第18話 袁紹、更に時を与えて麴義を逃し、曹操、色惚けして典韋を失う。

 張郃の昇格に助けられた文醜と顔良が嫉妬する。


「袁紹様、追撃はなりません。また罠があるやも………」


 時を与えすぎた袁紹の所為でもある。


 優柔不断な袁紹故に、文醜、顔良の意見に耳を傾けてしまう。


「確かに、ここは慎重過ぎて丁度よいというものやもしれんな………」


 ここで退けば袁紹が罠にかかっただけで戦果は相手の方が大きい。


 公孫瓚は袁紹軍が撤退するのを見て大いに喜んだ。


「フッ、麴義よ。もしかしたら我らは勝てるやもしれん………」


 再び時を与えてくれる袁紹、念には念をと兵士を伏せていたが、秤量などがないことで兵力は歴然とした差がそこにはあった。


 皆が大きな穴を掘ったがために公孫瓚は多いに力を取り戻す兆しが見えてきた。


 袁紹が撤退したと聞いて一番失望したのは他でもなく張郃であった。


 一方、その頃、劉備と袁術、呂布の一件で徐州が気になるものの曹操が天子を牛耳るようになってから、ある報告が舞い込む。


 張繡のことである。


 張繡は曹操に攻め込まれて宴会を強要、その後、張繡の妻が余りにも美女であるために、曹操は張繡の妻を妾にしてしまう。


 英雄、色好むと猿どもが言うが、猿、色を好むである。


 猿と英雄を混同する馬鹿にはくれぐれもならぬように………


「曹公にお会いできて嬉しゅうございます。ささ、宴会の準備はできています。」


 曹操は張繡に招かれていたのだ。


 しかし、曹操は人妻に目がなく、張繡の宴会よりも妻、雛の部屋へと向かう。


 曹操は雛の美貌に魅了されてしまう。


「おお、なんと美しい………」


 曹操は張繡を無視して雛の部屋で夜を明かした。


 張繡の所に身を寄せていた賈詡があることを知る。


「ふむ、なるほど………」


 天井から一つの密書が賈詡の部屋に置かれれば中を拝見すると、曹操が雛を自分の者にするために張繡暗殺を企てているとのこと、曹操は実際、雛を妾にするために張繡を暗殺しようとしていた。


 他の話では曹操を侮辱するように書かれていないため真実はこちらの話である。


「張繡様、曹操は張繡様を暗殺なさるおつもりです。」


 それを聞いた張繡は激怒した。


「曹操め!! 我が城を落とすだけでなく妻まで犯し、挙げ句には私の命までも狙うか!! こうなったら刺し違える覚悟で曹操を殺してやるぞ!!」


 曹操は『我、人に背くも人我に背かせん』と大言を吐き、張繡は曹操に従っていたが、雛を自分の物にしたくなったのだ。


 曹操と雛の部屋は典韋が守っている。


 曹操の中で最も強い武将は典韋のようだ。


 許褚はこの後に重宝される。


「まず、曹操を暗殺するには典韋をなんとかしなければなりません。典韋さえ殺すことができれば、曹操を守る者は誰も居りますまい………」


 張繡は歯ぎしりしながら聞いていた。


 賈詡は胡車児を呼んだ。


「胡車児よ。典韋を殺すことはできるか?」


 胡車児は賈詡の言葉に暫く間を空けてから言う。


「短戟を取り上げてくれれば倒すことができるでしょう………」


 それを聞いた賈詡は曹操と雛が溺れている所を狙う。


「典韋様、よろしければ一杯飲みませんか?」


 その誘いに典韋は拒否した。


 しかし、曹操は雛で激しく達したいと思い、典韋を他所へと行って欲しかった。


 或いは、典韋に聞かれて恥ずかしいと思ったか、張繡暗殺のために下見を命じたのか、定かではない。


 わかっていることは、賈詡の計画に狂いはないということだ。


 しかし、ここでは確実なものを用意しよう。


 典韋は父がなくなった時に関所の小役人共へと敵討ちをした。


 その時の話を賈詡が持ち出したのである。


「おや、あなたは………」


 典韋にはなんのことかさっぱりわからなかった。


「やっぱりそうだ!! 典韋様、お久しぶりです。」


 典韋と出会ったのは初対面である。


「失礼、どこかでお会いしましたか?」


 典韋が食いついたと見れば用意周到な賈詡が口先さん寸で畳み掛ける。


「李永に苦しめられていたものです。ここで英雄と出会えたのもなにかの縁、是非、一杯奢らせてください。」


 この声は曹操にも聞こえていた。


「いや、某は護衛の身、またの機会に取っておきたい。」


 典韋が任務のために断ると曹操が言う。


「はっはっは、典韋、たまには良いではないか………人の縁は大切にするものだぞ。」


 曹操がそう言うと賈詡が典韋を引っ張って行く。


「さぁさぁ、曹操様もあのように言っておいでです。今宵はうんと酔いましょう!!」


 典韋は英雄のように皆から讃えられたために、すっかりと楽しんでしまった。


 大いに酔った典韋はいつの間にか眠りについていたという。


 気がつけば、短戟がなくなっていた。


「曹操様が危ない!!」


 典韋は千鳥足で曹操の元へ向かうと胡車児と数名の兵士に囲まれてしまった。


「典韋!! 我が軍師は既に張繡暗殺を見切っておられる!! 覚悟しろ!!」


 胡車児は典韋目掛けて矢を大いに放った。


 酔ってしまった典韋には矢の雨が二重三重にも見えてしまった。


 典韋は床に伏せると全ての矢が通り過ぎていくのを確認した。


 しかし、酔っていたために相手が再び矢を構えてしまう。


 窓から飛び降りれば体を強く打つも曹昂が居た。


「曹昂!! 丞相が危ない!!」


 曹昂は典韋の言葉に従い曹操の元へと急いだ。


 しかし、曹操は雛とお楽しみであった。


「丞相!! 失礼しますがお命が危ないため、即座に逃げねばなりません!!」


 しかし、曹操はお楽しみ故に辞めることができない。


「丞相!!」


 曹昂が曹操を捕まえて引っ張ると雛から要約離すことができた。


 曹昂は曹操の命を守るために雛氏を惨殺、曹操から怒りを買う。


「曹昂!! 夫の愛する妾を良くも殺したな!!」


 しかし、曹昂は曹操のために裏から抜け出して己の馬を差し出した。


「早くこれに乗ってお逃げください!!」


 曹操は典韋の叫び声と曹安民らの悲鳴が聞こえて要約酔が覚めたという。


「曹昂、お主はどうするのだ!!」


 そう言うと曹昂は何処かへと走っていった。


「曹操はあっちだ~~!!!」


 曹昂は曹操の贅沢三昧な暮らしの恩を報いろうとしている。


 曹操は一人逃れ帰ったという。


 この事は皆に知れ渡り、曹昂の母である丁氏の耳に入ると丁氏は曹操を深く恨み離婚したという。


 曹操は丁氏に謝罪するも許されるわけもなく、丁氏は実家へと帰っていった。


 これを聞いた荀彧は曹操への忠誠を尽くす程の英雄とは思えなくなってしまったという。


 晴れて曹操の悪政から逃れることができた張繡は劉表と再び同盟を結び、曹操の武将を数え切れないは土討ち取ったという。


 曹操、色に酔い。


 典韋を始め、多くの武将を失い天下の笑いものとなってしまった。


 しかし、曹操は『流言』だと言い張ったのである。





ーーーーーーーーーーー


 雛氏は実のところ、張繡と結婚はしておらず、張済の妻であり、張済が無くなったことで雛が未亡人となり、張繡から求婚される。


 しかし、曹操に敗れてしまったために雛は曹操からも狙われてしまう。


 ゴミ男に狙われるくらいなら若いゴミの方がいいという思考が雛に芽生えた可能性がありますが、既に曹操は既婚者です。


 既婚者な上で雛を寝取ろうとした挙げ句、張繡を暗殺しようとしました。


 曹操から暗殺されることを知れば張繡が先手を取って曹操を逆に暗殺しようとした。


 後は上記(この物語の本編)の通りである。


 天下の曹操が董卓と同じと言われた理由はこれだけではないですが、そこらの三国志バカどもは董卓は善人だとか何だとかほざいているようですね。


 曹操の知られざる暴挙の数々を今後もお楽しみください。

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