第6話 かまってよ…、

 とりあえず宿題をさっさと写し、メッセージを開いた。

 スタンプが約二十個とメッセージ二個、だと思う。スタンプがずっと並んでいたので、適当にスクロールした。


 

《あずな》ねぇいい加減見ろー!!!

 

《あずな》昨日借りた体操服返したいんだけど、私のとこ来て!!

 

《wataru》もう、そんぐらい持ってきてよ

 

《あずな》渡くんがきてよー

 

《wataru》はぁ




 仕方なく彼女の元に向かう。

 

「すぐそこなんだから渡しに来いよ……。」


 そう言うと、彼女は目を逸らして、小さな声で話した。

 

「わた、じゃなくて山川くんに話しかけるの、ちょっと恥ずかしい……。」


 この女、相当めんどい。


「はいはい。で、体操服どこにあんの。」


 彼女が少し焦って、周りを見渡す。

 

「この紙袋の中にあるよ。あとさ、あんまり大きな声で言わないでよ。周りからしたら、何でってなるじゃん。」


「確かに、それはすまん。」


 彼女から紙袋受け取り、席に戻ったと同時に、南川が来た。


「なあ山川、それ何が入ってんだ?」


 彼が覗き込みながら聞いてきた。


「ただの体操服だよ。」


「なんで有沙が持ってたの?」


 結構なボリュームだった。周りの意識が自然とこっちに向く。

 ……だるいな。


「間違えて持って帰ってたんだよ、有沙が。」


「へえ。ところで今日部活は。」


 納得したみたいだ。周りも俺たちの会話から興味を失う。


「あるよ。」


「おけ、なら今日一緒帰ろうぜ。」


 南川が話している最中にチャイムが鳴った。

 こいつに適当に返事をしつつ、席に返す。

 

 教室にまだ若い女教師が入ってきた。


 

 またいつもの一日が始まった。




 夏課外なので、授業は3時間で終わりだ。いつもどおり、クラスの奴らと軽く話し、部室へ向かった。

 

 いつもの四人のメンツで、木陰のある近くの椅子に座る。

 

「今日教室で飯食えばよかったわ。山川に着いていくんじゃなかった。」

 

 そう言いながら、藤井明はおかずを口に放り込む。

 

「まあ俺らと食えて嬉しいだろ、藤井。」

 

 山本大和が、口にものが入ったまま言った。

 

 山﨑が弁当を袋から出しながら、申し訳なさそうに謝ってきた。

 

「そういえば山川、練習着持って行き忘れてたわ。すまん。」


「いや、俺もすっかり忘れたし。呼び出しもなかったから全然おけ。」


 部室で嫌がらせが起きてから、教師が部室を確認するときがある。そのときに部室にわざわざ置いておく必要がないものがあると、呼び出され怒られる。

 悪いのは、部室に忍び込むアホだろ。

 



 その後、話しながらも、急いで飯を食い終わった。

 すぐに練習着に着替える。一年は外で着替え、二年と、まだ残っている三年は部室内で着替える。

 外で着替えいるにも関わらず、何も考えずにパンツのままはしゃいでいる奴らもいる。隣のソフトテニスのコートにいる人や、ハンドボールコートに向かっている人には完璧に見られる位置で着替えている。

 まったく、こいつらは羞恥心が足りていない。

 

 ――あ。俺の足元にボールがきた。片足ソックス、片足靴下、上半身裸の状態でもつい、軽い足技を披露してからボールをきた方向に返した。


 ……サッカーをしている奴は大体こんな奴だ。俺も含め。




 練習も終わり、半分くらいの奴らが積極的に片付けをして、残りは途中でやめて着替えを始めた。

 片付けをする奴らは大体、上手い奴か、試合にあまり出れてない奴らのどちらかだ。これはどの部活でも多分一緒だろう。


 これって結構面白いよな。別に手伝わなくてうざいとか、そういう気持ちはないけど、ぎりぎりスタメンの奴がそういう所でアピールしないのは少し謎だ。これは元クラブチームと元部活でやってきた奴らの考え方の違いか?

 


 そんなことを考えつつ片付けをした後、ゆっくりと着替えた。




 山﨑とチャリ置き場に行くと、南川がすでに待っていた。

 

「やっときたか。早く帰ろうぜ。」


 返事をしてから、自分のチャリまで移動して鍵を開けた。




 それからコンビニ寄って少し話した後、五時ごろに帰宅した。


 帰宅後すぐに飯と風呂を済ませて、3時間ぐらい宿題と予習に取り組んだ。

 休憩にストレッチをしながらスマホを見ると、有沙からカバモンしようとメッセージがきている。

 オッケーのスタンプを送り、ゲームを起動した。

 彼女がオンラインになるまで待っていると、bineにメッセージがきた。

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