突入③

 七人。その内の一人が語りかけると同時、防護服を着た信徒達が播磨を囲み始める。


「貴様、二人をどうした?」

「あー、便所じゃね? 腹ぁ抑えてたし」

「………戯言ざれごとを」


 司令塔らしき者が手を上げる。周囲にいた信徒達が一斉に距離を詰めてくる。が、播磨はそれを適当にいなし何人かに打撃を加える。


(奴らと違って機械じゃねぇな。ってことは中身はただの人間……な訳ねぇか)


 破れた防護服から素肌が見える。獣のような体毛や耳など身体的特徴を持つ獣人。海洋類に見られる鱗、ヒレ、体色の魚人。植物に非常に似た者。などなど、中身に違いはあれど改造人間の見本市オンパレード


「惑星人……?」

「"教祖様"よりたまわった力と"菊池様"によりほどこされた肉体だ」

「ふーん、多様性ってやつ?」

滑稽こっけいに映るか?」


 その出で立ち、距離の保ち方、襲撃してきた連中よりも格段に強い。と播磨は楽しそうな子供のように口角を上げた。


「いいや、楽しめそうだ」


 『帝釈インドラ』──壁伝いに電撃をわし、接触した者を麻痺させる。と同時に播磨は一定の電磁力を周囲に発生させた。


「ーーーーーーッ!!」

 何人かの動きが止まったが、絶縁帯のような厚い脂肪や皮膚を持つ者がその危険性を理解し、速攻を仕掛ける。


「おっ、動けんの? いいねぇ、人間のクズ」

 播磨は自身の体内に微量の電撃を流し、神経回路と筋出力を強制的に上げる。


 強化された肉体と周囲に広げた磁力を駆使した移動術。それは、四足歩行を可能とする獣人の速度を遥かに凌ぐ。


「まずは一匹」

 電熱と強化された膂力りょりょくによって、最も近づいた者の胸を貫く。


「貴様ぁ!!!」

「二匹目」

 加勢する敵が自身に触れようとすれば、その身に纏う電気が迎撃し、その細胞は焼き焦げる。


「ッ!! ダメだッ! 距離を取れ!!」

「あ〜……五匹目……?」

 距離を取れば、遠距離から電撃が襲う。


『命が惜しければ、播磨隆二はりまりゅうじと争うな』。逃げれば殺され、近寄れば死ぬ。S級を除く、特殊犯罪者達が最も恐れる存在。自身が"A級最強の職員"であることを、彼は知らない。



 場面変わってその頃、相良は地下に降りて廊下を歩いていた。敵地内部のため索敵は行っていないが、能力特性により耳のよい相良は微細な音も聞き取っていた。


「は〜、上が騒がしいな。お祭りでもやっとんのか? せっかく地下まで来たんはええけど、こっちは誰も……ん!?」


 道なりの先から、人影と大量の何かがコッチに走っている。相良は「んん?」と目を凝らし、その正体を捉えた。

 向かい側から走っている人間は師人。とその後ろを追いかけるは、猛獣・害虫の大群集。 


「うぉおおおおお!!!」


 師人が『原初の種カオスゲノム』で産み出した獣を何体も後方へ放ち、迎え撃つも、物量と獰猛さが桁違いの宇宙生物達に揉み消されていた。


「な、なんや!!? おい、師びっ…………ぎゃあああああああああ!!!」


そしてそのまま、相良は群衆の波に巻き込まれた。

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