その23。「仕事を貰うと今まで気付かなかったことに気づくことあるよね」

 当主様直々にお願いと言うか、『シンシア様を様々な危険から守れ』と言う命令を貰った俺は早速色々なことを始めることにした。

 

 何故これほど俺が急ぎで取り掛かっているのかと言うと、女神様が言うにはシンシア様は6歳の頃、一度何者かに攫われているらしく、公爵家は家宝である『炎の書』と言う魔法書と引き換えにシンシア様を取り戻したらしい。

 そのせいでさらに公爵家の立場が揺らいだんだとか。


 何とも不遇な悪役だよな。

 まぁ実際親子揃って性格は大して良くないし、政敵の抹殺なども結構過激にしているらしいので自業自得と言えば自業自得であるのだが……公爵家がなくなって困るのは俺。

 もしゲームと同じ様になれば一族揃って処刑は免れないだろうと、クソ女神が言っていたからな。


「お母様、この公爵家の使用人たちを覚えたいからプロフィールちょうだい?」

「いいわよ。この程度なら当主様もお許しになられているわ。うちのセーヤはどうやら相当当主様に気に入られたようね」


 本当はどんな事をしてでも会いたくもなかったけど。

 

 俺は取り敢えず苦笑いでその場を何とか乗り切った。

 そしてママから使用人のプロフィールと顔が写った写真? みたいなのを全て覚えていく。

 前世からのスキル特技である速読と記憶力を活かし、5時間ほどかけて、100人近くいる使用人たちの顔と特徴を何とか覚えた。


「やっと覚えたぁ……でも、も、もう無理……」


 ふと窓を見ると、既に太陽は沈んでおり完全に夜になっていた。

 俺はそれを見た瞬間にベッドへと飛び込んだ。






 次の日。


 俺は今度は公爵家の邸宅を庭も含めて念入りに調査する。

 それと同時に侵入しやすそうな所を予め確認。


 因みにシンシア様はフレイアに任せている。

 彼女は俺より強いから心配ない。

 シンシア様には色々と理由を聞かれたが、「全ては貴女のためです」と言ったら、


「そ、そう……が、頑張りなさいよ! 私のためなら仕方ないわね!」


 とか言って何か許してもらった。

 貴女のためと言うのがプライドの高い彼女の琴線に触れたのだろうか。

 

「やっぱり女ってのは大きくても小さくてもよく分からないな」


 兎に角今は調査に集中しよう。


 そんなある時、俺が敷地内の隅の草むらを調査していると———


「ん? 何だこれ?」


 草むらの中である所だけ少し不自然に草の向きが違っており、近付いてみると土の色が微妙に違うし更には少し盛り上がっている。

 始めは自然現象かと思ったが、少し気になったので草を引き抜き、落ち葉を払い除けてみると……。


「……最悪」


 そこにはマンホールの様な蓋があった。

 しかもその蓋の下には何処かは続いているであろう穴も一緒に。


「……これは庭師が裏切っているかも……」


 仮にも公爵家の庭師ならば、相当腕のいい者だろうし、この様な不自然な所を見逃すはずがない。

 なら敢えて見逃していると考えるのが妥当だろう。


「庭師……庭師は……ハレムって女だったっけ?」


 俺はまだ会った事ないが、使用人の中でも美人で優しくて人気だったらしい。

 何なら執事の中には彼女に告白する者もいたんだとか。


「……やはり美人って性格悪いんだな」


 俺はシンシア様とママ、前世で見てきたクソみたいな女どもを思い出してため息を吐く。

 美人で性格がいい人なんて所詮男の儚い幻想だと言うのを叩きつけられた感じだ。


「せめて乙女ゲー世界なら美人で性格もいい人がいてくれればいいのに……」


 俺は仮に結婚するなら、顔はまぁまぁでいいから、兎に角性格のいい娘にしようと心に誓いながら、恐る恐る穴の中へと入った。


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