第18話

事件の翌日の午後のことであった。


ことの次第を聞いた佐々岡琢郎ささおかたくろう比呂子ひろこ夫婦ふうふが広島から名古屋市中村区おわりなかむらの家にやって来た。


琢郎たくろうの妻・比呂子ひろこは、房江ふさえの旧友であった。


家の広間に、房江ふさえ起史たつし房代ふさよ華保かほ信介しんすけと佐々岡夫妻の7人がいて話し合いをしていた。


起史たつしは、信介しんすけ華保かほがフテイの関係にあったと言うたあと口をかたく閉ざした。


困り果てた比呂子ひろこは、起史たつしに対して『なんで華保かほさんに対してどぎつい暴力をふるったのか?』と言うた。


起史たつしさん…起史たつしさんは、なんかカン違いしているわよ…信介しんすけさんは理想のタイプが華保かほさんであって…」

「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだーーーーーーまーーーーーれーーーーーーーー!!」

起史たつしさん!!」

信介クソバカイトコ華保かほと別れてくれと言うた!!」

「言ってないわよ!!信介しんすけさんは理想のタイプは華保かほさんと言うたのよ!!」


房江ふさえは、ものすごく怒った声で房代ふさよに言うた。


房代ふさよ!!包丁持ってきて!!」

「おかーさん!!」

「早く包丁持ってきなさい!!」

「おかーさん!!おちついてよ!!」

「おかーさんは怒っているのよ!!」


たまりかねた比呂子ひろこは、ものすごく泣きそうな声で房江ふさえに言うた。


房江ふさえさん、おちついてよ!!」

「おちついて話し合いなんかできないわよ!!房代ふさよ!!包丁持ってきなさい!!」

「だからなんで包丁持ってくるのよ!?」

起史たつし信介しんすけをやっつけてやると言うてるのよ!!」

「分かったわよ!!持ってくる!!」


比呂子ひろこは、泣きそうな声で房江ふさえに言うた。


房江ふさえさん!!」


房江ふさえは、泣きそうな声で比呂子ひろこに言うた。


起史たつしは、昔から信介しんすけをうらんでいたのよ…うちが信介しんすけをデキアイした結果、起史たつし房代ふさよの人生をズタズタに壊したのよ…」


その後、房代ふさよが貝印のチタン包丁を持って広間にやって来た。


「おかーさん!!持って来たわよ!!」

「分かったわ!!」


房代ふさよから包丁を受け取った房江ふさえは、包丁を起史たつしの右手に握らせたあと、怒った声で言うた。


起史たつし!!これで信介しんすけを刺しなさい!!」


比呂子ひろこは、泣きそうな声で房江ふさえに言うた。


房江ふさえさんやめて!!」

「なんで止めるのよ!?」

「なんで信介しんすけさんを殺すのよ!?」

起史たつしは昔から信介しんすけをうらんでいたのよ!!」

「だからと言って、殺したらなにもかもがわやになるのよ!!」

「そんなの知らないわよ!!起史たつし!!信介を殺しなさい!!」

「ああ!!ぶっ殺してやる!!信介しんすけのせいでオレの人生はズタズタに壊れた!!」

起史たつしさん!!」

「おい、やめろ!!」


比呂子ひろこの横にいる琢郎たくろうは、力ない声で信介しんすけに言うた。


信介しんすけ…お前は一番肝心なことを忘れているぞ…」


琢郎たくろうから力ない声で言われた信介しんすけは、ひねた声で言うた。


「なんだよ…オレはなにも悪くねえよ!!」


琢郎たくろうは、ものすごくあきれた声で言うた。


信介しんすけは、だれのおかげで高校〜大学へ行けたと思っているのだ…お前の高校・大学の授業料は、涌井わくいの家のカネで払われたと言う事が分かっていない…その上に行った大学院の授業料も…涌井わくいの家のおカネであることを忘れているぞ…お前が3回生の時…単位を取ることを優先したいからシューカツできないと言うたから…うちがJAの人にお前を入れてくれと頼んだ…その時…わしらがどんな思いをしたと思っているのだ……」


比呂子ひろこは、ものすごくあきれた声で信介しんすけに言うた。


信介しんすけさん!!あなた…高校に受かった時にうちらとヤクソクしたことを忘れているみたいね…うちらは、高校・大学の卒業式を終えたあとすぐにお墓参りに行きなさいと言うたのよ…」

「お墓参り…」

「うちの義兄(信介がいた私立高校の付属の大学の教授だった)のお墓にお参りしなさいと言うたのよ!!」

「あのときは忙しくて行けなかった…」


見苦しいいいわけを言うた信介しんすけに対して、比呂子ひろこは怒った声で言うた。


「なさけないわね!!」


房江ふさえは、力ない声で言うた。


「もういいわよ…うち…大失敗した…信介しんすけのために起史たつし房代ふさよをガマンさせたことがよくなかったわ…その結果…起史たつしがお嫁さんをもらえなかった…房代ふさよがエンダンを断られてばかりいた…信介しんすけがお礼を言いに来ると期待していたけど…お礼を言いに来なかった…忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい忙しい…あとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあとあと…とばかりいいわけを言うて逃げた…信介しんすけは心のどこかで甘えているわよ!!…身体ずうたいばかりは大きいくせに…かんじんなことをきれいに忘れるなんてサイテーよ!!」


房江ふさえからどぎつい声で言われた信介しんすけは、ハンロンすることができなかった。


今回の誤解じけんが原因で、信介しんすけはJAの広島県本部が企画したプロジェクトチームから外されたあと、今の勤務地に強制転勤サセンされた…


起史たつしからどぎつい暴力を受けた華保かほは、子宮が破裂したので赤ちゃんを産めなくなった…


信介しんすけは、誤解じけんの全責任を負う形で華保かほと結婚した。


起史たつしは、DVの加害者であることを理由に2024年4月1日から正社員登用を取り消されたと同時に、ケーヤクを更新しないことをツーコクされた…


起史たつしは、8月末に大垣共立銀行をやめた…


それから半年後に、起史たつしは五日市(広島市佐伯区)で暮らしている伯父(房江ふさえの2番目の兄)が経営している鉄工所に転職した。


房代ふさよは1万回お見合いをしたけど、断られてばかりいたので女のしあわせをあきらめた。


今回の誤解じけんが原因で、信介しんすけ起史たつし社会的制裁ゲンバツを喰らった…


これにより生じた代償つけは、非常に高かった…


しかし、これでドラマが終わり…ではないことをしるしておく。

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