第7話〜神社

 神社にしては長くもない階段を登った先には鳥居が見えたが、ただ本殿しかない。


 お賽銭箱や手水舎もなく、本当に神様が祀られているのかと思うほど質素だ。


 周りには、中年男性がバットやゴルフクラブを持っている人がちらほら居る。その武器に合わない笑みを零しており、気味が悪かった。


「狛犬が居ない神社ってあるんだな」

「…狛犬って何だ。この村にペットは居ない」


 狛犬の役割は魔除けや守護を務めているのだが、ここには置いていない。ただ、真新しいだけの鳥居があるだけだ。


「狛犬知らないのかぁ?ぷふふっ」

「馬鹿にしやがって…!」


 彼女は泣きかけた。顔が怖いからだ。


「参拝客?それとも警備員?」

「ここらの大人は全員護衛だ。中に神様が住んでるからな」


 護衛にしては顔が緩んでいる。ヴェニアミンは確認として微笑んでみると、彼らは気前よく手を振っている。敵意はないみたいだった。


「めちゃくちゃ大事なんだな、その神様ってやつ」

「村の宝だからな。村の連中はいつもあの人に祈ってる」


 そんな重要人物の護衛をこんな軽装備かつ少人数でやるものなのだろうか。そう、針口は思った。


「中に入れない?」

「有無を言わせる前に殺すだろ」

「あはは」


 冗談ではない、本気で入ろうとしている。本殿の近くに寄るだけでも、護衛は近づいてきて微笑みつつも注意してくる。


「ったく、油断ならねぇよ」

「ここつまんないのだ。入れないんだったら帰るのだ」

「賛成だね、もう夕方だよ」

「もうそんな時間か」


 太陽は海に落ちてきている。この村は街灯がないので、夜には出歩けないだろう。今帰ればちょうど夜になるだろう。


 そして長くもない階段を降りる。


「帰り道はこっちだ。迷うとは思えないが案内する」


 そのまま青年についていった。

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