4.壊してもいいよね?

 コスモ達は、クエストの依頼主に会いに、街の外の集落まで歩みを進める。

 現在、集落の近くを、話ながら歩いている。


「こんな所に集落があったんですね。私、はじめて来ました」

「私も、はじめて来たよ」


 2人共、ここまで来たことがなかった。

 街の外にはモンスターがいる。

 戦闘の経験がなく、更には怖いので、コスモはずっと街に引きこもっていた。


 実際にこの集落に来るまで、モンスターに襲われたが、コスモがその辺に落ちていた木の棒を剣に見立て、追い払った。

 剣聖……やはり強いスキルだ。

 戦闘においては最強クラスなのではないだろうか。


「コスモさん、やっぱり強いですね」

「でしょ?」


 コスモは今まで褒められ慣れていない為、少しでも褒められると、ついつい得意げになってしまう。


「ちなみに、剣聖を取得する前は、どんな修行をしていたんですか?」

「え?」

「ちょっと参考にしてみたいな、と思いまして!」


 かっこいい事を言いたかったが、それはできなかった。

 なぜなら、コスモは剣に関して、一切の修行をして来なかった。

 そもそも、剣士として活動していこうとも思ったことすらない。

 アドバイスなどできる訳がない。


「ごめん。私今まで修行をして来なかったから、アドバイスはできないんだ。今ここまで強いのはあくまで【剣聖】のおかげだからね」

「おお! なるほど! 教えてくれてありがとうございます!」

(あ、あれ?)


 予想外なことに、失望も嫉妬もされなかった。

 意外である。


「私ももっと修行して、コスモさんみたいになれるように頑張ります!」

「ズルみたいで、何かごめんね?」

「いえいえ、スキルは立派な生まれ持っての才能なので、別にズルいだ何て思っていませんよ」


 確かに、スキルも才能の1つだ。

 そして、スキルによって人生が決められると言っても過言ではない。


「ありがとう。ま、これだけの力だからね。使い所は間違えないように気を付けるよ」


 話をしていると、集落に到着した。


「ここが集落ですか……」


 見た所、平和そうな普通の集落であった。

 子供達が遊んでいる姿も確認できる。

 本当にここに魔剣があるのだろうか。


 依頼主は長老だ。

 長老へ会う為、コスモは集落へ入ってすぐの所にいた人に話しかけた。

 ここはエルフの集落のようで、その人も尖った耳をしていた。

 よく見ると、遊んでいる子供達も尖った耳をしている。


「おお! ついに、ついに! 依頼を受けてくれた人が現れたぞ!」


 非常に喜んでいる。

 今まで、依頼を受けたがる人がいなかったのだろう。


 コスモとユリはすぐに、長老のいる小屋へと案内された。


「よく来たのう」


 銀髪の青年であった。

 エルフは長寿なので、これでもこの集落の中ではきっと一番年上なのだろう。


「ワシの名前は、アレス。この集落の長老をしておる」

「はじめまして。私はコスモと言います。よろしくお願いいたします」


 コスモは礼儀正しく自己紹介をした。

 続いてユリもお辞儀をしながら自己紹介をする。


「あ、はじめまして。私はユリです。よろしくお願いいたします」


 自己紹介が終わったので、コスモは早速本題へと話を移す。


「それで、早速本題に入りたいと思うんですけど、大丈夫ですか?」

「問題ない。じゃが、そちらこそ大丈夫か?」

「何がですか?」

「覚悟はあるのかと、聞いておる」

「……やっぱり、危険な依頼なんですね?」


 神妙な表情をしたアレスを見て、やはり危険な依頼だということを、2人は感じ取った。


「一族に伝わる魔剣について、詳細は知っておるか?」

「いえ、知りません」


 コスモは正直に答えた。


「簡単に言うとじゃな、この剣に選ばれた人間は、永遠に呪われると言う代物なのじゃ」

「その呪い、どう危険なんですか?」


 命でも奪われるのだろうか。

 まぁ、最悪剣を破壊すれば問題ないだろう。

 コスモはそう考えていた。


「何も知らないのか?」

「はい。ユリは本で魔剣のことを少しは知っているみたいでしたけど」


 コスモはユリを見る。


「え、えっと私が知っているのはあくまで剣が気に入った人間を呪うってことだけです」


 ユリはおどおどしながら答えた。


「そうか。では、ワシから詳しく話そう」


 十分な情報を持っていなかったからだろう。

 アレスは魔剣について語り始める。


……


「斬れなくなる呪い?」

「いかにも」


 命に関わる呪いかとも思ったが、そうではなかった。


「そこまで恐ろしい呪いでは、ありませんね」

「なんと!?」


 コスモが自信に満ちた表情でそう言う。

 別に死ぬ訳ではないのだ。

 むしろ、怖がって損をしたとさえ、思っている。


「怖くないのか……!?」

「命に別状は無いんですよね?」

「あ、ああ。しかし……いいのか?」

「何がですか?」

「この依頼を受けてくれたということは、冒険者なのじゃろう? いいのか?」


 冒険者には剣を使う者が多い。

 その為、アレスは冒険者生命を絶たれるということを心配してくれているのだろう。


「斬れなくなっても大丈夫ですよ。それに、剣以外の武器だってありますし」

「何を言っておる、先程も言った通り、魔剣に魅入られた者は、剣以外装備できなくなるのじゃぞ!」


 そんなことも言っていたかもしれない。

 だが、コスモは止まらない。


「壊しちゃってもいいんですよね?」

「壊す……?」

「はい。私【剣聖】を持っていますので」

「剣聖!?」


 驚きの表情を浮かべるアレス。

 それもその筈、剣聖はかなりのレアスキル。

 数百年に一度くらいのペースで発現するレアスキルなのだ。


「そうか……剣聖か。確かにそれならば破壊することも可能かもしれないのう。いいじゃろう、破壊を許可する」

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