第44話 満正誕生の裏には?









 残虐な結末を迎えた母サランの仇で、星日の寵愛する久美子邸に何故?星日の出払っている時を見計らってイジュンが、やって来るのかという事だ。


 そこには恐ろしい秘密が隠されている。


 ある夜に抜け出して極寒の北朝鮮には氷の塊や氷柱は殊のほか何処にでもある。


 だが、実は氷には不純物が含まれている。空気中を漂う【「エアゾル」砂ぼこりや波しぶき、工場から排出される粒子】など。


氷が解けて不純物が残るのでは???




それはご安心あれ!


実はアリン妃は日頃から氷を沢山従業員達に作らせていた。


それは何故かって?それは停電の多い北朝鮮では食料の保存の為にどうしても氷が必要なのだ。


 それとアリン妃の美容法の為。停電の多い北朝鮮では氷は食物保存にも重要な役割を果たしている。


 またアリン妃は美しさを維持するために、氷で顔をマッサージしたり氷風呂に入ったりして若さを維持している。


【氷マサ-ジは毛穴が引き締められて新陳代謝が正常になり毛穴から分泌される皮脂を抑える事が出来て顔のテカリも抑えられる。更には顔のたるみも抑えられる。また毛穴が小さくなれば化粧ノリも良くなる】


 氷風呂には下半身だけ沈める。引き締め効果。


 電気事情の悪い北朝鮮。


 冬場は極寒の北朝鮮。


 外でも氷を作っている。


 日頃から「エアゾル」防止の為に氷容器に水を入れて、ガーゼや網で汚れが入らないように覆ってある。


 高日よりも6つも年上のアリン妃にすれば、若さを維持する為に必死なのだ。涙ぐましい努力をしている。


 またサランもアリン妃の真似をして氷マッサ-ジをしたり、氷風呂に浸かったりしているから不純物が見つかっても何の問題もない。


 それでも誰が風呂場で殴り殺したのか?物的証拠が見つからないまま月日は流れた。


 サラン亡き後イジュンはアリン妃と星日に、想像以上の酷い嫌がらせと虐めに遭った。


 その為、イジュンの魂は正常ではない。


(いつか復讐を!)と目論んでいる。


 星日が出払っている時に限って久美子邸を訪れるイジュン。その目的は何だろうか?


 

 イジュンは星日の義弟。久美子もイジュンが訪ねて来れば嫌でも通す。実は…イジュンは、不審死した愛する母を殺害したのは、もうとっくに亡くなったアリン妃ではないかとを日頃から疑っていた。そして壮絶な虐めを受けた傷は今尚、深く胸に刻まれている。


 イヤその恨みは日を追うごとに増幅している。


 イジュンは復讐心の塊になっているが、虐めを行った張本人達は存外、それほどの事とは思っていない事が多い。


 ✰星日の思い。

(能力不足の俺から、20歳近くも年の離れた義弟に最高指導者の座を奪われて堪る者か!自分を守るために少々手荒い真似をしたが、仕方ないじゃないか、順番があるだろう。秩序を守らないお前のせいだ。お前が悪い!)そのくらいにしか思っていない。


 一方の星日の母アリン妃にしても、サランを殺害した負い目は心の片隅にあるが、イジュン虐めの手を緩めたら、いつまた…形勢が逆転してイジュンに最高指導者の地位を奪れるやも知れない。


 その為にも、コテンパンに追い込み恐怖を与え恐怖心で支配して、また…散々阿鼻雑言を言いまくり自信喪失させ、意思表示の出来ない暗い何を考えているか分からない大人に育て上げた。


 あれだけ優秀だったイジュンだが、このような状態では到底最高指導者としては務まらない。結局は星日にお鉢が回って来た。


 そんな経緯がありイジュンは、積もりに積もった積年の恨みを晴らしたいばかり。だが…そのチャンスは存外早く訪れた。久美子は日頃、星日から「弟イジュンを可愛がってやってくれ!」と言われている。案外と弟思いの所もある。


 その為、イジュンが久美子邸にやってくれば精一杯のもてなしで出迎えていた。


 そんなある日、久美子が席を立った拍子に、久美子のお茶に睡眠薬を入れた。そして眠り付いた久美子を襲い、生まれた息子満正は、実はイジュンと久美子の間に出来た子供ではないかという事なのだ。


 そんな重要な話を聞いた、すみれと百合姉妹がうっかり「北朝鮮での事は一切話してはダメ!」と固く口留めされていたのも関わらず、母親詩織に打ち明けたらしい。


 もしこの事が事実なら、星日は満正を絶対に次期最高指導者にしない。愛する久美子と一番の宿敵であるイジュンとの間に出来た子である等、どうして許せようか。それこそ自分の足元が崩れ去る。


 即刻満正を暗殺したいところだ。


 そこでイジュンは、息子満正を何としても守りたいが為に、星日の正妻ハユン妃に付いて、真実を知っている唯一の生き証人、久美子殺害の片棒を担いでいるのだと言うのだ。


 それでも、2012年9月に星日が肝癌の悪化から肝硬変であっけなくこの世を去った。


 だが、それは納得がいかない。散々虐めたのはアリン妃と星日だ。何故あんなに、親切にもてなしてくれ大切にしてくれた久美子を、殺害しなくてはならないのか……?


 いよいよ全て白日の下に???




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る