黄金で仕入れた友情

 私、明日美あすみは東京湾に浮かぶ人工島、東雲にあるタワーマンションの最上階に暮らし、埼玉県にある私立高校生の3年生をやっている。

 今日も通学の時間である。

 パパが千葉で会社を立ち上げて気づいたら繁盛して東京に本社を構えている、いわゆる起業家でありその途中で20歳も若い女性と結婚した。

 要するにママは36歳、パパは56歳だ。

 ママは明日美と同い年の時に今のパパと結婚した。高校卒業をしたときに、なんでも買ってくれるパパと一緒に過ごしたら明日美が生まれたって教えてくれた。

 おかげで、周りには高級ブランドがそろっているから身近なので実感がわかないが、高校の同級生にしたらすごいことらしい。

 そんな明日美はたまに千葉のショップにパパが行く日には通学電車の始発駅、新木場まで送ってもらえる。辰巳が最寄りなのだが、混雑しているので定期券よりはみ出るけど新木場から座って埼玉の高校まで行けるのが一番楽なのである。

 「金色の縁起のいい電車に乗るんだよ」これは初めて高校に通い始めた時からパパの言っている言葉。

 中学までは送迎付きで都心の私立学校だったが、社会勉強と私の成績の悪さがマッチして遠くの高校に通っている。

 電車というものに初めて乗ったときは誰も笑顔も話し声もなく詰め込まれている状態でなんとも心地が悪かった。らには乗る車両の色も形も違うし、行先も違うのには困っていたが、やっと慣れてきた。

 豊洲、月島と過ぎて新富町で同級生が乗り込んでくる。

 いつも不安な私に合わせて乗ってきてくれる。事前に時間を合わせてもらうように辰巳駅を出発したらチャットを送って乗ってきてもらう。

 お礼にいつもパパからもらった商品券をあげている。お小遣いだけでなく、なぜかパパから追加でたまに商品券をくれるので、それをあげているだけだから私は何も困らない。

 銀座一丁目、今日はまだ学校に行く途中だから下りないが下校時には仲間通し立ち寄って同級生や後輩たちにプレゼントをしてあげている。

 明日美はもらったことがないけども、親がお金持ちの人はそうするのが世の中のルールだと教えてもらった。

 そのことをパパに伝えたら困った顔をしていただけで何も言わないからあっているんだと思う。

 有楽町、桜田門、永田町を過ぎて麹町。

 昔、明日美の誕生日の時にTVスターが家に来てくれたけども元気にしているかな?最近、TVに出なくなったけどもどうなんだろう。

 「麹町にスタジオがある」って言っていたことを思い出しつつ列車は市ヶ谷にたどり着く。

 飯田橋、護国寺、東池袋に来ると同じ制服の生徒がちらほらと乗ってくる。

 そのまま池袋に入ると、ほかの人たちも一気に下りていく。

 要町、千川で多少の乗り降りを見て、小竹向原駅に到着。

 1年生の頃は、この駅から違う方面に行く電車があることを知らず、とんでもないところに連れていかれたが、新富町から同級生が乗るようになってからそんな不安は不要である。お礼は必要になったが安心料みたいなものだ。

 氷川台、平和台を過ぎるといつも空いているからか同級生が話しかけてくるが、大体が家族の話だが、明日美には何とも言えない内容だ。

 ママは大体、パパの文句ばかりだけども結局、いい生活で家で紅茶を楽しんで、食事は手伝いを呼べるからいいらしい。

 ママの作った料理は食べた記憶があまりない。部活で明日香が遅く帰ってきたら先に寝てるが、お手伝いさんは起きて待っててくれる。

 パパも帰ってきてもあまり会話せずに簡単にごはんを食べて寝ている。

 朝も、ほとんど会話がない。

 そんな18年だが、同級生たちは違うらしい。ほかにも苦労をしているだろうからプレゼントを用意している。

 そんなことを思いながら、地下鉄赤塚、地下鉄成増、和光市とその先へ通学電車は走っていく――。

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