エピローグ とろけるような朝は心臓に悪い

 ピピピ……ピピピ……


 目覚ましの音で目が覚める。

 目覚ましが鳴るまで一度も起きないでぐっすり寝られたのは久しぶりだった。

 窓から差し込む光がまぶしい。

 久しぶりの熟睡じゅくすいだからかな、まだ頭がぼんやりする……。


「あ」


 ふと、すぐとなりから声が聞こえた。

 寝ぼけた頭でそっちに顔を向けたら……ハチミツや宝石みたいなキラキラ甘いものをたっぷり詰め込んだような笑顔のレムがいて。


「おはよう、結愛」

「ふぇ」


 甘くて優しい、とろけるような声を耳元でささやかれて私は真っ赤になった。

 し、心臓に悪い!

 だけどレムは、そんな私にも嬉しそう。

 ……あーもう。何だか私ばっかり恥ずかしがってる気がする。

 でも、起きてすぐ誰かに挨拶ができるのは……やっぱり、嬉しくて。


「……おはよう」

「うん。おはよう。寝起きもかわいいね」

「!」


 ちゅ、とまぶたにキスされて完全に寝起きから覚めた。

 もしかしたら夢喰いバクのレムにとっては普通の行為なのかもしれないけど、やっぱり心臓に悪い……!


「あはは。真っ赤。結愛、かわいい」

「も、もう! レム!」



 ――こうして、私と夢喰いバクのレムとの不思議な関係は始まったんだ。

 ……でも、心臓、もつかなぁ。

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夢喰いバクは夢見るように愛したい 弓葉あずさ @azusa522

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