#02 スキル発動スイッチを考えた



 ただ、懸念もある。

 俺のこの特殊スキルは、ウンコを我慢している時だけに限定したものだ。

 普段の俺は、ただのぽっちゃりさんだからな。

(ポンコツとか言うなや)


 そして入学してからのこの2週間、この特殊スキルをつかう絶好のシュチエーションが発生していない。

 本当なら入学早々この特殊スキルでヒーローになりたかったが、そういう場面が全然無くて、事実今おれはこうして自分の席で静かに読書をしているぼっち君だ。



 折角、特殊スキルが有るというのに、何故そのチカラを存分に発揮できないのか考える。


 特殊スキルを発揮するべき場面というのは、頻繁にある訳では無い。


 例えば、ナンパに困っている美少女のクラスメイトに遭遇したり、上級生に囲まれてカツアゲされている陰キャぼっち君に遭遇したり、幼馴染のパワハラに耐えられずにげっそりやつれているいる気弱男子に遭遇したり、祭りの縁日で買って貰った風船を手放してしまい木の枝に引っ掛かった風船に向かって泣き叫ぶ幼児に遭遇したり、試験中に腹を壊してトイレにダッシュするも間に合わなかったぽっちゃりさんに遭遇したり、ってこれは俺自身だった。


 兎に角、この特殊スキルを発揮すべき場面に遭遇することは滅多にない。


 そして、その滅多にない場面に遭遇した時に、ウンコを我慢している状況で無くては俺は特殊スキルを発動することが出来ないということも重要な必須条件である。


 こうして考えると、ココぞという場面で特殊スキルを発揮して問題解決し、ヒーローになるというのはかなり無理筋な話に思える。



 だがしかし、俺の頭の中には既に解決する為の案がある。

 要は、自分の意図したタイミングでウンコを我慢している状況を作り出すことが出来るようになれば良いだけの話だ。


 下剤とか使えば何時でもドコでもお手軽にウンコ我慢状態になれるよなってことで、早速試すことにした。



 まずは錠剤タイプ。

 小さいし飲み込むだけ良いので、一番お手軽だと思われる。

 試す為のサンプルは、ウチの母親(長年便秘に悩んでいる)が使っている物を数粒拝借した。


 結論から述べると、お話にならない。

 即効性が無いのだ。

 飲んで10分以上待たないと便意を催さなかった。

 個人差もあるのだろうけど、コレではダメだ。

 いざって時に薬飲んでも10分したら状況も変わっているはずで、問題解決など不可能だろう。


 一応使用する錠剤の数を増やして再チャレンジしてみたが、然程変化は無かった。

 もしかしたら錠剤タイプにも色々な種類があって即効性なのもあるのかもしれないが、ウチの母親が使用しているのはきっとお腹に優しい遅効性タイプなのだろう。

『お腹に優しい下剤』というのも変な話ではあるが。

『比較的、お腹に優しい下剤』と言い換えればシックリくるか。


 えっと、何の話だっけ…

 そうだ。即効性の高い下剤の話だ。


 ならば即効タイプの錠剤を手に入れる事が出来ればとも考えたが、母親の下剤を物色している際に別の物も見つけてしまったのでそちらを試すことにした。


 いちじく型の容器の浣腸薬だ。

 これは即効性があるだろう。

 実際にウチの母親も錠剤タイプで足りない時や直ぐにでも排泄したい時の為にいちじく浣腸も常備していたのだろうから。


 ということで、試してみた。


 効果はバツグンだった。

 自宅の2階にある自室で注入してみたのだが数秒でみるみる便意が沸き上がり、慌てて1階のトイレに向かうも、結局また一歩間に合わずちょっぴり漏らしてしまい、危うく小5の妹に見つかって罵倒されるところだった。


 コレならいける。


 何時でも『限界を超えた先に辿り着く世界ザ ワールド ビヨンド リミッツ』状態になれるぞ。



 だがしかし、まだ問題が残っている。


 特殊スキルが必要な場面に遭遇した際に、どうやって肛門に浣腸薬を注入するか?だ。

 自分で試した時は、下半身全部脱いでから床に四つん這いになり、いちじく型容器のノズル部分を自らの手で肛門に差し入れて注入した。

 人前でこのような作業は、非常に厳しい。

 問題解決したところで、ヒーローどころか変質者扱いされかねないしな。


 まぁ既にクラスでは居ない物として扱われているので、今更変質者扱いされたところで大差は無いって?

(やかましいわ!)









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る