第12話 真実?




 もう久美子も、北朝鮮に拉致されて数年の歳月が流れた。


 皇太子星日との間に満正も誕生している。



 女腹のハユン妃はもう40中盤に差し掛かって、年齢的にも例え懐妊出来ても男子が生まれる確率は極めて低く焦っている。



 久美子に王子満正が誕生して久美子は星日の寵愛を独り占めして、更には星日の拠点は久美子邸と言っても過言ではなくなって来ている。


 いつ正妻の座を追われても可笑しくない現状化、最後の悪あがきをするハユン妃。


 皇太子妃の座を絶対に失いたくなかったハユンは、久美子を何としても追い出す、更に言うなら亡き者にする為に木村を、久美子邸に護衛として送り込んだのだった。


 何としても久美子を追放、いや……もっと言うなら亡き者にして、また安定した正妻の座に永遠に君臨したい。


(久美子が死ねば満正という世継ぎもいるし……まだ生まれたての赤ちゃんを手懐けて意のままに操る事だって可能だ。その為にも久美子を何としても早く追い出す……いやいや殺害しなくては……)


 王女3人の母にして、この国の女帝として永遠に君臨し続ける事が出来る。その安定した土台の上に、あの優秀でイケメン木村を手に入れる事がハユン妃の一番の望み。


 エエエエエエ————ッ!一体どういう事?

 久美子と木村が愛し合っている事は知っていたが、ハユン妃までもが木村と関係が有ると言うのか?


 ◆▽◆

 最初からあの美しい久美子に強い憧れを抱いていた木村は、ハユン妃からの言葉が頭から離れない。

(こっちだって自分の気持ちを押し殺し…この上ない憧れの久美子様が、僕の事を『木村と居ると故郷を思い出して……余りにも考えることが共通しているし……そして……心が通じ合い……日に日に離れたくない気持ちが大きくなり……気持ちが高ぶって……だから…怖いわ』)そんな風に思っていてくれたなんて……あああアアアアアア💛気持ちを抑えることが出来ない。いけない事とは知りながら、それでも…こんな訳の分からない国で、一生飼い殺しの目に遭って死んで行く位なら……例えその先に死が待っていたとしても……一瞬でも良い。幸せを感じることが出来たなら……短命では有っても俺の人生は正解だったと思える) 


 木村は業務を遂行することこそが自分の役目。そう思う反面そう思えば思う程、久美子に対する自分の気持ちを抑えることが出来なくなってきている。


 そしてある日とうとう……。

 

 いつもの日課、久美子にハングル語を教えていると、その時手が触れてしまった。

 いつもの事だが、今日だけはその白魚の様な美しい軟らかい手をギュッと握りしめた木村。


 すると久美子が、手を上に重ねて「どうしたのですか、この手は……フフフ、おいたですね?」と笑いながら元の位置に戻そうとした。


 すると……木村がまた…手を握り締めて来た。


「ダメよ……どうしたのですか?」


「クク 久美子様……僕は……自分の気持ちを誤魔化して……生きて行く事など……出来ません」

「ダダ ダメです。もし……こんな事が星日に知れたら大変な事」


「僕は……僕は……久美子様の御心を知り……自分の気持ちに噓を付けなくなったのです。」


「……それは、私だって木村の事が……だけど……」

 そう言ったか言わずか……木村が久美子の唇に自分の唇重ねてきた。


「ヤメナサイ」

 だが…木村の熱い情熱に支配されて熱いキス💋と抱擁を重ねてしまった。


 当然送り込まれたスパイがいる事など知る由もない。


 2人がキスと熱い抱擁を重ねていると、天井裏から隠しカメラで行為をフィルムに収めている者が……。


「あなたこの写真を見て!久美子と木村が抱き合っている写真よ!あんな女放り出しなさいよ。それこそ……生かしておいてもろくな事にならないわ!」


 星日の顔がみるみる般若顔の恐ろしい顔になって行く。


「あの久美子め――――!許せぬ!」


 

 ◆▽◆


 ある日、星日が久美子邸を訪れて開口一番久美子を怒鳴り散らしている。

「お前と言う女がこんな卑劣な女だとは思わなかった。即刻死刑だ!」


「グウウ~!(´;ω;`)ウゥゥ星日様……何かの間違えでは……?」


「こんな決定的な写真があるのに徹底的に白を切るつもりか?お前のような女は絶対許さん!」

 そこに木村が慌てて入って来て異議を唱えた。

「久美子様は何も悪くはありません。僕が自分の気持ちを抑えることが出来ずに……それで……強引に」


「木村お前と言う男は許さん!即刻死刑だ」


 こうして…木村は牢獄に閉じ込められて死を待つだけになった。


 そういえば、この写真を見ると確かに久美子が拒絶している様子はうかがえたので、久美子にはこれといったおとがめが無かった。だが…星日からは言いしれない程の忠告を受けた久美子だった。


「これからこんな事が有ったら只ではおかぬ!今度こそ生かしてはおかぬからな……心しておけ!」


 そして…木村粛清の日がやって来た。


 だが…牢獄に繋がれている筈の木村の姿は跡形もなく消えていた。


 一体誰が木村を逃がしたのか? 


 ※粛清(しゅくせい):北朝鮮の粛清「内部の反対者を徹底的に追放する」死刑とは限らないが実際は死刑に近い。死刑になっている。

 ◆▽◆

 ハユン妃は地団駄を踏んで怒り狂っている。

 久美子を追い込み木村との証拠写真で、完全に死刑になるのは久美子だと思ったが、まさか木村が自分の命も顧みず、久美子をかばうとは思わなかったハユン妃。


 そんな木村粛清前夜の事、星日が思い悩んで邸宅で愚痴っている。


「全く困った事だ。あの木村を失ったら開発中のミサイルや核兵器の未来は暗礁に乗り上げられてしまう。だが……側室に手を出すなど到底許されぬこと。致し方ない……」その話を聞いたハユン妃が、提案した。


「あなたはすぐに粛清の道を選ぶけど……そんな重要な人物を殺して……それに打って変る人物が見つかる当てが有るのですか?」


「それが……?」


「じゃ~?離れ小島で監禁すればいいじゃない?私に任せて下さらない?」


(どうせ皇太子星日も、若い側室久美子にうつつを抜かして、私が何していようがお構いなし。私の事など眼中にない……この私の寂しさを誰で埋めればいいの……)こうして…木村という技術者はハユン妃の愛人に……?


 渋みのある、苦み走ったクールで知的なイケメン木村に、夢中にならない女性などこの世に居ようか?それだけ魅力的な男なのだ。


 あまたの選りすぐりの男達を見て来た、目の肥えたハユン妃ですら一目見るなり夢中になった男。


 そんな男を送り込んで久美子を骨抜きにして、肉体関係を結んだ浮気現場を押さえて隠しカメラで取り、星日に見せて久美子を死に追い込む。それがハユン妃の目論見だったが、その目論みも立たれて木村との新たな関係が……。





 




 

 















 

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