第23話 類友の学園祭準備記録
富吉にしっかりと叱られ、大勢の男子でダンボールを抱えて、準備している教室に向かえば和田に絶句された翌日。
朝から各教室ワイワイしながら学園祭の準備を進めていた。
オレたち4組が割り当てられた教室は1年3組の教室。大勢の客が来るにはあまりいい立地とはいえない。
各学年で1~3組の教室があるエリアと、4~8組と1つ空きクラスを含めたクラスのエリアが離れていて、L字の通路によって繋がれている。
1~3組は少し離れたところにあり、尚且つその中でも3組は端っこのため、人が来づらいのだ。
ちなみに、教室は天井のカーテンレールの設置場所と各クラスの出し物の完成図を照らし合わせて割り振られる。しょうがないことではある。
「エリアに向かったり、移動したりする時の通路作成よろしくね〜」
と、和田からダンボールで通路を作成するよう頼まれ朝から教室の外で延々と制作中。
「うわもう11時47分かよ、昼じゃん」
「オレ弁当ないんだよなぁ、購買は学園祭期間やらなかったよな」
ダンボールの内側を黒いペンで塗りつぶしていた田川と二宮が、ふと教室の時計を見てかなりの時間が経っていることに気づく。
朝8時頃に作り始めた頃は、雑草の葉に朝露が光って気温も涼しかったが、気づけば日が高く昇り、汗をかくほど暑くなっていた。
「なんか周りで必要なもの聞いて買ってくるついでに水戸駅で昼食わん?外出届けもらおうぜ」
笹倉が立ち上がって財布とスマホをポケットに入れる。
「とりあえず2時まで時間とって食い行こ、オレも腹減ったわ」
教室の中や廊下で準備を進めるクラスメイト達に足りなくなったものや必要なものを聞いたオレたちは、外出届けを提出し、水戸駅へ繰り出した。
「君たちどこ中?中学生がこんな時間に何してるの?」
田川とオレが雑貨屋でおつかいをして戻ってくると、隣のゲームセンターで二宮と笹倉が店長らしき人に何故か詰め寄られていた。
「おい、あいつら何やってんだ?」
「もしかして待ってる間にうめぇ棒のUFOキャッチャーでもやってたんじゃないか?さっき興味持ってたし」
「こんな時間に大騒ぎして、んでどこ中?」
「よ、4中です………」
おい?二宮嘘ついて中学校になすりつけたな?
「今メモ取ってくるからここにいてよね、電話番号とか名前聞くから」
店長らしき人が去った瞬間、2人が走ってオレたちの前にやってきた。
「碇、オレたちうめぇ棒なかなかとれなくてバカ騒ぎしてたら中学生と思われて注意されちった、まずい!」
「とりあえず先にTSUTE行ってるから後で来てくれ!」
大人しく捕まってこいよ、そう言う前に2人は足早にこの階から逃げていった。
あれ?あの2人どこいった!と店員が怒るのはその直後。
オレたちの高校には制服が無いため私服登校。そのため、学校をサボって大騒ぎしてゲーセンで遊ぶ中学生と間違われたのだ。
「いい汗かいたあとのTSUTEは美味いな」
「いやぁホントホント」
全く関係の無い中学校に罪をなすりつけた男2人が、仕事をしました顔でつけ麺をすする。
安心しきった2人にオレは、
「一高のコイツとコイツですよって笑顔で店長さんに伝えといてやったぞ☆」
「は?」
2人の箸が止まる。
「それは良くないんじゃないかな?碇くん」
「オレたち友達じゃないか、碇くん」
2人とも財布に手をつっこみ、オレの分のつけ麺を奢るためか1000円札に手が触れる。
「冗談だよ、だけど中学校になすりつけたのはやべぇなハハッ」
田川が笑って答えた。
「なんだよホントに〜、焦ったわァ」
2人は手にした1000円を再び財布にしまってしまった。奢ってくれないのかよ。
「こう考えるとオレたちバカが集まった類友だよなぁ」
「なんでオレも類友なんだ?」
「だってそうだろ、ついこの前なんてダンボールアホみたいに持ってきてただろ」
「結局あれ1階の多目的ホールに置かれて、1階で出し物行うクラスの共有物になったよな」
実に4トン分持ってきたオレのあのダンボールは、置き場がないため、ダンス部の練習場所の1つである多目的ホールに置かれ、共有物として各クラス好きに使えるようになっていた。
「それを言ったら、オレはその類友枠には入らないだろ」
田川がフッとすまして笑う。
「安心しろよ、これからしくじる。なんたってここはバカの類友集団だしな」
「やめろよその予知。不幸な未来じゃねえか」
4人で笑いながらのんびりと食事。しかし、田川が腕時計をチラリと見ると1時52分になっていた。
ここから学校まではどんなに走っても10分はかかる。
「おい、オレたちの外出届けの時間2時までじゃなかったか?」
―――おめでとう、さっそく予知が当たったな田川くん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます