あとがき

 今回はJoke? - It's no joke.をお読みくださり、ありがとうございました。本作はフィクションです。実在の人物とは関係ございませんので、ご安心くださいね。もっとも、今の社会にルッキズムという病魔が蔓延していることは、この上ない事実にございます。


 皆さん、本作をお読みになって、どう感じられましたか。建前では「皆違って皆良い」というスローガンの下で、多様性の尊重を声高に叫んでいる世間ですが、その一方で人々の美的感覚という最も「人それぞれ」な感性については、統一性が求められる時代だと思いませんか?


 本作は男性の「身長」をテーマにルッキズムを批判してみましたが、それだけではありません。最近では、今まで女性に対して当然に要求されてきた腋や足をはじめとする全身の剃毛を強制するような風潮に歯止めを掛けようと、敢えて自身のムダ毛をSNSに晒して理解を求めるといった運動が海外を中心に流行りました。一方で、日本のSNSや広告を見ると、男性向け医療脱毛とか、モテる男の除毛クリームだとか言って、今度は男性を中心に「人間は毛が無い方が美しい」という価値観を植え付けていますね。


 また、世間は著名人の顔面を取り上げて「世界で最も美しい顔ランキング」なるものを平然と発表して、それを支持する者も多い。恰幅の良い男女を広告のモデルに起用するスポーツブランドや美容化粧品メーカーが増えている一方で「瘦せ型体型や筋肉質な身体を目指せ」というブランドもある。素人小説家(笑)の短編小説のあとがきにて、その是非を論じるつもりはありませんが、こうした傾向に危機感を覚えるのは僕だけではないはずです。


 ルッキズムという病魔は、短期的には社会にとって利益となるでしょう。スタイルが良く美形とされている有名人を広告に起用すれば儲かる企業もあります。カッコ良い・可愛い人を見たいという世間の需要も満たされます。ですが、長期的にはどうでしょうか。高くなり続けるハードルに応えようと、SNSの発展と共に加工アプリの精度は上がって、美容整形技術の発展と需要の拡大に伴う低価格化によって誰もが躊躇なく自らの生まれ持った顔を捨て去って生まれ変わろうとするでしょう。そのこと自体は、何も悪い事ではありません。でも、それが当たり前となった社会では、次第に「美」の尊さは失われ、陳腐化された量産型の「美」を消費する社会へと変貌を遂げてしまうのではないかと、僕は思ってしまうんですね。


 当然、格差も生じるでしょう。経済的事情などから高度化された美的水準に追いつけなくなった人々は、その他大勢から心無い言葉を浴びせ掛けられることもあるでしょう。それこそ、本作のように悪気のない冗談として。生まれながらの顔を愛せなくなる人も増えるはずです。肥満体質を呪う人も出てくるでしょう。果ては世間との美的感覚のずれによる自殺者の増加でしょうか。


 場当たり的な駄文乱文ご容赦ください。願わくば、拙作が止めどなく加速するルッキズムの風潮に警鐘を鳴らすものとして、誰かに気付きを与えることができれば幸甚です。


 それでは……!

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Joke? yokamite @Phantasmagoria01

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