第6話〜現人神
あの夫婦が去ってからすぐに強介が来た、まるで誰かに言われて来たかのように。
「探したぞ」
彼は体力が人並み以上らしい。息切れ一つもしていない。
「あー…恭太郎?」
「オレは牡蠣強介、二十歳だ。今後案内するのにお前らの名前を知らないのは不便だ。教えてくれ」
名前を間違えると、彼は露骨に嫌な顔をしている。そして全員自己紹介をした。
「薫田にニアミンと針口。よろしく」
「よろしくなのだ」
「おい、俺はお前よりも七つ年上だぞ」
眉間を寄せて、針口の胸元を掴んだ。
「年功序列は嫌いだ。針口が何歳だろうが興味もない。そもそもお前は人に尊敬される人なのか?」
その掴んでいる腕に薫田あるじは自身の手を重ねた。彼女の顔を見るやいなや、すぐに離した。
「わ、わりってば…」
地面に尻もちを着きながら謝るその様は、本当に大人なのだろうか。青ざめた顔はこの季節に似合わない。
「なーなー強介。なんで村の真ん中に畑やら鶏がいるのだ?」
「そこは…子供が農業したり世話したりする所だ、隣の小屋が子供の家だ」
指を指しながら言うが、顔は背けている。
薫田あるじはなぜだか分からないが、彼に強いシンパシーを感じている。こんなに直感が唸るのなら、共通点があるはずだ。
しかし、ないのだ。見た目は勿論のこと、性格さえも。
「へぇ、今の教育は食育に精通してんだなぁ」
「お気楽だな…オレ達がどんなに」
「どうした?」
ギラつく目を針口にやると、彼は怖がってまた謝り始めた。年下相手に
「何でもない。それよりお前らはどこを観光しに行くんだ」
「ここに地図はないのか?」
「この村にあるのは大人と子供の家、神社、村長の家、それに舞台だけだ」
村人達の家はもう見ている。あとは神社、舞台、村長の家の三つだけである。
単純にこの中から面白そうな物を選ぶとするとこれしかないだろう。
「あ、舞台行きたいのだ」
「そこは立ち入り禁止だ。神様が儀式をする場所だからな」
その舞台というのは神様が舞をするという場所であり、ありがたい話やら村の決め事をしたりするらしい。
「神様?」
「この村には女性の神様が居るんだ。参拝は出来るが、あの方には会えないぞ」
全員、その非現実的な単語に好奇心を刺激されて神社に行くことにした。
「現人神か…どんなのか気になるな」
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