第7話

誘拐事件から、俺が用意したビデオと録音で証拠は十分集まり、逃げ出した集団もその日のうちに全員捕まり、クラスメイトの何人かは退学になった。


 「おはよう、薪ノ宮さん。」

 

 「あっ、、、夢くん、あのね、、、」


「おはようーくもも!」

柿野さんだ。


「おはよう、かきのん!」


 「今日も可愛いな、くももは」

  柿野さんは薪ノ宮さんに抱きついている。


 「ありがとう、かきのんもだよ。」


「ありがとう、くもも!」


「ごめん、今から夢くんと二人で少し話が、、、」


「待って、急ピッチで宿題、手伝って!」


「いや、それの提出来週までだよ。私達あれがあったし」


「いいから、」


「でも、私、夢くんと話が、、、」


「いいから、いいから」


 豆野さんは、体調を見てお休みになっている。


ーーーーーーーー

薪ノ宮視点


 私は、誘拐事件から自分のやった事の恐ろしさを知った。

だから、今日中な絶対に謝って、私から別れを切り出すんだ。

 それに、、、あの時助けてくれた人誰なんだろう。



 昼休み、


 「夢く、、、」


「夢くんー!少し二人で話し良いかな?」


 え?かきのん?


 「ごめん、薪ノ宮さんどうしたのかな?」

どう言う事、、、?あんなに夢くんのこと馬鹿にしていたのに、


 「あ、その、、、ごめん後でいいよ。」



 屋上に向かう二人の後を付けた。

 見つからないように、扉越しに隠れた。

 

 「夢くん、これ、ありがとうね。」

何かを貸し合う仲だったの?


 「あー、ありがとう。」

 

 「いやいや、夢くんが助けてくれたんだから、お礼言うのは私の方だよ。」

助けてくれた、まさか!

 一瞬で全てが繋がった気がした。襲った連中の中にクラスメイトがいた。その人達は「陰キャ」とか知り合いを助けに来た、ような話し方をしていた。

 そして、あの時のかきのんは上着を破かれて、代わりに男子用の制服を着ていたが、あれは


 「いや、わざわざ洗濯してくれたみたいだし。」


「私のかい、、、洗濯するのは当然だからね。」


制服だった。 


 夢くんだったんだ。助けてくれた人は、、、騙した人に助けられたんだ。




 「襲われる事は知っていたの?あのビデオの内容的に、事前に知らないと無理だったし。」

 確かに証拠のビデオを見たが、最初の私の悲鳴の方も入っていた。


「知らなかったけど、怪しい連中がいたから」


「怪しい連中を警戒して、すぐに助けに来てくれたってことは、見ていたの私達のことを」

 トリプルデート、、、


 「うん。」

 、、、そうだよね。いや見られて良かったのかも。私のクズな面を見られて。


 「そうなんだ。ねぇ、あとさもしかして」


「知っていた。嘘コクだったこと。」

、、、嘘でしょ


 「罰ゲームの話も聞こえていた。だから一年間限定なのも知っている。あと薪ノ宮さんといる時にいつも豆野さんと君で二人で付けていることも。」

、、、散々馬鹿にしてたのに、本当に最初から馬鹿だったの、私みたいだ。


 「そっか、そのことも知られていたか、」


 「誘拐事件の日、俺と薪ノ宮さんが二人で駅まで行ったあと、君たちと更に後ろにいる犯人達の後を付けていた。」

だから、珍しく誘って来たと思ったら、、、私を助ける為だったんだ。


 「なるほど、だから誘拐事件の時にビデオも撮れたし、すぐに助けに来てくれたのか、私達も見事に撒かれたもんね。」


「そう言うこと。じゃあそろそろいいかな、一応薪ノ宮さん待ってるし、」

、、、え、、こんな最低な私の所にまた来てくれるの、、、

待っている場所も顔も涙で大変になってる。


 「待って!じゃあなんで、嘘だって分かったOKしたの?」

 そう!なんでなの?なんで私なんかと、、、


「丁度、良かったから。」

 男は女の体を求める生き物だ。もしかしてそんな理由、、、いや違う、きっと今までの私ならそう思っていたけど、違う。


「丁度よかったって、どうして」

 かきのんもどうして、そこまで必死なの、、、


「、、、あんまり話したくはない。」

 夢くん、辛そうな顔をしている。


「、、、お願い教えて欲しい。」


「ごめん、言いたくない。」


「教えて、私!夢くんのことが好きになったの!だから教えて欲しい。」

 嘘、、、!いや、助けられたし、好きになるのは当然か。


 「、、、昔、好きな人が居たんだ。」

 、、、夢くんにも、、、いやそうだよね。


「もう、今は亡くなってしまったんだけど、 。」

 、、、


「最後に「新しい人を好きになってね」って言われたんだ。」

、、


「だから、新しい好きな人を見つけようと思っているんだ。」


「、、、な、、、ら、なら、、、私を、、、私を好きになってよ!」


「そうなれるならそうなりたいな。けど俺は人を騙す人は好きになれないな。」


「、、、そ、そうだよね。」

 

「あと、このクラスメイトは薪ノ宮さんも含めて好きになれなかった。このクラスは俺を人を平気で傷付ける人が多すぎる。」

 

 過去の過ちを思い出して、吐き気のように、今までのことが蘇る。


「なら尚更なんで付き合ったの?」


「街ちゃん、好きな人との約束に応えたかった。だから、相手を好きにならないといけないこの状況が都合がいいと思った。」


「なら私と付き合ってよ!そして、私のことを好きになってよ!私も私のことを好きになって貰えるように頑張るから」


「ごめん、好きになるとは確定出来ないから。何より、時間が来て好きになれなくても誰も傷付けず諦める今の関係が丁度いいんだ。」


「、、、それは、夢くんだけが、傷つくし、幸せになれないままじゃない。」


「そうなのかも、でもそれが最善だと思ったから。そろそろ行くね、じゃあね。」


 私は、夢くんに見つからないように横にあったゴミ箱の後ろに隠れてなんとか見つからずに済んだ。

 

、、、夢くん、私は君に好きになって貰えるように頑張るよ。

 それまでは今の嘘コクの関係を続けるよ。

 いつか、全て謝ってもう一度本当の告白をするから。


 

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