仮面の告白

友井久嗣

プロローグ ~バケーションという名の漂流より~

2002年のことでした。

それまでの自分に一区切りをつけるため、人生の長期休暇なつやすみとしゃれこんで始めた生活も一年を超え、貯金残高が心許なくなりつつあったころ。

そろそろまた、世の中の流れに戻る必要性に迫られ、私は仕事を探し始めたのです。


つぶしのきかない中途半端な経歴でも雇ってもらえる仕事って、何だろう?

なりふり構ってられないから、ひとまずは収入を優先にして探してみるか。

―そんな思いで目にした求人広告。

ふと目に留まったのは、コールセンターのお客さま対応のお仕事でした。


これまで考えたこともなかった未知の業種。そういえば学生の頃、コールセンターのバイトをしていた先輩はいい稼ぎができるって言っていた。

24時間の稼働シフトで、深夜時間帯も選べるんだ。深夜勤務手当、いいね。

それに、接客でもお客さんと顔を合わせる必要がない。

長期休暇で現から遠ざかり、最小限の他人としか接していなかったこのころの私は、やや対人恐怖な気もあり、非対面の仕事に魅力を感じました。

4桁の時給はそれなりのきつさを覚悟しなければ―そんな危惧もありましたが、背に腹は代えられない。何はともあれまずは就職しなきゃと、応募に踏み切ることに。


募集業務が超繁忙していて猫の手も借りたいほどの状況だったので、無事採用決定。

その年の8月の末に長期休暇は終わりを告げ、私は再び世の中の流れに戻ることができました。

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