第27話 二槍の張郃、龍と虎の戦い

 張郃は麴義と戦ったとき、槍を封じられてから短槍も持つようになっていた。


 訓練相手を務める高覧も凄腕の将軍である。


 しかし、張郃が二本の槍を持ってから高覧がまるで赤子のように扱われてしまった。


「凄まじく強い………趙雲と互角………いや、それ以上かと!!」


 高覧が称賛すると張郃は笑っていう。


「趙雲は強い。私一人では止められず、君と二人がかりでようやく互角であった。まだまだ趙雲を超えたとは言えん。」


 高覧はそう思わなかった。


「私の勘違いでなければ、今度はお一人で戦ってみてはいかがでしょう………もし、負けるようなことがあれば、私の大切な宝槍を授けましょう。」


 張郃は言う。


「それでは私がわざと負けてしまう。賭けにならないのでは?」


 これを言うと高覧は答える。


「張郃殿は謙遜なさるが、戦いは気品よりも粗暴を好み、負けず嫌いです。私の宝槍よりも趙雲に勝ちたいと願っていることでしょう………」


 それを言われて張郃は溜息を付いて言う。


「高覧には敵わないな………」


 そんな時、一人の文官が入り込んできた。


「大変だ!! 大変だ!!」


 慌てて入ってきたのは沮授である。


「どうしたのだ?」


 張郃が聞くと沮授が答えた。


「袁紹が公孫瓚と戦うみたいです!! 子供が生まれたから、功に焦っているようです!!」


 これを聞いた張郃と高覧は呆れた。


 しかし、絶好の機会でもあった。


「まるで、猿の如くだな。しかし、今攻めなければ勝機は二度と訪れないだろう。」


 張郃が言うと許攸が入り込んでくる。


「全く、気分で戦争をするとは、なんという愚君なのだ!! 戦争は遊びではないのだぞ!!」


 許攸の言葉に皆が頷く。


 しかし、四人の心は一つであった。


「公孫瓚、趙雲はそろそろ戻ってくる。それまで耐えれば俺たちの勝ちだ!!」


 麴義が言うと公孫瓚も同感であった。


「だが、麴義よ。君の怪我はもう治らない。今の状態では張郃は愚か、顔良や文醜も相手をするのは辛いだろう………この公孫瓚に任せられよ。これでも袁紹を一人囲んでから奴は私と戦うことに恐怖を覚えている。この公孫瓚に秘策あり!!」


 その言葉に麴義は不安になる。


 しかし、その不安は即座にして期待へと変わる。


「公孫瓚よ!! 貴様もこれまでだ!! この袁紹が討伐してくれるわ!!」


 袁紹が現れると、公孫瓚は白馬陣を組む。


 それを見て袁紹が言う。


「今更、白馬陣か? そんなものはもう怖くないぞ!!」


 公孫瓚が笑っていう。


「フッ、袁紹よ。貴様が私の白馬陣に包囲された時から戦争に対して臆病になったのではないか? 貴様が怯えている間に、私の白馬陣も新型となってしまったぞ………」


 公孫瓚が言うと袁紹は白馬の動き、隊列が違うことに気がつく。


「袁紹!! 死ぬのは貴様だ!! 行くぞ!!」


 公孫瓚の白馬が一斉に飛び込んでくる。


 飛び込んでくる白馬は皆、油を背負っていた。


「な、なんだ!! これは!!」


 公孫瓚が言う。


「いつまでも大盾に苦戦するのは二流、この公孫瓚を侮るなよ!! 白炎馬・義従」


 公孫瓚の白馬が油をばら撒いてから火矢を放つ、風が味方すれば袁紹軍は火炎地獄、即座に包囲される。


「フッ、袁紹よ。麴義は今、こちらにいる。今度は誰も助けてくれんぞ!!」


 公孫瓚が止めを刺そうとした時、公孫瓚の放った矢が短槍によって弾かれてしまった。


 これぞ、張郃である。


「おお、張郃よ!! 助けてくれ!!」


 袁紹が命からがらも助けを求めるも張郃は言う。


「それはできません。」


 その言葉に袁紹は激怒した。


「いいから助けるのだ!!」


 張郃は冷静にいう。


「公孫瓚を倒すために来たのです。」


 そう言うと、文醜が現れて袁紹を助け出した。


「張郃………袁紹に力を貸して何になる? 麴義のことが気になるなら、我と共に来い。それに、麴義が外にいるのだぞ?」


 そう言うと張郃は言う。


「今は麴義が大将ではない………公孫瓚、貴様だ………」


 公孫瓚が槍を手に取れば張郃と打ち合った。


 打ち合う中で顔良が麴義と対峙していた。


「顔良か………貴様からわざわざ殺されに来るとは、お望み通り、殺してやろう………」


 麴義が槍と盾を構えると顔良が自惚れながら言う。


「ふん、俺はあれから鍛錬をしてまた強くなった………貴様もこれまでだ!!」


 顔良の槍術は確かに、向上していた。


 だが、ほんの少しの成長で勝てるほど甘い相手ではなかった。


 顔良の槍は難無く麴義の腕と盾の間で挟まれてしまう。


「何が上達だ!! 笑わせるぜ!! ーーーぐぅッ!!?」


 麴義がトドメを刺そうとした時、張郃によって二度も砕かれた肋が疼いた。


「貰った~~~~!!!」


 顔良が槍を返すと麴義の負傷した肋に盾の角があたってしまった。


「ぐわぁああああ!!」


 麴義が悶絶すると顔良はすっかり奢ってしまう。


「ふん、麴義………俺はもう貴様を超えてしまったみたいだな………死ね!!」


 麴義は顔良に首を刎ねられてしまう。


 それを見た公孫瓚は叫んだ。


「麴義~~~!!!」


 張郃が短槍を手に取る。


「公孫瓚、安心しろ………俺は貴様や麴義に敬意を示す。惨殺などさせん。来い!!」


 張郃がそういうと公孫瓚は白馬の足を使って張郃から逃れる。


 公孫瓚は馬に乗りながら弓と槍で顔良を牽制、麴義の首と体を奪い取って撤退した。


 張郃の馬は袁紹からいいものが与えられず、手柄を立てるには厳しい馬であった。


「逃したか………」


 袁紹は顔良の功績を大いに称えて張郃の失敗を罵った。


 しかし、張郃はそこには居なかったのである。


「おい、張郃はどこだ!!」


 張郃は一人で山道に向かっていた。


 しばらくすると、もう一人の白馬に乗った男が下山してきた。


 これぞ、趙雲である。


 趙雲は不審に思った。


「貴様がなぜここにいる?」


 張郃は言った。


「趙雲………俺が望むのは貴様への勝利だけだ………槍を構えよ………」


 張郃がそういうと長槍と短槍を持ったまま威風堂々と張郃が立ちはだかる。


 趙雲は張郃の立ち振舞に麴義と同じく修羅を見てしまう。


 危険を感じた趙雲が涯角槍を構えた。


 気が付けば風が止み、動物たちの鳴き声も聞こえなくなっていた。


 先手を取ったのは張郃、果敢に攻める。


 趙雲は敢えて、張郃に接近戦を挑んだ。


 涯角槍は長く、接近戦では分が悪い。


 張郃の激しい攻めに趙雲は匠に長い槍を操り捌き切る。


 しかし、張郃は見抜いていた。


「次は『殺す』気で行く………分かったな………」


 趙雲が応える。


「いいだろう。来い………」


 趙雲が本気で構える。


 長い槍で牽制する気だ。


 次に先手を取るのは趙雲、長い槍が二方からではなく、四方八方から飛んでくる。


 張郃が長槍で対抗するも長さが足りず、趙雲は完全に張郃の射程距離を把握していた。


 だが、張郃の短槍が流れを変える。


 趙雲の槍を短槍で受け止めながら長槍で踏み込んで攻撃してくる。


 趙雲は避けながら反撃するが、張郃の二槍は自由自在、一本の槍で二本の槍を捌きながら攻撃するのは至難の業である。


 分が悪い趙雲は張郃の長槍を足で受け流して木で押さえつける。


「貰った!!」


 趙雲が止めを刺そうとしたが、張郃が言う。


「甘い………」


 至近距離では短槍の方が小回りが効く。


 槍を封じた趙雲は有利になるどころかますます不利になってしまった。


 趙雲は封じた槍を離して短槍を避ける。


 趙雲はすべてを悟る。


 今の張郃には、何をやっても勝ち目がないのだと………


「俺の勝ちだ!! 趙雲!!」


 勝ちを確信し、距離をものにした張郃が一本の槍では裁けない攻撃を繰り出してくる。


 振り落とされる長槍、それと同時に短槍の突き、趙雲が槍で長槍を押さえれば短槍が真っ直ぐ向かってくる。


 流石の趙雲も一本の槍で二本の同時攻撃には対応できなかった。


 しかし、何故か体が勝手に動いた。


 上からの長槍を防ぎながら趙雲はくるりと回り、突きを回避しつつも遠心力で張郃に反撃、趙雲の槍が張郃の側頭部(テンプル)を捉える。


 趙雲は己の身が貫かれたと思ったために大きく後退していた。


 思わぬ反撃に張郃は驚いた様子である。


 趙雲は今の張郃にはとても敵わないと思い、白馬に乗って逃れる。


 張郃は言った。


「待て!! 逃げるのか!!」


 張郃は言葉では言うが、テンプルにカウンターが入ったために動くことができなかった。


 幸い、趙雲は負けを悟っていたために、苦し紛れの迷いから出た反撃となった。


 そのため、ダメージは大きく無い。


 張郃は趙雲の槍捌きに驚いて追いかけることができなかった。


 趙雲と張郃の決着はまだまだ先のようである。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 世の中には、口先だけの人間と、とっさの機転で神の領域に達するものが居ます。


 公孫瓚が盾に敗れてしまったのは、知恵がなかったからでしょう。


 油をバラ撒いて二度も袁紹を包囲したわけではありません。


 また、張郃と趙雲がライバル関係にあるかどうかもわかりません。


 しかし、蜀軍にとって張郃は最も恐ろしい将軍と評されます。


 趙雲には尾ひれ背びれが付きすぎているかもしれません。


 ですが、これはあくまでも私の考える三国志の物語、物語を描くのは書き手の才能と言えましょう。


 筆が時々乱れますが、それは無能な人間が上に立ちすぎているからです。


 そういうゴミどもを放置する輩は無能、それに戦う私は仁義、しかし、無能しか居ないので私の文才も世に出回ることもありませんし、無能なゴミ共にすべてを明かすつもりもありません。


 しかし、趙雲と張郃………実にいい………最後まで書きたいものですね………


 描き切れない可能性がありそうですが………

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