第7話 許嫁に死亡フラグを添えて

「許嫁を獲ってくるとのことです」

「──はぁ?」


 何を驚いてらっしゃるといった表情でこっち見てるけど襲撃の決着をつける話し合いに行ったと思ったら許嫁連れて帰ってくるとか思考が意味わからないからね!?


「襲撃の解決のために向かったことは間違い?」

「ではないですね」


 デュネブと目が合う。


「なんで許嫁とつながるかなぁ!? 敵方の許嫁とかどう考えても気まずいでしょ!?」

「そこは坊ちゃまの腕の見せ所ですよ!! これも解決策の一つなのですからあきらめてください!!」


 貴族めんどくせぇ。自由意志が、現代日本の自由が欲しいんですけど!


 まあでもやるしかない。

 文句ばかり言うなってさっきから頭の中のレグルスもうるさいからいったん受け入れることにする。


 仲間に引き入れられれば万歳、裏切られても返り討ちにできるくらいに俺が強くなっとけばいいだけの話だ。


「わかった。到着したら言ってくれ。ちゃんと話し合う」

「お相手は美しい方ですからファイトですよ! 坊ちゃん!」


 うん。だから怖いんだけどね。

 女性経験なんてものは持ち合わせてないから普通に色仕掛けされただけで危ないから。


 まあでも知っている限り性格的にそんなことはないだろう。


 であるならすべきことは変わらない。


「デュネブ、信用できる剣術の指導してくれそうな人知ってる?」


 そうですねぇ、とデュネブはあごに手を当て考え込み始めてしまった。


 デュネブには無理を言って申し訳ないとは思うけど、その道のプロに教えてもらうのが上達する近道だということは向こうの世界で嫌というほど言われてきた。


 独学でも結果を残す奴は才能があるか身近に手本がいるかのどちらかだ。


 レグルスにそんな才能はないし手本も裏切った。ならプロに習うしか選択肢はない。


 プロの目があるだけで無駄な努力をしなくなる。そのアドバンテージは大きい。


 加えて許嫁で来るであろうメインヒロインは剣術系のスキルを持つバリバリのアタッカーだ。万が一に備えて一刻も早く剣術は上達する必要も出てきた。


 そんなことを考えながらベッドの上で体育座りでボケっとしているとおもむろにデュネブが口を開く。


「私の友人の弟子に王国軍の訓練教官をしていた者がおります」

「いいじゃん! じゃあその人に依頼出してほしい」

「承知いたしました」


 俺が軽く礼を言うと、デュネブはお辞儀をして俺の部屋を去っていった。


 仰向けに倒れこみ天井を見上げる。


 後光の指す雲の間を天使が飛び回っている絵が描かれていて、見つめているとなんとも居心地の悪い気分になった。


 右手をまさぐり、ベッド脇に立てかけてあったデュランダルを絵を隠すように掲げる。


 魔剣とは言っているもののこいつの能力も判明していないままだ。


 レグルスが何か知ってたりはしないか?


『身体の記憶に何を期待している? そのくらい自分で見つけろ』


 はい。すんませんでした。


「あんなにやってきたゲームなのになぁ」


 シナリオも全ルート踏破して全クリの称号まで持っていたのに何一つ役に立たない。

 ゲーム序盤よりも前の時点の話だからっていうのもあるけどこのまま進んでもゲームシナリオ通りには進まないようなキャラ関係が生まれてしまった。


 唯一の救いはキャラの性格、死亡フラグの認識ができること。


 生存にはそれだけで十分。


「あとは俺がどれだけ上り詰められるかだよな」


 最悪、死亡フラグを回収してもいい。『根性』で耐えられるから。


 ただそれでシナリオ通りに進んでしまったらレグルスには破滅の道しかなくなってしまう。


「でも死亡フラグ後に俺が生きてたらそれはそれでシナリオ壊せるね?」


 死亡フラグ回収しているのに死んでいないなんてふつうないからね。

 それはそれで生存方法だしゲーム内では噛ませ犬に終わったレグルスの人生を回避する手段にもなる。


 天井にデュランダルの刃先を向け不敵な笑みを作る。


 これでやっと方針が固まった。


「死亡フラグは全て引き受ける! そこから先が俺のターンだ!」



 数日後、早速俺は後悔することになる。


「あーこれ相手のメンタルブレイク不可避じゃん……」


──────────────────────────────────────


【あとがき】


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