第3回 動物以上怪獣未満

物語に出てくる怪獣の楽しみ方の一つには、何を持って怪獣とするのか、という視点がある。

 一口に怪獣と言っても色々いるし、明確な定義を設けるのは難しいような気もする。

 だが、そんな難問に答えを出してくれるような作品も中には存在する。

 怪獣を日常生活に入れていない人に聞いてみてほしい。怪獣って何?と。多くの人は多分こう答える。

 大きい生物。なるほど、確かに怪獣が怪獣である所以はその大きさにあると考えるのも一つの解釈だ。

 自然界において、巨大であることは大きなアドバンテージになる。例えば、野生で一番強い生物は象らしい。(わし調べ)いくら獰猛なライオンやチーターでもあの巨体でぶち当たられればひとたまりもない。

 では、どの程度大きければ怪獣になるのか。

 これに関して、怪獣文学の傑作と名高いMM9ではこの問題に対して、面白い設定を採用している。MM9の世界では、妖怪やUMA、怪獣を総称して特異生物と呼称している。特異生物の定義は「種の存続に必要な個体数を見たいしていないにもかかわらず、絶滅せず棲息し続けている生物」とされ、妖怪と怪獣には明確な区分けが存在している。(これが環境省による定義づけであるという設定も熱い)

 それが、モンスターマグニチュードだ。体積と身長によって分けられる、怪獣版の地震区分けのようなものだ。MM9では、MM0つまり1トンの水に等しい体積以上のものを怪獣と定義している。

 この設定が秀逸なのは、これが特異生物と呼ばれる特定の存在にのみ適応される点だ。ただあらゆる生物を体積と身長で定義づけしたのなら、先に述べた象やキリン、鯨も入って来てもおかしくはない。恐竜も怪獣という事になってしまう。

この「種の存続に必要な個体数を見たいしていないにもかかわらず、絶滅せず棲息し続けている生物」という定義があまりにも秀逸で隙が無く、これだけで怪獣と言う不確定な存在がグッと明瞭になってくる。この一文を見ると、理屈よりも明文化の方がずっと胸に訴えかけてくるものがあるような気もする。

似たような設定で言えば、皆さん大好きパシフィックリムにも怪獣を大きさで区分したセリザワスケールと言うものが存在している。

これは怪獣を定義するものではないが、怪獣の大きさごとに、カテゴリー○○という名称でクラス分けされており、語感のカッコよさと、セリザワという名前に思わずニヤリとしてしまう。

 一方で、別に視点から怪獣を考えた作品もある。言わずと知れたゴジラ映画、ゴジラ2000だ。

 怪獣が多少日常に存在している人の中には、怪獣を「通常兵器では殺すことのできない生物」と定義している方もいるかもしれない。

 確かにシンゴジラしかり、多くの怪獣は人間の手で殺すことは困難だ。このゴジラ2000ではこの理由について、ゴジラの中に存在しているオルガナイザーG1という細胞によって説明している。

 強力な再生能力を持つこの細胞は、傷つけてもあっという間に再生してしまう。ゆえに、通常兵器では歯が立たないという理屈だ。


怪獣とは何ですか? それに答えはない。だが、そこが怪獣の面白いところだ。明確に定義して、リアルに扱うものもあれば、完全にファンタジーの存在として描くものもある。そしてそのどちらにも怪獣は怪獣として魅力を持っている。

 これからは、怪獣と言う存在が物語内でどう定義されているのかという視点で楽しむのも一つの手かもしれない。

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超個人的、怪獣の楽しみ方講座 諸星モヨヨ @Myoyo_Moroboshi339

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