第20話 迷惑系との遭遇・上
6回目のアタック。
今日はエオルジア地下神殿だ。今日の目標は25階で30分。
エオルジア地下神殿は大理石を削りだした地下神殿で、彫刻の施された白い壁が特徴だ。ギリシャの神殿を思わせる彫像が並んでいる。
中はさほど複雑じゃないが、似たような通路で迷いやすい。
とはいえ、ルートを覚えているから問題ないんだが。
「もう少しで右だ。通路が分かりにくいから注意してくれ。通り過ぎるなよ」
「了解だ!」
「はい!」
グラフィックというか見た目は奇麗なんだが、通路が巧妙に彫像の陰になるようになっていて、曲がるタイミングが難しい。
先頭のアストンが迷いなく角を曲がった。慣れてきたな。
安心したのもつかの間、通路の右に飾られた槍を持った白い彫像が動き始めた。
立て続けに放たれた三発が当たるが、硬い……止まらない。
先頭のアストンが僅かに歩を緩めてレイピアを構えるが。
「ボクに任せて!皆はそのまま走って!」
アストンの右後ろを走っていたマリーチカが言ってラインを変えた。
軽々とジャンプして彫像の整った無機質な顔に
鈍い音がして白い破片が飛び散り、巨体のバランスが崩れて壁に寄り掛かった。
その横をオードリーと俺が走り抜ける。
「いいぞ!ナイスだ!」
「もっと褒めてくれていいよ、アトリ!」
横を走るマリーチカが言う
「後でな」
タイムを見るといいペースだ。
予定通りのペースで順調に来たが、15階の回廊で予想外のことが起きた。
通路の途中を塞ぐように、4人のパーティがたむろしていた。
◆
この階層で他のアタッカーに会うのは珍しい……というか初めてだな。
4人が文様を掘られた白い床に座り込んで何かを探しているっぽい。
「すまないが、道を開けてくれないか?」
呼びかけると、そのうちの一人が立ち上がった。
「いやー困ったなぁ、まことに困って候」
「後ろに急いでいる人が来ているのに、ここで落としたマジックアイテムが見つからない」
「なあ、皆さん、一緒に探してくれませんか。貴重な時間を使わせて申し訳ないなぁ」
合いの手を入れるようにもう一人が言う。
「ああ、失礼。名乗るのが遅れてしまって誠に申し訳ない。俺はマルズって言います」
リーダー格っぽい
25歳くらいだろうか。ひょろりと背が高くて、黄色と緑のどぎつい原色の派手な衣装を着ている。
長めに伸ばした髪も黒と赤で染め分けられていた。
「ぜひ聞いていただきたい。俺達が探しているのは守りの針というアイテムでして、こんな小さなものなんですが貴重なんです」
「そう。あれは俺のひいじいちゃんの友達の従弟が当時の最強アタッカーの手伝いをした時の貰った命より大事な代物」
「此処でなくしてしまったのは、ああ全く不覚」
露骨に芝居がかったそいつらが口調で言う。
「ちょっとどいてほしいだけなんだがな。俺たちが行ったあとに探してくれ」
「いや待って待って、ここを踏み越えていかれて万が一壊されたら大変なんですよ。なんせあのアイテム、値段がつけられない」
「今や入手困難、たぶん出すところにだせば10,000,000クラウンの値が突くプレミアム品」
「可愛い女の子がお願いしてくれたら、目が良くなる気がするなー」
そう言ってそのうちの二人がマリーチカの足とオードリーの胸をじろじろと眺める。
二人が嫌そうな顔をして俺たちの後ろに隠れた。
「おやおや残念」
「では頑張って探さないといけませんなぁ」
「いやー本当に困った困った」
そいつらがこっちと自分達の
……どうやら偶然の遭遇ってわけじゃないな。ここに先回りしてわざと邪魔してるわけか。
俺達は次のダンジョンにいつ入るかを宣言してるからやろうと思えばこういうことはできるな。
「こいつらを押しのけることは出来ないのか?」
「アタッカー同士の交戦は規約違反なんだよ」
「道を塞ぐのはアリなのか?」
「規約には無いと思いと思います……普通アタッカー同士のルートが被るなんてありえないので」
アストンとオードリーが小声で答えてくれる。
成程、その辺のルールを認識したうえでこういう風に妨害しているわけだ。
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