第30話 運命の番

「眩しっ……」


 目を細めてどうにか見ると、真っ赤な龍心の光が私の体を包むように照らしている。


「これは……!?」


 時間が経つと私を包んでいた真紅の光が、一筋の光の柱となり私の胸の上あたりを指している。光の柱は、そのまま私の胸に吸収されるように消え去った。


「え? え? え?」


 何が起こったのか理解できず、少しパニックになっていると。


「これで我と翠蘭はマコトの番となった。自分の胸をちゃんと見てみよ」


 人の姿に戻った飛龍様が私の胸を指さす。


「……胸?」


 見てみると、胸の上あたりに真紅色に輝く宝石が輝いている。

 なんで私に飛龍様の龍心が!?


「これは……!?」

「番はのう? 魂の伴侶じゃから、翠蘭は我と同等の力を得たのだよ。胸の上で真紅に輝く龍心はその証拠」

「飛龍様と同等……それってもしかして寿命も?」

「そうじゃ。番は魂の伴侶だから、魂年齢も同じになったからのう。どちらかが先に死ねば、番も後を追うように亡くなる。我らは運命を共にしておるのだよ」

「じゃあ……じゃあ私が飛龍様を置いて先に死ぬことはないのですね」

「うむ」


 飛龍様は頷くと、蕩けるような顔で微笑み私を抱きしめた。


 番は魂の伴侶……良かった。

 先に死ぬ事……それが一番怖かった。子供が出来ても飛龍様と子供を残し先に死ぬなんて耐えられない。


 本当に良かった。


「翠蘭を我の番だと発表しなくてはのう……」

「発表?」

「うむ。皆を龍宮殿に呼び盛大な宴をしようではないか。心待ちにしておるはずじゃからのう」


 盛大な宴で発表!? なんだか緊張するし、恥ずかしい。

 宴は楽しそうだけど……。

 そうなると、番候補だった明々達はどうなるんだろう?


「それじゃあ、あのメイメッ……番候補だった人たちはどうなるんですか?」

「んん? もちろん宴に参加してもらうつもりだ。その後、箱庭ハレムは解散し、好きに生きて良い。この龍人国で生活してもええしのう。他の国に行っても良い。我には翠蘭さえおれば、それで良いのだから」


 そう言いながら私の頭を優しく撫でる飛龍様。


 翠蘭さえいればいい……。

 はうっ……そんな事を言われたら、顔が火照り飛龍様の顔が見れなくなって俯いてしまう。


「なんで下を向くのだ? 可愛い顔を我に見せてくれぬか?」

「ふえぇ……!?」


 飛龍様が両手で優しく私の頬を挟み、上に向かせる。

 美しい飛龍様の顔が近付き「今度はちゃんと息をしてくれよのう?」そう言って私の口を塞いだ。


「……んっ」


 また身体中が痺れるような感覚に、力が入らなくなる。

 甘くて……蕩けそう。


「ふふっ、今はこのくらいにしとこうかのう。時間はたっぷりあるからのう」


 飛龍様は唇をぺろりと舐め悪戯に笑った。


「あっ……あっ……」


 これ以上とか、もう無理なんですが。






 この後、番の発表の盛大な宴が催された。


 色んな人にお祝いしてもらって、すごく嬉しかった。

 明々には「番だったのー!? まだ爆弾を隠してたなんて! 詳しく教えなさいよ」っと色々と詳しく聞かれた。


 宴の後。

 番候補の人たちは、それぞれいろんな道に進んだ。


 嬉しかったのは、明々が龍宮殿の女官として残り、私の近くにいてくれる事。


 なんだか龍王国に来て信じられない事ばかりが起こったけれど、いまだに夢じゃないのかなと思うくらいに私は幸せ。


 そんな私に、新たなる問題が発生するんだけれど、それはまたのお話で。




 ★★★


 あとがき


 これにてこのお話の一章は終わりです。

 二章は翠蘭の化粧が龍王国でブームとなったり、腐死病の原因となる大元を発見したり、明々にも運命の番が現れたりします。そんなお話になる予定です。

 ここまで読んで頂きありがとうございます、本作品を少しでも面白いと思って頂けたのなら★レビューなどいただけると有り難いです。今後の執筆の励みとなります。

 

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