新緑の虹色
まだ、ゴールデンウィーク前なのに季節外れの真夏日で東京に来る人達の服装が追いついてない今日。
そんな東京の都道318号線、通称環七に沿って北綾瀬駅は存在する。ここから東京都心への通勤に便利だということで最近話題の地域である。
そんな夕方の北綾瀬駅に会社員たちが降りてくる列車に乗り込む数少ないメンズスーツの若者がいた。
気づけば東北から出てきて大学を卒業したと思えば、就職先も見つからずにそのまま夜の街でちょっとお洒落な飲み屋を生業としている。
いつもの時間の列車に乗り込み、列車はゆっくりと南下を始める。
途中で右に大きくカーブをしたら綾瀬に到着するが反対方向に進む列車にはまさしくすし詰めと言ってもおかしくない大混雑をしているのがよくわかる。
自分の乗っている車両はガラガラ以外のオノマトぺが似合わないほどの状態である。
北千住に到着すれば周辺の高校生が集団で乗り込んでくる。襟詰め学ランで間違いなく男子生徒であることがわかる。最近では女子生徒のスカートとスラックスを選ぶことは認められてきたが、男子生徒のそれは認められてはいないことがほとんどである。
列車は隅田川の下をくぐり町屋を過ぎ西日暮里で学生集団が入れ替わり違う制服の生徒たちであふれてくる。
千駄木、根津を過ぎて湯島、新御茶ノ水に到着すると車内は近隣の大学生の比率が高くなる。
服装も変わり、少し前であれば女子みたいな服装と言われるトロ味のある大きめのシャツを着た男性や男性の床屋でやるような刈上げのショートカットの女性も乗り込んでくる。もちろん、ワンピースの女性らしい服装の女性やちょっとやんちゃな服装をした男性も乗ってきており、性別というよりも着たい服を各々、着ているような人々で埋め尽くされている。
そんな列車は東京の中心、大手町に到着すると、今日は季節外れの真夏日にもかかわらずネクタイにジャケット姿で汗をかいている男性とヒールで足を痛めた様子の女性が工業製品のように同じような様相で大量に乗り込んでくる。
全員同じ服装の高校生集団の後に各々好きな服装をした大学生の次には個性を殺した社会人集団が乗り込んでくる。
自分の仕事のお客様もお店に来るまではこのような状態なのだろうと考えつつ、北綾瀬から座っているドア横の座席で職場アカウントのSNSで今日の営業情報を投稿しつつ考える。
今日のスタッフとしての過去に撮影した自分の姿を投稿したが、今この瞬間とは似ても似つかない雰囲気の写真である。
変わらず、二重橋前、日比谷、霞が関を越えて国会議事堂前に到着する。
公官庁を通る関係でさらに車内は混み合い硬い服装の人々が量産品のように乗り込んできたために車内は外から見れは黒一色、蒸し暑さで湿っぽさを感じる。
勝手に浮いている自分を感じているがそのまま列車は西へと進んでいく。
赤坂、乃木坂と過ぎて表参道でスーツの人々の半分が降りて、これから遊びに行くであろう人々が降りた人の分を埋めていく。
乗ってきた人々も性別関係なしに好きな格好をしている。
ティーンズ文化の中心竹下通りと日本最大の神社が混在する明治神宮前駅で多くの人々が降りていく。
本来であれば自分も新宿に行くために山手線に乗換だが、乗換のために複数回、階段を上がるのが面倒くさいので終点まで行って小田急で新宿へ目指すのでそのまま乗っていく。
昔、違和感で別れた恋人といった代々木公園を通りすぎると、たまに思い出す。
自分の生まれ持った身体的性別の通りにしなくては恋人同士として許してくれない周りに相手への吐き気を感じるほどの嫌悪感である。
終点、代々木上原に向かっていく最中にもともと女性らしいことが嫌いだけども給料がいいために無理やり務めていたキャバクラをやめて、給料は低いけども男性としてバーカウンターに立っていることに後悔ではなく喜びを感じる。
今日も色々な事情を抱えた人たちと雑談をしつつカクテルを作りながら――。
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