5.魔剣を封印する方法

 魔剣を破壊することが許可された。


「破壊しても良い……じゃが、できれば封印を推奨する」

「なぜですか? 今後封印が解けてしまう危険性もあるのでは?」


 破壊してしまえば、それで終了だ。

 実際今回、封印が解けてしまっているのだ。

 今後も封印が解けないという保証はないだろう。


「確かにその危険性もあるが……お主の為でもあるのじゃ」

「私の?」

「ああ。確かに【剣聖】は強力なスキルじゃ。しかし、実際に破壊できるかどうかは分からん。魔剣は恐ろしいからの……じゃが、封印をすれば確実じゃ」

「なるほど、分かりました。それで、封印の手順はどんな感じですか?」

「これじゃ」


 アレスが取り出したのは紫色のクリスタルであった。

 中には何やら文字が書いてあるが、読むことはできない。


「これを魔剣に接触させる」

「次は?」

「それだけじゃ」

「え?」


 拍子抜けだ。

 コスモは思わず真顔になってしまう。


(余裕……(笑))


 そしてニヤニヤするのであった。

 仕方がない。

 コスモが想像していたよりも、封印方法が余裕すぎたのだ。


「何を笑っておる! 舐めてると死ぬぞい!」

「死ぬ? 命に関わらないって言ってませんでしたっけ?」

「それは呪いに関しては、じゃ! 魔剣は意思を持ってる。つまり、襲い掛かって来るのじゃよ!」

「そうなんですか!?」


 この時、初めて耳に入れた事実であった。

 だが、【剣聖】があれば、余裕で封印できるだろう。

 コスモは少し驚いたが、剣聖の強さを思い出すと、すぐに冷静になれた。


「剣聖ですから、大丈夫ですよ」

「し、心配じゃ」


 コスモを心配そうな表情で見つめるアレスであった。


「へぇ、集落の奥にこんな洞窟があるんだ」


 話が終わると、コスモとユリは集落を抜け、更に奥へと進んだ。

 何やら危険な匂いを感じるが、ここで引き返す訳にはいかない。

 ちなみに危険なので、アレスは集落で待機となった。


「うぅ、怖いです」


 ユリはアレスから渡された、ライトクリスタルを持っている。

 このクリスタルを持っていれば、暗い場所でも周囲を明るくしてくれるのだ。

 最も、エルフのみが持つ、【魔力】というエネルギーをチャージした分だけの為、できるだけ早めに決着をつけて帰りたい所ではある。


「そういえば……ユリは戦えるの?」


 独学で剣術を学んでいたようだが、どれ程の実力なのか気になったので、きいてみた。


「え、えーと……あんまり強くはないです……」

「そうなの?」

「私自身あんまり戦い好きじゃないので……」


 確かに、好戦的な性格には見えない。

 もしかして、親に言われて嫌々剣術の修行をしていたのだろうか。


「儀式の時、言われていたね」

「何がですか?」

「勇者になるように、勇者になってお金持ちになるように言われていたねって話」


 【勇者】とは、魔王を倒した者にのみ送られる称号のようなものだ。

 当然、大金が手に入る。

 ユリの親は、自分の子供に魔王を討伐させて、大金持ちになる計画をしていたのだろう。


 ユリは下を向く。


「はい……。私は勇者になるべく教育されてきました。とは言っても、私の家は貧乏なので、講師などもやとえなかったので、独学でした……」

「ユリは、本当は戦いたくないんでしょ?」

「正直に言うと、戦いたくはありません。けど……勇者になって、親を楽させてあげたいんです! それは今も変わりません!」


 コスモは思う。


(な、何て優しい子なの!?)


 追放されたにも関わらず、考えは変えていなかったようだ。

 そんな優しいユリに、コスモは言う。


「仕方がないね」

「コスモさん?」

「私が勇者になって大金が手に入ったら、山分けだ。だから、ユリは自分の本当のやりたいことを見つけなよ!」


 ユリは歩みを止める。


「え、えぇ!?」

「何? 駄目? もしかして、全部欲しかったとか?」


 分かってはいるが、あえてそう言った。

 すると、ユリは顔を横にブンブンと振る。


「い、いえ!! そんなことはありません!! ただ、いいのかなって……だって、私実力無いですし……」

「そう思うんだったら、魔王を倒すまでに、自分がやりたいことを見つけることだね。それで貢献してくれれば、問題ないよ」


 コスモは自信満々にそう言った。


(決まった!)


 後輩ができたような感覚だ。

 コスモは機嫌が良くなり、そのままユリと共に奥へと進むのであった。


「ここが最奥部ね」


 ドーム状で、広いフィールドである。


「な、なんかやばくないですか?」

「何が?」


 コスモは何も感じなかった。

 だが、ユリは何か嫌な雰囲気を感じ取ったようであった。


「あれが魔剣か」


 地面に突き刺さっている。


「これが魔剣……ほう、中々かっこいいね!」

「と、とにかく! 早く封印しちゃいましょう!」


 コスモは封印用の紫のクリスタルを取り出す。

 アレスから受け取ったものだ。


「あっけないね」


 実に簡単な依頼であった。


「え?」


 と思っていたら、クリスタルが触れる直前、剣が地面から抜け、空中に浮かび上がった。


「ちょ、なんで浮いてるんですか!?」

「分からない! けど、ここは危険だ。下がっているのをお勧めするよ!」


 ユリは距離を取った。

 コスモは持ってきた木の枝をかまえる。


「大人しく封印されていれば、壊されずに済むものを……!!」


 コスモはニヤリと笑うのであった。

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