第13話〜神と紙とゾンビと職員と
部屋は思ったよりも広く、奥の二つの扉の奥にはトイレや風呂があり、ちゃんと清掃されている。
またタンスも奥にあるのだが、中身は全て着物でネットで販売されているような安っぽいものではなく、上質な物ばかりである。
そして女子高校生とコンビニアルバイターは、本棚に近づいた。
本棚にはレースが掛けられており、張り紙には「触れれば罰を下す」と書いてあったが気にせず中の物を調べた。
本は少ししかなく、これもどれも
そして、目上の者を敬う事が書かれている。
「本の管理はちゃんとしろなのだぁ」
「女性を監禁してらなんて酷ぇ奴も居たもんだ」
また、本棚には手書きの紙束があるがそちらの方はまだ調べられていない。段々と文字を読む事に飽きてきた薫田あるじは、着物の女性の方に目を向けた。
「というか、あれが神様じゃないのかー?」
「神様の扱い酷すぎやしねぇーかな!こんなところで放置されているものなのか!?」
また、彼がたまたま開いていたページには小宝教が崇める現人神について詳しく書かれていた。
写真こそはないものの、外見の特徴や神社に住んでいる事から彼女こそ、現人神の鰯節子なのだろう。
部屋の奥を調べていたヴェニアミンが彼らの所へ戻った。
「神はこの世に一人だけだから」
「日本には八百万の神といってだな…」
ここからは本当に怒られそうなラインに入っている。
「神様って本当にいるのかー?」
「居なければ我々は存在していない」
「まぁ、それは個人の価値観によって色々と変わってくるからなぁ」
上手いこと針口がまとめた。しかし、そんな多様性のある綺麗事に凡人は耳を貸さない。
「ふーん」
「興味ないのなら話しかけないでね」
「言葉が一々強いんだよ」
つまらなさそうに返答し、全員、本棚の中にある紙切れを各々勝手に取る。
「べぇーなんか血ぃ臭いのだ…何なのだ?この紙切れの山」
彼女だけがこの棚から香る異様な血の匂いを察知した。これの元は定かでは無いが、この紙切れからだと思われる。
針口が取った紙切れは、本から破り捨てたようであり、
「
「現役の頃はよく書物や物品を探していたけど、今はどうでも良い存在」
彼に見せると知っている様子ではあるものの、あまり気が乗らないらしい。少し見てすぐに時分が持っている紙切れの方を読んでいる。
三聖魂というのはこの次元を管轄している三体の神様のような者らしい。色々と書いてあるが、所々に専門用語があるので詳しいことは分からない。
しかし、この三聖魂を呼び出せば強大な力が手に入る…らしい。確実に貰えるというわけではないようだ。
「ここまで研究しているって中々凄い」
しばらくヴェニアミンは自分の顎を触り、上の空になった。何を考えているかはよく分からないが、きっとろくでもないことである。
「でも…うん、この村焼こう」
彼がポケットからライターを取り出して火をつけた。すぐに消したけれど、炎によって灯された彼の目に冗談というものは映っていなかった。
「そこまで至った経緯教えてくれよ」
「また
蝦蛄さんというのは前回不思議な体験をした時に一緒に居た気狂いOLの事である。詳しくは絵画一族のシンメトリーを読もう。
「これ…まじなのかー?」
そして、薫田あるじが読んでいる紙切れにはゾンビの作り方が書いてあった。
それによると生きたセミと水、鳴き声がある虫を水に混ぜて、それを
大人に飲ませるとゾンビになるという。しかし21歳以下に飲ませても何もならないので注意が必要と書かれていた。
その事を彼女は全員に伝えた。
「やっぱりマジモンのゾンビがいるのだ…絶対に職員死んじゃってるのだ…」
「流石にあるじたんは諸々の事情を教えてくれるよな?職員って何だ?」
「実は…」
父親の研究所で働いている職員三人がこの小宝島に派遣されたのだが、行方不明になったので探してきて欲しいとのこと。そしてソレが彼女の使命である。
「えっ、その三人今まで見てないよな?」
「消されたんじゃない」
「縁起でもないこというなよ」
本州ならば有り得ない。しかし、この瑠渡河村では有り得るのだ。
「別にいいのだ。所詮こんな所に派遣される職員なんてただの処分にしかすぎないのだ」
「いきなり滅茶苦茶怖いこと言うなよ。闇深いなお前」
急にヴェニアミンのような事を言い出すので、針口の心はキュッとなった。気狂い枠はもう満席である。
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