第5話 ギャル美少女の違和感
「…………っ」
昨日ぶりに会う制服姿の高槻さんは相変わらずの可愛いさであるが、教室に入ってからというもの僅かに見開いた彼女の瞳がこちらを捉えて離さない。それにうっすらとメイクで隠してはいるが、どことなく彼女の目が腫れぼったく見えるのは気の所為だろうか。
冷たく突き放して遊園地に置き去りにしてしまったが、どうやらあれから無事に帰宅出来たようだ。まぁ嘘コクされていた俺が高槻さんの心配をする必要も義理はないのだろうが、多少憎く思えど鬼ではない。
今後はただのクラスメイトとして接することにしよう。
「おはよう高槻さん!」
「相変わらずお綺麗だ……!」
「蘭ちゃん、課題おわんなかったから見せて〜」
「え、あ、う、うん……! みんなおはよー! ま、全くしょうがないなぁ、もう〜」
間もなくしてクラスメイトに囲まれると、高槻さんは普段通りの笑みを見せながら元気に挨拶を交わす。昨日の出来事が尾を引いているのかその笑顔はやや引き攣っているようにも見えるが、明るい性格の彼女のことだ。このまま時間が経てば俺と嘘コクで付き合っていたことなど忘れて、すぐ元に戻るに違いない。
毎度のことだが、高槻さんが登校してからわいわいと教室の雰囲気が明るくなる。俺はそんな騒がしい様子を窓際の席から眺めていると、再びこそこそと智樹から声が掛かった。
「おい正也、なんか高槻ちゃん元気なくね?」
「そうか?」
「いや、お前から話聞いてなけりゃ俺も気付かないほど小さな変化だけどさ。なんか気まずそうっていうか寂しそうっていうか……。少なくとも別れたお前に対して怒ってるって訳じゃなさそうだな」
「…………おい」
「はいはい、余計な詮索はやめますっと」
じとっとした視線を智樹に向けると、彼は降参するようにひらひらと両手を上げる。まぁそれほど俺と高槻さんが別れたのが智樹にとって衝撃的だったのだろう。相手が性格も器量も良い(と思っていた)美少女ということもあるが、何せ
だからこそ、釘は刺したとはいえどうしてもその別れた理由が気になってしまうのだろう。
「……ごめん。いつかちゃんと話すから、それまで待っててくれ」
「おうっ、俺はお前の味方だかんな」
「ありがとう」
きっと、俺の中では納得していても心の整理が出来ていないところもあるのだろう。そのように言葉を掛けてくれる親友に感謝を伝えると、俺を気を取り直して一限目の授業の準備を始めた。持ってきた鞄から筆記用具や教科書を取り出していると、ふと視線を感じる。
ちらりとその方向に目を向けると、高槻さんと視線がぶつかった。
「——————っ!」
「………………」
彼女は何故か俺に声を掛けたそうにしているも、周囲のクラスメイトに囲まれているようで中々行動に移せずにいた。もしや罰ゲームで嘘コクをした言い訳をしたいのだろうか。こちらとしてはもう終わった関係なので、話し掛けられても迷惑なだけなのだが。
それに、もし万が一声を掛けられたら理性が効かずに冷たくあたってしまうかもしれない。嘘を吐かれていたとはいえ、余計に傷付けてしまうのはこちらも気が引く。なので極力自分からは近付かないようにしようと思う。
結局朝のホームルームが始まるまで高槻さんの視線がちらちらと俺に向けられるも、一切そちらに目を向けずに授業の準備を進めたのだった。
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少し短めです。
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