その25。「自分の家に爆弾設置するは流石に頭がおかしいだろ」
俺はなる早で公爵家邸に戻ると、本当は行きたくないが、そのままの足で当主様の部屋に向かう。
コンコンコン。
「セーヤです。当主様申し訳ございません。火急相談したいことがございますので、入室の許可を頂けませんでしょうか?」
「……入れ」
少し間が空いた後、当主様の声が聞こえ、許可をもらったので俺はそっと扉を開ける。
「失礼致します」
「———それで火急の要件とはなんだ?」
「はい。実はシンシア様を守るために———」
俺は敷地内にあった抜け道とその先で聞いた話を経緯を踏まえて話す。
その間、当主様はずっと真顔で感情が全く読めず、それが返って不気味だった。
俺は心の中でビクビクしながらもそれを表には一切出さずに淡々と意識して何とか最後まで話し終える。
「………」
当主様は何故か無言。
しかし俺如き使用人Bが当主様に口出しするなど不敬の罪で普通に牢屋行きにならだろう。
なので大人しく当主様が話すまで待つ。
すると案外すぐに当主様が口を開いた。
「……それは本当か?」
「はい。私が聞いた限りでは本当だと思われます」
「なら取り敢えずその庭師は放っておけ。我が家の者が秘密裏に監視をしておく。セーヤはシンシアの護衛だ」
「む、迎え撃たないのですか!?」
俺は驚いてそんな事を口にするが、当主様は特に何も言う事なく頷く。
「今黒鉄傭兵団の言った通り、主戦力は全て別の所に任務をしに行っている。今の公爵家の戦力では、防衛すら難しいレベルだ」
なら何で少しくらい残そうと思わなかったのだろう。
もしもの時に対応出来ないと意味ないじゃないか。
「で、では……」
「———そこで、だ。セーヤの見つけた入口の周りに爆弾を仕込めば良い」
「…………はい?」
思わぬ爆弾発言に俺は自分の耳を疑う。
あまりに驚きすぎて相手が当主様である事を無視して声を上げてしまった。
しかしこれはしょうがなくないか?
いきなり「自分の家を爆破します」とか言う人現れたら普通にその人の思考回路を疑うよね?
誰がどう見ても頭おかしい人だと思うんだが。
「ば、爆弾……ですか? ですがそんな事をすれば庭は凄惨な事になってしまいます! それに下手すればこの場所に暫く過ごせなくなります! それを踏まえられた上で爆弾を設置すると?」
「ああ。今の我が家に腕利きの傭兵団を相手にできる者達は居ない。無駄な死者を減らすにためにも我が家の庭を爆発させるのが1番良いだろう」
「……もし仕留め損なった場合はどの様に致しましょうか?」
もう俺が何を言おうと多分当主様は考えを変えないだろうことが目に見えているので、素直に諦め、別の事を質問する。
「いつ何時であろうとシンシアから離れるな。私の当主としての命令だ」
……はぁ、この人はだいぶお人好しだな……。
「……承知いたしました」
俺はそう言って頭を下げるしかなかった。
……悪役側ってめんどくせぇ……。
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