第10話 母のその後?
北朝鮮の指導者の邸宅は、建築的な意味でも、10万人の兵士に守られているという意味でも、セキュリティは厳重だ。
広大な宮殿の一角には、独裁者がゴジラなどのお気に入りの名作を鑑賞するための、座席1000席の映画館があるという。
貧困で苦しむ国民をよそに、贅沢な建物は頻繁に建て替えが行われているようだ。
◆▽
1982年初夏の陽射しが眩しい6月初旬のある日、久美子は新潟新潟県柏崎市で拉致されて、北朝鮮のある場所に拉致監禁されている。
それでもこの悲惨な現状化の北朝鮮の現状から、こんなハイセンスな佇まいの小じゃれた場所などそうそう見当たらない。
それこそ……金一族と同等に近い久美子の為に、建造された建物と言っても過言ではない。また、それだけ久美子に対しての思い入れの強さの表れでもある。
それはそうだろう。
あの頃は、GDP世界第二位の経済大国日本の、それはそれは美しいお嬢様にして朝鮮王朝の血を引くお家柄のお姫様。
『何とも勿体無いお話です』
そんなお嬢様を我が国の王子の側室に迎え入れる事が出来たのだから……。
それはそれは天にも昇る思い。
邸宅こそ小粒だが、可愛いまるでヘンゼルとグレーテルに出て来るお菓子の家のような、何ともメルヘンチックな、久美子一人が住むには十分すぎる邸宅。
久美子に惚れ込んだ王子の星日は、毎日時間を見付けては久美子に会いに来ている。
久美子も最初は毎日毎晩、故郷への思慕、更には愛する人と引き裂かれた辛さで、今にも狂わんばかりに泣き叫んでいたが、星日の余りの愛の深さに、少しづつ落ち着いてきている。
だが、正妻のハユンは2人の関係に危機感で一杯。
(もし男の子でも出産されたら……こっちは女腹で、王女達しかしか居ない身。何とかしなくては?)
そして久美子邸に顔を出しては、阿鼻雑言を浴びせかけている。
「そなたのような……雑種のハ-フもどきが偉そうに~!気取ってるんじゃありません事ヨ!オ~ッホッホッホッホ~」
「あんまりです!ウゥゥ( ノД`)シクシク…星日様に訴えます」
「たかが側室のクセして生意気な!その綺麗な顔を醜くしてくれるワ———ッ!この刃物で顔に傷付けて、皇太子が寄り付かないようにしてオヤリ!」
ハユン妃の御付きの者達が、久美子を羽交い絞めにして、顔にナイフを突きつけている。
「どうだ分かったか?もし皇太子に告げ口をしたら即刻、その綺麗な顔を切り刻んでくれるワ!」
このような虐めが、まことしやかに連日のように繰り返されている。
そしてある日等々毒を盛られて身重の身の久美子に命の危機が……?
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