全員くたばれ、学生起業

大学生の執筆録

【1/2】


10代で起業して、一年で1000万くらい自由に使えるようになった。

別にすごいとは思わない。

それぐらいの稼ぎのヤツなんてウンザリするくらいいる。


でも人より優れているとは思ってた。


『周りからすごいと言われたい  社会のために!

 自分で高みに行きたい  会社でやりたいことができない』


「なぜ起業されたんですか?」の答えはいろいろある。


でもネガティブに起業したやつと

ポジティブに起業したやつでは明確に違う。


自分は単純に「すぐ金が欲しい」

だから起業した。








世の中当たり前に格差ある(小学校)



生まれはもともと裕福じゃなかった。

月のお小遣いはあったりなかったり。

石油のヒーターを使ってたし、床暖なんて知りもしなかった。


小学生のころ、友達がファミリー向けの高層マンションに住んでいた。

自動ドアを入ったら、マスクをしたスーツの女が座ってるし、

エレベーターが6つもあった。そしてなにより臭くなかった。

シャワーは強いし、冬なのに超熱い。


「生まれが違うだけで、住む世界がこんなに違うのか」

悔しくなって情けなくなった。

今思えば、金への執着は昔からあったのかもしれない。





はじめて一万円札を触った(中学校)


中学ではなんとなく弓道部に入部した。

弓矢、籠手、道着、どっかで見たことあるような「これ誰が買うんだよ?」って思ってたものが、所狭しと部室にあった。


「それだいぶ前にOBが使ってたやつなんだよね。誰も使わないし新入部員の子たちで自由に使っていいよ。」


別にまじめに練習をやりたいわけじゃない。

その道具をフリマアプリに登録してみた。

驚いた。

羽の付いた棒でしかない矢が10本で5000円で売れた。

塗料が剥げてる弓は一本2万で売れた。


他の弓道部の同級生も全員真似をした。

みんなでバレないように部室に小さな冷蔵庫を買った。

みんなでジュース、スナック菓子を好きなだけ買った。


いつものように部室に行くと、

「なんてことをしたんだ!これは犯罪だぞ!」

「自分がやったことをわかっているのか!?」

聞き耳を立てる。どうやらバレたらしい。

部室から学年主任が出ていった。


悔しそうに、情けなさそうに、恥ずかしそうにしてるAに聞いた。

「大丈夫だったか?俺ら全員やっちまってるけど。。?」

「大丈夫、オレだけだよ。。。。」

「オレだけって?」

「職員室行かなきゃだから。。。。」


不思議なことに、ほかには一切お咎めがなかった。


それ以降Aは部室に来なくなった。

どうやら家庭の事情で転校したらしい。


これが始めて金を手にした経験だった。





僕の父親、年収800万(高校)

私立の高校に進学した。

別に裕福になったわけじゃない。

ろくに勉強もせず、授業もまじめに受けなかった。

単純に、公立に行けなかった。


クラスで一番最初に、同じ学校の彼女ができた。

「大人っぽいところとか、意外と優しいところが好きです!

付き合ってください!」

告白された。

直線的ではないものの、うらやましさや嫉妬に近い何かからくる言葉を、

クラスの友達や他クラスのやつにかけられた。

誇らしかった。優越感があった。

告白されて、一番早く彼女ができた自分が。


『ゲーム、マンガ、彼女』

気づいたら、すべて受動的な娯楽が身の回りにあった。

時間なんていくらでも消費できた。


2年生に上がった。

物理の授業があった。

最初の授業、教師がこう切り出した。

「いいか?理系に進学したほうが人生は得をするんだ。なぜかって?

理系の方が生涯賃金が高いからだ。つまり、理系の方が高い給料をもらえるんだ。」

「君たちのお父さんも、もしかしたら高給取りかもしれないね。」


Bが言った。

「僕の父親はコピー機の会社で研究者で働いてます。年収は800万円くらいって言ってたんですけどこれって多いんですか?」


教師が答える。

「それはすごいね!君のお父さんの年齢だとなかなか稼げないよ。」


梯子を外された感覚がした。

「自分の方が上だったのに」

イラだち、恥ずかしさ、怒り、情けなさが一斉に来た。

泣きそうになって、体温が上昇する感覚がした。


気づけば終わりの鐘が鳴った。


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後編へ続く


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