第13話 幸子の思惑?
星日にすればもう王子次期最高指導者も授かり、愛する久美子と心豊かに生活したい。あんな名誉欲、金銭欲の強いハユン妃など一刻も早く追い出したい。何か問題があったら、それにこじ付け一刻も早くハユン妃を、廃妃にして追い出したいばかり。だが、そうは行かない19歳、17歳、15歳の王女達が黙っちゃいない。
そんな時に星日に頼まれて、S島に島流し同然に送り込まれた木村の様子を見に出掛けたハユン妃。木村は粛清されなかった代わりに、星日の命令でS島でミサイル開発に従事している。
※粛清(しゅくせい):北朝鮮の粛清「内部の反対者を徹底的に追放する」死刑とは限らないが実際は死刑に近い。
その頃木村は不正者として島流しの身の上、逆らう等ご法度。ハユン妃の性の奴隷とされてしまった。
ハユン妃にすれば星日に、全くと言って良いほど相手にされない日々に、星日を待つ事すら忘れ女である事すら忘れて、只々あの広い御殿で女を持て余して無駄に時を過ごしていた。それが……打って変わって今は…木村に夢中になってしまい時の経つのも忘れてしまった。
一方の本丸御殿では、思春期の難しい時期に差し掛かった王女様達の事で、星日と久美子はてんやわんや。暫く帰って来ないハユン妃を尻目に、3人の王女の相談相手、更には世継ぎ満生のこともあり、久美子が本丸御殿に間君臨する羽目になった。
◆▽
そういえば……拉致同然の形で、北朝鮮の工作員によって無理矢理船に乗せられ、工作船から生きたまま投げ捨てられた幸子はその後どうなったのか?
あれは確か1992年のまだ肌寒い春先の事。工作船から海に投げ込まれた幸子は、あの時中国の巡視船に保護された。
そして中国人の船員達に事件の経緯を話した。
「北朝鮮の工作船から海に投げ込まれた」
そこで運の良い事に船員の1人に見初められ、中国で第二の人生を送って幸せに暮らしていた幸子なのだが、中国にも北の工作員が大勢散らばっていた。
北の工作員に捕まり「子供がどうなっても良いのか?」と脅され、また日本に戻った。
まさか……こんな酷い手引きをしたのが「岩田」リ・ドハだとは、露とも思わず、また寄りを戻してしまった。バカな女。
惚れた弱みでどうしても、この謎めいた冷淡でクールな二枚目ドハと、別れる事が出来なかった幸子。
*******
赤や黄色に乾燥した野と、色ガラスのような張りつめた青い空。
1993年11月晩秋の事。
ドハに連れられてゴルフ場に向かった幸子なのだが、そこで見るからに優しそうな紳士風の岸田と会った。
その日はコースを回った後、食事をして別れた。
それからと言うもの、岸田からの度重なるアプローチに、断り切れずにとうとう出て行く羽目になった。
それと言いうのも、ドハとミノは岸田コ-ポレーションとは、仕事がらみで深い繋がりが有る。
輸入雑貨店の他に、100均商品も販売しているドハの会社『リンリン』は、パチンコ店の景品の一部として、岸田コ-ポレーションに商品を卸している。
そんなお得意さんを度々断る訳にもいかない。岸田社長は最初から幸子に夢中になっていた。そして現在に至った。
やっと幸せを手にしか買っていた矢先に、あの日「男と片を付けて来る!」と言って出掛けた幸子は、ドハから再三再四の度重なる金の無心に困り果てている。
それに引き換え、お金を使っても岸田は文句ひとつ言わず幸子を大切にしてくれる。幸子も今やっと幸せが訪れた、そんな日々の中でドハとの事だけが最大の悩みだった。
父親がゴミの収集の他、転々と職業を変わる。出自の余り良くなかった幸子は就職差別に合い、靴屋の店員やパチンコ店の事務員、更には生活の為にAV出演も果たしていた。そして…働き口の無い父親に代わって家族の為に仕送りをしている。
最近は岸田の誠実さにすっかり気持ちは岸田に傾いている。やっと安住の地を得ることが出来た幸子を執拗に付きまとうドハ。金の無心ばかりするドハにほとほと嫌気がさしている幸子。
もう別れたい一心。会えば別れ話の繰り返し。
「そんなこと言えた義理か?お前がAVに出演していた事やシャブ中毒だった事を岸田にバラすぞ。ここにその証拠のビデオだってあるんだ!」
「それだけは止めて下さい。お願いです!」
(岸田からプロポ-ズもされている身、もし私の全てを知ったら岸田は絶対私から離れるに違いない。絶対に知られたくない。何とかしなくては?そうだ。ドハを殺せばいいんだ!そうすれば私は大企業の社長夫人}
幸子はある行動に出る。
★★★★★
2007年、一方のスホは彼女ジアンの父親ミレ自動車社長から言われた言葉に、愕然としている。
(父親が殺人者で3人を殺しただと……?これは聞き捨てならぬ言葉、もしこれが本当だったら俺の人生終わったも同然。真実を確かめなくては?)
日本に休暇を利用してやって来たスホは、早速育ての親岸田コ-ポレーション社長岸田雄介の元に向かった。
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