【2/2】


まだ寝てるみたいだ(大学 前)


気づけば大学へ進学していた。

そう、気づけば。


高校三年生になり、受験シーズン真盛りの前。

夏休みに入る前ぐらいだったか?


担任に指定校推薦で進学することを勧められた。


特に否定も肯定もしなかったと思う。

なのに気づけば、大学のパンフレットをもらって、小論文を書いて、

秋ごろにはそこへ行くことが決まってた。


地元の私立の理系の大学。

可もなく不可もなくって感じだ。


友人も多く進学した。

だからサークルにも入らなかった。部活なんてもってのほかだった。


高校四年目みたいな感覚だった。

自分が自分じゃないみたいに時間が過ぎてった。





さあ、才能に目覚めよう(大学 中)


結論から言う、起業した。


通信回線の代理店。

なんでか知らんが一次受け。上が直であの大企業だった。


当時の交際相手の父親がメーカーでお偉いさんだった。

コネで代理店を開かせてもらえた。


なんで俺なんかに?

当時はそう思ってた。

実は今もよくわからない。


娘の彼氏としてふさわしい人間にするため?

単に俺に商才がありそうと判断した?


まあとりあえず起業した。

ある程度うまく行った。

数億円のあぶく銭を稼いでた。


そんなもんだから交際相手とも関係が続いていた。



ある日、交際相手が妊娠した。




は?ふざけんな。なんでだよ。

アフターピルは?まさか飲んでなかったのか?


邪魔になる。堕ろしてくれ。


いや、父親との関係はどうなる?

代理店として事業ができなくなる?


仮に慰謝料を取られるとしたらどうなる?

俺に個人資産なんてない。

会社か?

会社の株を取られるかもしれない?

どうする?

会社は大丈夫なのか?


株主は

「大丈夫、心配するな。とりあえず今は交際相手と子供のことを考えてあげなさい。」


びっくりした。

取り乱していた。

大丈夫だ。株主とのコミュニケーションは良好だ。

弁護士なりなんなり、しかるべき対応を取ろう。



そういえば交際相手と子供はどうなってた?




何も考えなかった。

心が動かなかった。

交際相手の心配。誕生の嬉しさ。父親としての意識。

いずれもなかった。


あったのは怒り、煩わしさ。

そして、事業の継続のこと。


あれ?

俺はどうしちまったんだ。


俺はもともとこんな人間だったか?




自分で自分のケツを拭け(大学 後)


子供は堕ろした。


交際相手とは別れた。

流産するための金を払った、他は特に出費はなかった。


そういやアイツ泣いてたか?

あんまり覚えてない。



ある日、会社がうまく行かなくなった。




競合が現れた。

俺らとは違う。大企業の資本がちゃんと入った大人の集団。


やばいと思った。

株主に泣きついた。

会社を競合に売ることになった。


社員には一切知らせなかった。いやそもそも知らせてはいけないルールだ。

どうやら散々な悪口を言われてたらしい。



知るかバカ。俺はもう逃げ切った。




なんのために(社会人)


会社を売却した後、未上場株への投資を始めた。

過去の俺みたいな、まだ芽が出てない起業家を見つけ投資する。


投資した時の時価総額よりも、高い時価総額で売却、または上場をすれば

大体数十倍になって投資金額が返ってくる。


過去の俺がされたことを、今俺がやっている。


若者の成長を応援したい。

業界のDXに貢献したい。


んなことどうでもいい。

売却益を現金のままにしておくと、税金がかかってしょうがない。

現金以外の資産に変換したかった。

それの一つでしかない。


若い起業家と接すると反吐が出そうになる。


大体は高学歴。

親から潤沢な教育環境を与えられ、それをきちんと自覚して感謝してるヤツ。

おまけに、社会問題を解決したいとかほざいてるヤツも多い。


顔つき、雰囲気、眼の輝度、声の発し方。

どれもが俺とはタイプが違ってた。


俺は投資した若い起業家のヤツらを、

そう、金融商品の一つくらいしか思っていない。


そんなヤツらからよく聞かれる質問。


「なぜ起業されたんですか?」の答えはいろいろある。


でもネガティブに起業したやつと

ポジティブに起業したやつでは明確に違う。


自分は単純に、いや、そう、

金が欲しい。

だから、

だから起業したんだ。


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全員くたばれ、学生起業 大学生の執筆録 @univ_memo

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