第21話 エピローグ

 剣で貫かれた魔女が地上に落ちていく。

 それを私たちは見送った。


「さようなら姉上……」


 魔女さんが悲しそうにつぶやくと、悪い魔女の姿は闇に消えていった。



「終わった……?」


 悪い魔女がいたところには何も残っていない。完全に消えてしまった。


「ローズ」


 呆然としていると、ドルン様に声をかけられた。


「見てごらん」


 ドルン様が指を差す方向には茨に包まれた城が。

 ちょっと前まではあそこにいたはずなのに、もうお城が完全に見えなくなっている。


「……あっ!」


 見ていると、何かが動いた気がした。

 次の瞬間、茨がどんどんと縮んで行く。

 急な事態に、城下町は騒然としている。人の声がここまで聞こえてきた。


「呪いが解けていくよ」


 ドルン様の表情は笑顔だった。

 呪いが解ける、それはお城にかかっている呪い。

 そして、私にかかっていた呪いもだ。



 あっという間に、お城を包んでいでいた茨は消えてなくなった。

 そこには私が見慣れたお城の姿が。

 中で人が動いているのも見える。


「さて、どうしようか」


 ぼんやりとそれを眺めていると、ドルン様が息を吐きながらいった。


「どうする……ですか?」


「ああ、キミはどうしたい?」


「えっ?」


 どういうことだろう?


「ほら、キミの呪いも解けただろ?そうなると色々と話しは変わってくるじゃないか」


「……あっ!」


 そうか、私にかかっていた呪いが消えたということは、私が迫害される理由もなくなったということで……


「キミにはこのまま国に残るという選択肢だってあるだろ?それにキミは国を救った人間ということになる。重宝されるに違いない」


 それは……そうかもしれない。

 城下町からはきっと私達の姿が見えていた。

 きっとドルン様とちょっと手伝った私の功績も伝わるだろう。

 そうなれば王だって邪険に扱うことはしないだろう。


「……どうする?」


 再度ドルン様が聞いてきた。


「私は……」



 数日後、私は自由都市に構えていた家を出る。

 今日、私たちは自由都市を出る予定なのだ。


「本当に良かったのかい?」


 隣にいるドルン様が確認をしてくる。


「ええ、何度も話しました通り決めたことですから」


「そうかい……それならもう何も言わないよ」


 鍵を閉じて二人で歩き始めた。

 自由都市の門にたどり着いたところで、


「おっ!お二人さん!今日は二人でお出かけかい?」


 衛兵の一人が声をかけてきた。

 以前、私が捕まった時に突入してきた衛兵さんだ。


「ちょっと仕事でね。数日留守にするよ」


「そうかい!気をつけてな」


 ドルン様が衛兵さんに手を振る。衛兵さんも手を振り返してくれた。

 なんとなく、お辞儀をしておく。

 街の外に出た。


「さて、これがローズの冒険者としての初仕事になるわけだけど」


 そう、私は街の冒険者ギルドに加入をしたのだ。

 孤児院での仕事はやめていないけれど、茨の能力も使えるようになったことだし、せっかくだからやってみることにしたのだ。


「はぁ……、でもやっぱり心配だなぁ」


「ですが、何度も言ったじゃないですか、私は大丈夫ですから」


 ドルン様は私が冒険者になると言った時からずっと心配している。

 なんども何も言わないと言っては、心配だというのを繰り返している。


「やっぱり国に戻ったほうが良かったんじゃないの?今だって探しているみたいだし」


 私が国に戻ることは当然なかった。

 正直、今更というのもあるし、何よりも私にはやりたことがあったから。


「そうなったらドルン様と一緒にいられないじゃないですか」


 そう、私が国に戻るということはドルン様と離れ離れになるということだ。

 今更そんなことは考えられなかった。


「ドルン様はお嫌ですか?」


「とんでもない!」


「ではいいじゃないですか」


「いやぁ、それでも冒険者はなぁ……」


 ちょっと抵抗するドルン様に私は焦れてドルン様の手をとる。


「さぁ、行きますよ!依頼の街まではそれほど近くないんですから!」


「……なんか、ローズ変わったね?」


「ええ、いつまでもドルン様に手を引かれているだけの私ではないですよ」


 ドルン様の手を引いて歩き始める。


「うん。いい感じだね。そんなローズも好きだよ。でも……」


 ドルン様は私の横に並んだ。


「こうやって横に並んで歩いて行く方が好みかな」


 そうやって私に笑顔を見せる。

 私も笑った。


「ええ、一緒に。行きましょ」


「ああ」


 私たちはこれからも一緒に歩いていく。

 それが私の選択だ。


---

これにてこの物語は終幕となります。

ここまでお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。

よろしければ最後に☆や応援コメントをぜひお願いします。


また別の物語でお会いできる事を祈ります。

具体的にはもう一作別の物語を投稿しています

恋愛ではないですが、一風変わったVRMMO・Vtuberモノになっています。

よろしければ、そちらもぜひお願いします。

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婚約者は転生王子?政略結婚で嫁いで来たけど反対されているようなので王子と一緒に駆け落ちします 猫月九日 @CatFall68

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