよなぁ。

 俺が『何か俺に出来る事はあるか?』botになってるわ。

 反応してくれんかなぁ。

「あのさカノン、お礼の事なんだけど」

 反応してくれた、なんか嬉しい。

「うん。俺の出来る範囲なら何でも言ってくれ」

「私がしたくてした事だし気にしなくてもいいよ!」

 いやいやいや、そんな満面の笑みで返されても。

「助けて貰ったんだしお礼しないと、我慢できんのだよ」

「そう?でも考えたけど私にしかメリットないよ?」

「寧ろそっちのがお礼になっていいから、えっと、セシルの願いは何だい?」

 なんかどこぞのランプの魔人みたいな語り口調になったな。恥ずかし。

 何だい?ってなんだよ……

「実はさ、私付与魔法しか使えなくてダンジョン潜った事がないんだ。

 あ、ダンジョンっていうのは魔物の巣窟っていうと分かりやすいかな。

 周りの同い年の子達は攻撃魔法とか剣のスキル持ちだったり、回復魔法が使えたりで潜れるんだけどね。私と誰も組んでくれないんだよ、だって付与魔法だし、そんなに強くもないから」

 さっきまで元気だったセシルがちょっと涙目になっている。

 付与魔法とか強いと思うんだけどな。

 てかやっぱダンジョンがあるのかぁ、まじで異世界に来たぞ!って感じがしていいな。

 俺も行ってみたいしペア組んで潜るだけなら、俺にも出来そうだ。

 そういえば俺って魔法使えるんかな、火とか雷とか扱ってみたかったんだよなぁ。

「ダンジョンに一緒に、か。俺も行ってみたいな。ところで俺って魔法とか使えるのか?何かスキルがあったりとか」

「魔法は分からないけど、異世界人は固有スキルを持ってる事が良くあるらしいよ。とりあえずステータス見てみよ!ここをこうすると見れるよ!」

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