第19話 陳登の謀と陳珪の計略

 曹操は典韋を失い、天下の笑いものとなってしまった。


 しかし、曹操という男は『私が天子に背いても、天子が我に背くことは許さん』というほどのクズ人間なので、事実を捻じ曲げ、真実を知るものを拷問し、死刑にしたと言う。


 故に、曹操と董卓が同じというのはよくしれたこと、最近の腐れ儒者共は董卓をいい人だとネットに記載しているが、そういう人間を見かけたらアホか馬鹿なのだと思うことをおすすめします。


 事実を捻じ曲げる無能はネットでブログを書きますが、彼らは金のため、己の欲望のためで適当なことを書いているだけなので、それを漫画で出してしまうものも居ます。


 嘘は嘘、事実は事実、ここでは後ほど、何が嘘で何が本当なのかをちゃんと記載していくつもりです。


 無論、この話は劉備三兄弟の耳にも入っていた。


 なぜかというと、劉備三兄弟はこの頃、曹操に身を寄せていたのだ。


 少し前の話になる。


 当然、大いなる屈辱を受けた張飛がこのまま呂布に対して黙っているわけでもなく、張飛は多いに笑いながら酒を飲んでいたのだ。


 関羽が言う。


「張飛、大手柄だな。さぞ酒も美味かろう………」


 張飛が言うには盗賊の馬を3000程奪ってきたという。


 しかし、盗賊とは呂布のことであった。


 張飛は呂布から城を奪われたために、我慢の限界を迎えて呂布の馬を奪ったのである。


「これで俺たちの騎兵隊ができた訳だな。はっはっはっは!!!」


 すると、当然呂布が劉備の城へとやってくる。


「この大耳野郎!! 出てこい!!」


 呂布が小沛の劉備を大耳野郎と罵っている。


 事情を知らない劉備には全く理解ができなかった。


「呂布殿!! 何故兵馬を連れて我が城へと剣を向けているのか?」


 呂布はカンカンに怒って怒鳴った。


「俺の馬を盗んでおきながらしらばくれるとは、貴様!! 紀霊での恩を忘れたのか!!」


 それを聞いて劉備が張飛に確かめる。


「張飛、もしや、この馬は呂布のものではないのか!!?」


 張飛は劉備の問に答えず打棒を持って呂布に怒鳴り返した。


「黙れ城泥棒!! この兵馬も貴様の城も俺の兄者の物だ!! 取り返して何が悪い!! いつ貴様の物になったんだ!!」


 これを聞いた呂布は派を食いしばって張飛を睨みつけた。


「張飛、前々から気に食わなかったがもう我慢の限界だ!! 劉備諸共、あの世へ送ってくれるわ!!」


 劉備は呂布に謝罪して言う。


「呂布殿!! 馬は返還いたします!! どうか落ち着いてくだされ!!」


 しかし、呂布はもう聞く耳を持たなかった。


 張飛は劉備に言う。


「兄者、すまねぇ………だけどよ。俺はもう我慢できねぇんだ!! あの野郎が兄者の城でのうのうとしてるのが気に入らねぇんだ!!」


 それを聞いた劉備も張飛の心に打たれて覚悟を決める。


「張飛、そこまで言うなら私も腹を括ろう。呂布を迎え撃つぞ!!」


 劉備三兄弟は呂布軍に応戦する。


 しかし、劉備の兵力は2000程度、呂布の10000の兵力にはとても敵わなかった。


 そんな時、陳珪、陳登が現れた。


「劉備様、呂布が兵馬をお越しておりましたのでお迎えに参りました。」


 なんと陳親子が劉備三兄弟のために裏門の逃げ道を逸早く用意してくれていたのである。


「ここは我らにお任せください。」


 陳登が言うと父の陳珪も続く。


「劉備様は徐州に居なくてはならない存在………呂布は我々が必ずなんとかします。今は落ち延びてください………」


 劉備は陳親子の言葉に従い、裏門から逃げ出した。


 三兄弟を逃した後で陳親子は呂布に報告する。


「呂布様!! こちらに盗まれた馬、3000頭がございます!!」


 それを聞いた呂布は多いに喜んで言う。


「おお、よくやったぞ陳登!!」


 呂布は陳登を第一の功として持て成した。


 そういうこともあり、劉備は曹操を頼ったのである。


 曹操も呂布から城を奪われた身でもあり、劉備を迎えることも一興だと考えたのだろう。


 徐州から劉備が離れて曹操の手駒となっており、劉備に呂布からの攻撃を防ぐよう命じられていた。


 曹操が返ってくると典韋の葬式が行われており、劉備さん兄弟はびっくりした。


 張飛と関羽はこの時、曹操の下に付くということが何を意味するのかよくわかったのである。


「兄者、この関羽、兄者に受け入れられたこと、誠に幸せでございます。」


 それに続いて張飛。


「あぁ、典韋を女に色惚けして殺してしまうとか、豚の分よりも劣る野郎だぜ!!」


 劉備はそれを聞いて二人に言う。


「二人共、声が大きいぞ………我らは今や居候の身、曹操と言う男は何を仕出かすかわからん奴だ。口は災いの元だぞ………」


 関羽と張飛はとりあえず黙った。


 一方、その頃、呂布と袁術は曹操と劉備が手を組んだことに恐れて袁術が呂布に皇帝を名乗りながら玉璽を使い呂布に詔を送っていた。


 これを呼んだ呂布は大いに怒り、袁術の使者を切ろうとした。


 ところが、陳宮に止められて曹操への土産として送ることとし、陳登が呂布の使者として早々のもとへと送られた。


「なるほど、袁術という逆賊の使者だったのか、よくぞ送られた。ささ、まずは一杯やってくれ。」


 曹操は陳登に酒を勧めてから言う。


「ところで、陳登よ。呂布の徐州は元々劉備の城………あの陳珪がそれを望むとは思えん。」


 曹操は徐州が欲しい故に徐州の人間をよく知っている。


 亡き陶謙、その亡骸を見つけ出すまで徐州を許さんと天に叫んでいる。


 それは曹操が自らそうしたこと、当然陳登も知っている。


「徐州は周囲の諸侯に狙われた地………最早、誰が狙ってもおかしくないでしょう。それで、曹操殿は未だに亡き陶謙を恨んで徐州に執着しているとか………」


 それを聞いた曹操は大いに笑って答える。


「あれは私の勘違いだ。今では陶謙へ恩を返したいと思っている。故に、徐州を呂布の手から救いたいのだ!!」


 陳登は密かに心の中で笑い内心思うのだ。


『董卓と同じ傲慢なやつだ』


「では、我々徐州の民を幸せにできるかな? 税を安くするのは勿論、劉玄徳様も殺さないと………誓えるのかな?」


 その言葉に曹操は答える。


「無論、劉備を我が元に置いているのが何よりの証拠だ。劉備は我と同じ、呂布から城を奪われた者同士、共通するものがある。劉備を殺すことなど、どうして出来ようか? 徐州を救った際は、陶謙殿の墓参りを年に一度ではなく、毎日行うつもりだ。」


 陳登は答える。


「私は徐州の者、呂布に恩はござらん。曹操に協力しよう。」


 陳登は劉備が居なくなることで袁術が攻めてくることも理解していた。


 呂布の内政では袁術、曹操を相手にすることなど不可能だろう。


 劉備なら少数でも紀霊軍と渡り合えた。


 故に、国力無き徐州に選択の余地はなかった。


 陳登の読み通り、袁術は呂布が曹操に使者を売ったことで激怒し、20万の大軍で攻めてきた。


 呂布は袁術の数に頼った攻撃に苦戦を強いられる。


「何と言う数だ!! こちらは15000しか居ないというのに!!」


 この時、呂布は劉備が曹操の勅命で袁術を攻めていた時に徐州を奪い取った自身を思い出していた。


 劉備と関羽はこれほどの軍を相手に善戦していたとは、今になって劉備の有り難みがわかったのである。


「はっはっはっは、劉備様は紀霊将軍と善戦しておったのに、たかだか20万の兵士相手に呂布殿は城も守れんのか?」


 呂布が振り返ればそこには陳珪が居た。


「陳珪、貴様は20万の兵士などたいしたことないと………この俺の耳が確かならそう聞こえたようだが………」


 陳珪は笑っていう。


「儂に一頭の牛を与えてくだされば、袁術20万の兵を内部から破壊してみせましょう。」


 それを聞いた呂布は大いに笑って言う。


「よかろう。だが、もし、失敗した時は、わかっているだろうな………」


 陳珪は覚悟を決めて言う。


「無論、この首を差し上げましょう。」


 それを聞いた呂布は頷いた。


「よかろう。牛でも羊でもなんでも持っていくと良い!!」


 陳珪は子牛を一頭連れていき、歩いて袁術軍へと向かったのである。


 陳珪が牛を連れて行くのを見て呂布が陳宮に言う。


「牛一頭で何ができるというのだ………」


 それを見据える陳宮、果たして、陳珪は何をするつもりでいるのか………

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