第4話 白い犬

 何かが動いたのに気づいたのは、そろそろ姿勢を変えようかと思い始めたころだった。


「えぇ?」


 驚いて出した声は、裏返った。


 ワンワン!


 ランタンによって暗闇の中に浮かび上がるのは、白い毛並み。


「ワンコがいるよ!」


 誰に言うともなしに、ユウタは叫んでいた。その白い犬は、ユウタに近づいてきた。手を伸ばせば触れられるところまで来ると、お座りして尻尾を振り始める。


「なんでこんな所にいるんだ?」


 立ち耳と巻いた尻尾、体型や毛の特徴から、柴犬だと思われた。


 ワンワン!


「懐っこいなぁ、お前。何? ついて来いって言ってるの?」


 尻尾を振りながら、その白い犬はユウタの服の端を咥えて引っ張った。


 なぜ床下に犬がいるのか。真っ先に不審に思うべき事柄が、何故かどうでもよくなっていく。

ドキワク☆メーターが、ぐんぐん上昇していった。


 ユウタはヘルメットライトをオンにすると、白い犬の尻尾を、匍匐ほふく前進で追ったのだった。

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