その24。「地下の穴は下水道に繋がってるのってテンプレだよな」

 俺は穴の壁に取り付けられたハシゴの様な物を掴んでゆっくりと降りていく。

 中は真っ暗で何も見えないので、怖いったらありゃしない。


「……なんて傍迷惑な輩たちなんだ……!」


 俺は幽霊が出そうな暗い場所が大の苦手なんだよ!

 ホラー映画とかも友達の付き合いで行ったけど2度と行かないと心に誓った程だ。

 怖いのが楽しいとか頭おかしいだろ。

 

「ふぅふぅふぅふぅ…………やっと1番下に到着、かな?」


 俺は地面があることと、何も出ないことに安堵を覚えながらも、懐中電灯的な魔導具を使って辺りを見回す。

 そしてすぐに気づいた。


「ここは……あれだ。下水道だ」


 そう、大体の作品で抜け道やら秘密の道を見つけたら必ず辿り着く、テンプレ中のテンプレ———下水道である。

 今まで一度も入ったこと無かったが……


「くっさ……」


 想像を絶する臭さだった。

 多分日本ではここまでではないのだろうが、前世よりも文明が遅れているこの世界では下水道があるだけマシと言った所で、臭いなんて1ミリも気にしてないと思われる。

 俺は咄嗟に風魔法で自身の体の周りを風の壁を作るが、多少マシになった程度の効果しかなかった。


「うっ……よし、取り敢えず先に進むか……」


 ご丁寧に地面には足跡がある。

 足跡は3種類で、下水の流れる方向の逆に向かって残っていた。

 

 俺は極力声どころか呼吸もせず、忍び足で足跡を追う。

 奥に向かうとともにどんどん辺りが静かになり、時折り鼠や水滴が水面を叩く音、何かの物音がしてはビクッと体を震わせる。

 

 こ、こえぇぇぇ……もう帰りたいんですけどぉぉぉぉ……。

 これならずっと下水の音と臭いを嗅いでいた方がマシだ……何か来たら確定初動が遅れる自信があるぞ。


 おっかなびっくりとはこの事だ、と体現するかの様に俺はそーっと、そーっと先に進む。

 すると歩く事30分、遂に複数人の喋る声が聞こえた。

 俺は当主様に貰った『隠れマント』と言う魔導具を着てから極力近くに寄り、バレない様に静かに遮蔽物から聞き耳を立てる。


「———本当に上手くいくんだろうな? 俺たちは既に報酬以上のモノを失ってるんだ。今回失敗したら貴様を葬ってやる。家族であろうが俺たちは容赦しない」

「分かっている。今はシルフレア公爵家が誇る最強の『白炎の騎士』が不在なのは確認済み。そしてそれに準ずる強さを持った豪炎騎士団は現在領外での任務らしい。部下を送って確認済みだ」

「そうは言うがな、俺たちの精鋭部隊が既にやられているんだ。主戦力がいない公爵家の中でアイツらを殺った奴の正体は突き止めたのか?」


 話から察するに、この前2回ほど襲撃してきた『黒鉄傭兵団』とその雇い主の貴族が話しているらしい。

 ただ……あんまり仲は良さそうではないな。


「それは未だ調査中だが、明日までには私が公爵家に送った諜報員を通して分かるだろう」

「…………なら分かったら俺達に知らせろ。ソイツは俺達が必ず息の根を止めてやる」


 ひえっ、俺のことじゃん。

 俺ってとうとう命狙われる様になったの?


「好きにしろ。私は公爵家が家宝を渡してくれれば他の者などどうでもいい。———いいか、執行日は明日の夜12時だ。遅れるなよ」

「ふんっ誰に言っている。傭兵は信頼が命。遅れるなんてありえない」


 俺は男達の話を聞きながら、ゆっくりとその場を離れる。

 もし俺がフレイアほど強かったらこのまま凸っただろうが、流石に今の俺ではまだ不安が残る。

 取り敢えず当主様に知らせる事にするか。


 俺はそう決め、この場所にこれ以上いるのは苦痛なので足早に元の道を戻った。

 

 

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