第24話

時は、夜7時頃であった。


またところ変わって、広島市中区小網町しないなかくこあみちょうにある佐々岡夫妻の家の大広間にて…


テーブルの上には、近くにある割烹料亭りょうていからお取り寄せした割烹重おじゅうが並んでいた。


真ん中に、お重が置かれていた。


その周りを、白い小皿が並んでいた。


テーブルの端には、アサヒスーパードライのびんがたくさん置かれていた。


席には、佐々岡夫妻と房江ふさえ房代ふさよ母娘おやこの4人がいた。


この時、華保かほは残業中なので席にはいなかった。


比呂子ひろこは、ものすごくソワソワとした表情で柱につけているカシオ電波時計を見つめていた。


「おそいわね〜…紀藤きとうのご家族の方はどこで何をしているのかしら…」


比呂子ひろこは、ものすごく心配な表情で言うた。


琢郎たくろうは、ものすごく困った声で言うた。


「もう一度、ご家族のケータイにお電話したらどうかな〜」

「分かったわよ〜」


比呂子ひろこは、ものすごく困った表情で電話をかけようとした。


(ピンポーン…)


この時、玄関の呼鈴よびりんが鳴った。


「お越しになられたわね…はーい…」


比呂子ひろこは、玄関の応対に出た。


「ああ、紀藤さまのご家族でございますね。」

「すみません…ちょっとここへ向かう途中で車がエンコして…」

「まあ、それはおたいへんでしたね…それで、どうやってこちらに?」

「ああ、慎次郎しんじろうのお友だちの車に乗ってここまで来ました。」

「そうですか…」

「あなた!!」

「なんだよぅ~」

「車の管理ぐらいしなさいよ!!」

「してるよぅ〜」

「ああ、それじゃあお上がりください…」


紀藤きとうの家の家族3人は、比呂子ひろこと一緒に大広間に入った。


「さあさあ、どうぞ。」

「よろしくお願いいたします。」


この時、房代ふさよがカリカリとしていたので房江ふさえが困った声で言うた。


房代ふさよ…」

「なによぅ!!」

「そんなにカリカリしていたらおかーさんしんどいわよ〜」

「おかーさん!!うちは家でごはん食べたい!!」

「きょうは、佐々岡のご夫婦が房代ふさよのために一席せきこしらえてくださったのよ…」

「意味が分からないわよ!!」


この時、比呂子ひろこがものすごく困った表情で房江ふさえに言うた。


房江ふさえさん…」

「ああ、ごめんなさい…房代ふさよは…お腹が空いていて…」

「ああ、そうだったのね。」


(ピンポーン…)


この時、また呼鈴よびりんが鳴ったので比呂子ひろこは玄関に向かった。


それからしばらくして、比呂子ひろこが28歳のOLさんを連れて大広間に入った。


その後、比呂子ひろこ房代ふさよ紀藤きとうの家の家族3人とOLさんを紹介した。


房代ふさよさん、紹介するわね…えーと…紀藤きとうの家のご主人さまの紀藤三十一きとうみそかずさま…奥さまのもりみさま…長男の慎次郎しんじろうさま(31歳)…こちらは、慎次郎しんじろうさまのお嫁さんになる…水上日奈子みづかみひなこさま(28歳)…です…こちらは、涌井房代ふさよさまです。」


比呂子ひろこから紀藤きとうの家のご家族と日奈子ひなこを紹介された房代ふさよは、怒った声で言うた。


「これはどう言うことですか!?」


比呂子ひろこは、ものすごく困った表情で『どうしたの?』と言うた。


房代ふさよは、怒った表情で比呂子ひろこに言うた。


「なんでうちに結婚が決まったカップルさんを紹介したのよ!!」


この時、房江ふさえがオタオタした声で房代ふさよに言うた。


房代ふさよ…ごめんなさい…ごめんなさい…」


房江ふさえは、ものすごくおたついた声で比呂子ひろこにあやまった。


比呂子ひろこは、おだやかな声で言うた。


「ああ、大丈夫よ…房代ふさよさんはお腹が空いているから早くごはんが食べたいだけよ…すみません…それじゃあ、ごはんを食べましょうか…」


比呂子ひろこは、紀藤きとうの家のご家族3人と日奈子ひなこに対してやさしい声で『ごはんを食べましょうか…』と言うた。


くわしい話は、晩ごはんがすんでからすることにした。


みんなで晩ごはんを食べている時であった。


食卓の雰囲気は、ひどく淀んでいた。


みんなが晩ごはんを食べているのに、房代ふさよはひとくちも食べていなかった。


この時、房代ふさよは怒った表情で『食べたくない!!』と言うてはしを投げた。


比呂子ひろこは、ものすごく困った声で房代ふさよに言うた。


房代ふさよさん、どうしたのかな?」

「ごはんいらない!!」

「なんでいらないのよ?」

「頭に来るのよ!!」

房代ふさよ!!…すみませんでした…」


房江ふさえは、ものすごくおたついた声で比呂子ひろこにわびたあと、房代ふさよに怒った声で言うた。


房代ふさよ!!佐々岡の家のご夫妻ふうふが用意してくださった料理を残さずに食べなさい!!」

「いらないものはいらないわよ!!」

「なんでそんなに怒るのよ!?」

「これはうちに対しての当てつけなの!?」

「違うわよ…佐々岡のご夫妻ふうふは、房代ふさよのために一席せきこしらえてくださったのよ!!」

「なんで結婚が決まったカップルさんをうちに紹介したのよ!!」

「だから、房代ふさよにお友だちがいなかったら困ると思って…」

「ますますはぐいたらしいわね!!」

「すみません…すみません…」


房江ふさえは、ものすごく困った表情で比呂子ひろこにわびた。


比呂子ひろこは、やさしい声で言うた。


「いいのよ…房代ふさよさんはとまどっているだけよ…まだ、おふたりになじんでいないだけよ…ねぇあなた…」


比呂子ひろこの問いに対して、琢郎たくろうはやさしい声で『そうだよ…』と答えた。


比呂子ひろこはやさしい声で日奈子ひなこに言うた。


日奈子ひなこさん、慎次郎しんじろうさんにビールを注いであげたら?」


三十一みそかずの横にいるもりみは『そうだったわね〜』とやさしい声で言うた。


その後、日奈子ひなこは、慎次郎しんじろうにビールをついだ。


比呂子ひろこは、やさしい声で言うた。


慎次郎しんじろうくんうれしいね…大好きなカノジョにビールをついでもらえて…」


なんなのよこれは…


うちに対しての当てつけなの!?


思い切りブチ切れた房代ふさよは、グーで房江ふさえの頭を思い切り殴りつけた。


(ガーン!!)


「いたい!!」


比呂子ひろこは、房代ふさよに対しておたついた声で言うた。


房代ふさよさん!!なんでおかーさんにひどいことをするのよ!?」


思い切りブチ切れた房代ふさよは、ものすごく怒った声で言い返した。


「ふざけるな!!うちはものすごく怒っているのよ!!」

「なんで怒っているのよ…うちは房代ふさよさんの気持ちをやわらげるために一席せきこしらえたのよ…」

「うちに結婚が決まったカップルさんを紹介してどうしたいのよ!?」

「だから、房代ふさよさんに結婚相手に出会う機会を与えたいから…」


(ガーン!!ガーン!!ガーン!!)


「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい…」


思い切りブチ切れた房代ふさよは、グーで房江ふさえの頭を殴りつけた。


その後、房代ふさよはものすごく怒った声で比呂子ひろこに言うた。


「結婚相手がほしいのだったら自分ひとりの力だけで探すわよ!!」

「自分ひとりの力だけで探すって…」

「うちに結婚が決まったカップルを紹介してどうしたいのよ!!」

「だから、慎次郎しんじろうさんと日奈子ひなこさんがどう言ったイキサツで出会ったのか…」

「そんなの聞いてどうしたいのよ!?」

「だから、おふたりが出会った場所を聞くだけでも…」

「やかましい!!」

「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!」


(ブチッ!!)


思い切りブチ切れた房代ふさよは、房江ふさえの髪の毛をちぎった。


そして…


(ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガシャーン!!)


房代ふさよは、佐々岡夫妻がせっかくこしらえた席をぶち壊した。


その後、房代ふさよはものすごく怒った声で比呂子ひろこに言うた。


「もういいわよ!!うち、結婚したいと言う気持ちはなくなったわよ!!あんたらは、うちに対して上から目線でものを言うたから一生うらみ通すわよ!!」


思い切りブチ切れた房代ふさよは、ドスドスと足音を立てながら大広間から出ていった。


房代ふさよによってぶち壊された席を見た一行は、ボーゼンとした表情を浮かべていた。


今の房代ふさよは、結婚したいと言う気持ちはまったくなかった…


そんな房代ふさよに対して『結婚結婚…』と言うのは、よくないと思う…


房江ふさえと佐々岡夫妻は、なにを考えているのかと疑いたくもなるワ(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)

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