傘の日

「天気予報、見てなかった……」

 オレは学校の下駄箱から外を見て、ショックを受けた。雨だ。しかも傘は無い。絶対今日一日くらいは降らないだろうと、そう思えるくらいには朝は青空だったのに。

「どうしたの?」

 花子が声を掛けてきた。

「花子、……傘、持ってない?」

 思い切って聞いてみた。別に相合い傘をしたいとかそういう下心のつもりじゃ無かったんだけど。

「ごめん、わたしも持ってない」

「も!?」

「持ってないのはどうしようも無いじゃない」

「そりゃそうだけどさあ……」

 二人して外を見てため息をつく。どうにもすぐには雨が止みそうにもない。

「しょうがない――走るか!」

 オレは言った。

「勝手に一人で走れば?」

「別に一緒に走るとは言ってねえし」

 かばんを頭の上に載せて、走り出す。多分花子は呆れた顔をしてるだろうけど、気にしない。

 後で傘を二本持ってここに戻れば、きっとノーカンだろうから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

太郎と花子の御近所な日々 歩弥丸 @hmmr03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ